交通事故や日常生活の中で、頭を打ってしまう場面は誰にでも起こり得ます。直後は症状が軽く見えることもあり、「大丈夫そうだから」と様子を見るケースも少なくありません。
しかし、頭部外傷には遅れて深刻な症状が現れる「遅発性」のリスクが潜んでおり、大人の場合でも数日後に死亡に至る例も報告されています。
では、頭を打った後のどのような症状に注意すべきなのでしょうか?そして、適切な対処法や医療的対応とは?
本記事では、頭部外傷の遅発性リスクや死亡に至る原因、見逃してはならない危険な兆候、正しい対処法について詳しく解説します。
重大な後遺障害の発生を防ぐためにも、正しい知識をぜひ身につけておきましょう。
最終更新日: 2025/4/17
Table of Contents
頭を打った数日後に死亡する原因とは?
急性硬膜下血腫
急性硬膜下血腫は、頭部への強い衝撃によって脳表面の血管が損傷して、硬膜とくも膜の間に出血が広がる状態です。
出血が進行すると脳を圧迫して、頭痛、意識障害、手足の麻痺などの症状が現れます。高齢者では軽微な打撲でも発症することがあり、重症例では緊急手術が必要です。
<参考>
急性硬膜下血腫の後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
頭蓋内出血
頭蓋内出血は、頭部外傷により脳内やその周囲で出血が起こった状態です。出血の部位や程度により、意識障害、頭痛、吐き気、神経症状などが現れます。
出血が進行すると脳を圧迫して、生命に危険を及ぼす可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。
<参考>
脳出血の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
脳浮腫
脳浮腫は、脳組織に水分が過剰に蓄積されて、脳が腫れる状態です。頭部外傷や脳出血、脳梗塞などが原因で発症して、初期症状として頭痛や嘔吐が見られます。
進行すると意識障害や呼吸困難などの重篤な症状が現れて、生命を脅かす可能性があります。
危険な症状のサインを見逃さないために
最初の兆候とは?-頭痛、めまい、吐き気
頭部を打った直後に現れる頭痛、めまい、吐き気は、脳へのダメージや内出血のサインである可能性があります。
これらの症状が持続または悪化すると、脳内での出血や腫れが進行している恐れがあるため、速やかな医療機関の受診が必要です。
意識障害が及ぼす影響とその原因
意識がもうろうとする、反応が鈍くなる、呼びかけに応じないなどの意識障害は、脳への重大な影響を示唆します。
意識障害は、頭部外傷による脳出血や脳浮腫が原因で、脳が圧迫されることで発生します。迅速な診断と治療が求められます。
異常な眠気や行動変化に注意
過度の眠気や普段と異なる行動、例えば興奮状態や混乱、性格の変化などは、脳機能の異常を示す可能性があります。
これらの変化は、頭部外傷による脳の損傷や出血が原因で起こるケースがあるため、見過ごさず医療機関を受診することが重要です。
神経症状として表れる異変
手足のしびれや麻痺、視力や言語の障害、けいれん発作などの神経症状は、脳の特定部位へのダメージを示唆します。
これらの症状が現れた場合、脳内出血や神経組織の損傷が進行している可能性があり、緊急の対応が必要です。
その他疑うべき身体的変化について
耳や鼻からの出血や透明な液体の漏れ、瞳孔の大きさの左右差、歩行困難なども、頭部外傷後の危険なサインです。
これらの症状は、頭蓋骨骨折や脳脊髄液の漏出を示すことがあり、直ちに医療機関での評価と治療が求められます。
頭を打った後の処置(応急処置から医療機関受診まで)
頭部外傷の応急処置
頭部を打った直後は、まず出血の有無と意識状態を確認します。出血があれば清潔な布で直接圧迫して、意識があるかを確認します。意識がない場合や反応が鈍い場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
また、嘔吐がある場合は窒息を防ぐために体を横向きに寝かせます。強く揺さぶったり無理に動かしたりせず、安静を保つことが重要です。
氷と包帯、救急車要請のタイミング
頭に腫れがある場合は、氷や冷却材をタオルで包んで患部を冷やします。出血が止まらない、意識がない、けいれんがある、手足の麻痺が見られる場合は、直ちに救急車を要請してください。
病院での診断プロセス
医療機関では、症状に応じてCT検査やMRI検査などの画像検査を行い、脳の損傷や出血の有無を確認します。
診断結果に基づき、安静指示や薬物療法、必要に応じて手術が検討されます。また、頭皮の傷がある場合は、消毒や縫合が行われるケースもあります。
医療機関でのフォローアップと自宅での様子観察
軽度の頭部外傷で入院を必要としない場合でも、自宅での観察が重要です。頭痛、嘔吐、意識障害、手足の麻痺、視覚や言語の異常などの症状が現れたら、すぐに再受診してください。
また、症状がなくても、数週間後に慢性硬膜下血腫などの遅発性の合併症が現れることがあるため、注意が必要です。
頭を打った後は何日注意すればよい?
頭部外傷後は、少なくとも24時間は注意深く観察する必要があります。特に高齢者では、数週間から数ヶ月後に慢性硬膜下血腫が発症することがあるため、長期的な注意が求められます。
交通事故で受傷した頭部外傷の後遺障害等級
交通事故で受傷した頭部外傷による後遺症は、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。後遺障害等級の詳細は、こちらのコラム記事を参照してください。
頭部外傷の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故で受傷した頭部外傷の後遺障害認定ポイントは、原因となる後遺障害や傷病毎に異なります。以下のそれぞれのコラム記事を参照いただければ幸いです。
交通事故で受傷した頭部外傷の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
交通事故による頭部外傷の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
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等級スクリーニング®
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等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
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弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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頭部外傷で後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
交通事故による頭部外傷の後遺症が、後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
交通事故による頭部外傷の後遺症の後遺障害慰謝料とは
交通事故による頭部外傷の後遺症が残った精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
交通事故による頭部外傷の後遺障害慰謝料の相場は?
交通事故による頭部外傷の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、9級の場合は約690万円、7級は約1000万円、5級は約1400万円、3級は約1990万円、2級は約2370万円、1級は約2800万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることがあります。さらに、1級や2級の場合には将来の介護費として数千万円から1億円を超える額が認められることがあります。
このように、交通事故による脳の後遺症の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
交通事故による頭部外傷の後遺障害逸失利益とは
交通事故による頭部外傷の後遺症が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
頭部外傷の後遺障害逸失利益の相場は?
逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、1級の後遺障害の場合、逸失利益は約1億円前後となる可能性があります。一方、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
頭を打った数日後に死亡でよくある質問
頭を打った場合、大人はいつまで心配ですか?
頭部を打撲した後、特に最初の24時間は注意深い観察が必要です。しかし、症状がなくても安心はできません。
高齢者の場合、数週間から数ヶ月後に慢性硬膜下血腫が発症することがあります。
そのため、頭痛やめまい、吐き気などの異常を感じた場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
頭を強く打って死亡する状態とは?
頭部を強く打った際、急性硬膜下血腫や脳出血などの重篤な状態が引き起こされることがあります。これらは脳内での出血や血腫の形成により、脳を圧迫し、意識障害や麻痺、最悪の場合、死亡に至る可能性があります。
特に、意識がもうろうとする、手足の動きが鈍くなる、言語障害が現れるなどの症状が見られた場合は、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。
頭をぶつけて48時間経つとどうなる?
頭部を打撲してから48時間以内に、頭痛、吐き気、嘔吐、めまい、意識障害などの症状が現れることがあります。
これらの症状が出現した場合、脳内出血や脳震盪などの可能性が考えられます。症状が軽度であっても、自己判断せず、医療機関を受診することが重要です。
脳内出血は何日後に症状が現れますか?
脳内出血の症状は、出血の程度や部位によりますが、多くの場合、突然の強い頭痛や意識障害、手足の麻痺などが即座に現れます。しかし、慢性硬膜下血腫のように、数週間から数ヶ月後に症状が現れるケースもあります。
そのため、頭部を打撲した後は、長期間にわたり自身の体調の変化に注意を払い、異常を感じた場合は速やかに医療機関を受診してください。
まとめ
頭を強く打つと、すぐに症状がなくても、数日後に急に命にかかわることがあります。これは、脳の中で出血したり、水がたまって腫れたりして、脳が押しつぶされるからです。
とくに「急性硬膜下血腫」などは、軽いけがでも高齢者に起きやすく、放っておくと頭痛、意識がなくなる、手足が動かなくなるなどの症状が出て、命の危険もあります。
頭を打ったあと、少しでもおかしいと感じたら、すぐに病院で診てもらうことが大切です。
交通事故で受傷した頭部外傷の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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