突然の交通事故や病気によって「意識不明の重体」と診断されるケースは、誰にとっても他人事ではありません。
本人が意識を失っている状態では、家族や周囲の人々が治療方針や今後の見通しについて情報を集め、判断しなければならない場面も多くあります。
また、奇跡的に意識が回復しても、さまざまな後遺症が残ることも少なくありません。
本記事では、「意識不明の重体」の状態とはどのようなものか、回復の可能性やその過程、後遺症の種類、交通事故に関わる対応策などについて、詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/5/16
Table of Contents
意識不明の重体とは?
「意識不明の重体」とは、外傷や病気などによって意識を失い、生命の危機に瀕している状態です。
脳への重大な損傷や出血、酸素供給の不足などが原因で起こり、患者は自力での呼吸や反応が困難な状態に陥ります。
例えば、交通事故での激しい衝突により、頭部に深刻な損傷を受けた場合、意識不明の重体となることがあります。
このような状況では、迅速な医療処置が必要であり、回復の可能性や後遺症の有無は、損傷の程度や治療のタイミングに大きく左右されます。
意識不明の重体で考えられる後遺症
高次脳機能障害
高次脳機能障害は、脳外傷後に記憶力、注意力、判断力などの認知機能が低下する状態です。意識障害が6時間以上続くと、永続的な障害が残る可能性が高まります。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
遷延性意識障害(植物状態)
遷延性意識障害は、昏睡状態から覚醒はするものの、意識が回復しない状態です。自発呼吸は可能ですが、意思疎通は困難で、外傷性の場合は12ヶ月以上続くと回復の可能性が低下します。
<参考>
遷延性意識障害(植物状態)における医師意見書の有効性|医療鑑定
身体性機能障害(麻痺)
脳の損傷部位によっては、四肢や体幹の麻痺が生じることがあります。特に運動を司る領域の損傷は、日常生活に支障をきたす重度の障害を引き起こす可能性があります。
<参考>
身体性機能障害とは?後遺障害認定ポイントも解説|交通事故の医療鑑定
外傷性てんかん
脳損傷後にてんかん発作が発生することがあります。特に意識障害が長時間続いた場合、てんかん重積状態となるリスクが高まります。
<参考>
外傷性てんかんの後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
失語
失語は、言語の理解や表出が困難になる状態で、脳の言語中枢の損傷によって生じます。例えば、ブローカ失語では、言葉の理解は可能でも、自発的な発話が困難になります 。
<参考>
交通事故による失語症とは?後遺障害認定ポイントも解説|医療鑑定
失認
失認は、視覚や聴覚などの感覚が正常であるにもかかわらず、対象を認識できない状態です。脳の特定部位の損傷により、物体や人の認識が困難になることがあります。
意識不明になった後の経過パターン
数時間以内に意識が回復
事故や病気による意識不明から数時間以内に意識が回復すると、脳への損傷が軽度である可能性が高いです。
このようなケースでは、後遺症が残らず、比較的早期に日常生活に復帰できることが多いです。しかし、回復後も医師の指導のもと、経過観察を続けることが重要です。
6時間以上意識不明が続く
意識不明の状態が6時間以上続くと、脳への損傷が深刻である可能性が高まります。このような状況では、遷延性意識障害や高次脳機能障害などの後遺症が残るリスクが増加します。
意識は回復しても後遺症が残る
意識が回復しても、記憶障害、注意力の低下、言語障害などの高次脳機能障害が残るケースがあります。
これらの後遺症は、日常生活や社会復帰に影響を及ぼすため、専門的なリハビリテーションや支援が必要となります。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
意識が回復しない
意識が長期間回復しないケースでは、遷延性意識障害(植物状態)に陥る可能性があります。
遷延性意識障害は、自発呼吸は可能でも、意思疎通や自立した生活は困難です。家族や医療チームとの連携が重要となります。
<参考>
遷延性意識障害(植物状態)における医師意見書の有効性|医療鑑定
死亡する
重度の脳損傷や全身の多発外傷などにより、意識が回復することなく死亡するケースもあります。
このような場合、早期の医療介入が困難であったり、損傷の程度が生命維持に必要な機能を超えていることが要因となります。
交通事故で意識不明の重体になった時の対処法
1. 医療機関での適切な治療と経過観察
交通事故後は、速やかに医療機関での治療を受けることが重要です。脳への損傷が疑われる場合、CTやMRI検査などの画像検査を行い、損傷の程度を確認します。
意識不明の状態が6時間以上続くと、高次脳機能障害や遷延性意識障害のリスクが高まるため、専門的な治療と経過観察が必要です。
2. 成年後見人制度の利用
被害者が意識不明で判断能力がない場合、保険会社との交渉や財産管理を行うために、成年後見人を選任する必要があります。
成年後見人は家庭裁判所に申し立てることで選任されます。成年後見人制度によって、被害者の権利を保護して、適切な対応を行うことができます。
3. 後遺障害等級認定の申請
意識不明の状態が続いたり、意識が回復しても後遺症が残ると、後遺障害等級の認定を申請することが重要です。認定される等級により、受け取れる慰謝料や賠償金額が変わります。
例えば、高次脳機能障害が後遺障害3級に認定されたら、高額な慰謝料が支払われる可能性があります。
4. 弁護士への相談
交通事故による意識不明の重体は、法的な手続きや保険会社との交渉が複雑になることがあります。弁護士に相談することで、適切なアドバイスを受けることができ、被害者や家族の権利を守ることができます。
また、弁護士が交渉を行うことで、適正な賠償金を受け取る可能性が高まります。もし、弁護士紹介を希望される被害者家族の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
高次脳機能障害の後遺障害等級の認定基準
交通事故で発症した高次脳機能障害は、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。
高次脳機能障害の重さは、言葉を理解したり考えたりする力、集中する力、疲れやすさ、人との関わり方といった機能の低下具合で決まり、1級から14級に分けられています。
高次脳機能障害の後遺障害認定基準を詳細に知りたい方は、以下のコラムにまとめています。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故による高次脳機能障害は、意識がなくなった時間やCT検査やMRI検査などの画像検査で、後遺症との因果関係が認められれば、後遺障害に認定される可能性があります。
特に、脳の一部が損傷した場合は、どこが傷ついたかと、どんな症状が出ているかが、認定の重要なポイントになります。
高次脳機能障害に認定されると、神経心理学的検査、医学的意見、日常生活状況報告の結果を総合的に評価して、後遺障害等級が決まります。
最近は、意識を失っていた時間が短くても、残っている後遺症と社会生活の支障程度を総合的に判断して、後遺障害を審査する流れになっています。
賠償実務では、神経心理学的検査の結果が重要な争点となる事案が多いです。しかし、解釈が難しいため、脳神経科医師の協力が必要なケースも珍しくありません。
さらに高次脳機能障害が後遺障害認定されるポイントを詳しく知りたい方は、以下のコラム記事にまとめています。ご参考にしていただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
交通事故で発症した高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
交通事故による意識障害の後遺症で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で発症した意識障害の後遺症が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
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等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
意識障害後遺症の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
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弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
意識不明の重体の後遺症でよくある質問
意識不明の状態が続くとどうなる?
意識不明の状態が長期間続くと、遷延性意識障害(植物状態)に陥る可能性があります。
遷延性意識障害では、自発呼吸は可能でも、意思疎通や自立した生活は困難です。長期的な介護が必要となることが多く、家族や医療チームとの連携が重要となります。
<参考>
遷延性意識障害(植物状態)における医師意見書の有効性|医療鑑定
意識不明の時に示談交渉や手続きは誰がする?
被害者が意識不明で判断能力がないと、保険会社との交渉や財産管理を行うために、成年後見人を選任する必要があります。
成年後見人は家庭裁判所に申し立てることで選任され、被害者の権利を保護し、適切な対応を行うことができます。
意識が回復しない時の症状固定はいつ?
症状固定とは、治療を続けても症状の改善が見込めない状態を指します。意識不明の状態が続くと、一般的には事故から約3ヶ月が目安とされています。
しかし、治療やリハビリにより意識レベルの改善がみられることもあるため、慎重に判断されます。
意識が戻らないと余命はどのくらいですか?
意識が戻らない場合の余命は、原因や患者の状態によって大きく異なります。
例えば、脳梗塞による意識不明では、早期に適切な治療が行われた場合でも再発の可能性があり、予後は不確定です。
また、遷延性意識障害では、長期間の生命維持が可能なケースもありますが、個々の状況によって異なります。
重体と重症ってどう違うの?
「重体」は、生命の危機がある状態を指し、意識不明や呼吸困難などが含まれます。一方、「重症」は、病気や怪我の程度が重いことを指し、3週間以上の入院が必要な場合などを指します。
つまり、「重体」は生命の危険性に焦点を当てた表現であり、「重症」は症状の重さに焦点を当てた表現です。
まとめ
「意識不明の重体」とは、事故や病気で脳に大きなダメージを受け、意識を失い命の危険がある状態です。
6時間以上意識が戻らないと、高次脳機能障害や植物状態、麻痺、外傷性てんかんなどの後遺症が残ることもあります。
回復しても記憶力や言葉の機能に問題が生じる場合があり、リハビリや法的支援が必要になることがあります。
後遺障害の認定には、専門的な検査や医師の意見書、画像鑑定が必要とされ、交通事故被害者には法的支援や専門機関によるサポートが求められます。
交通事故で受傷した高次脳機能障害や身体性機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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