交通事故によって、身体だけでなく脳にも深刻なダメージが及ぶ可能性があります。
その中でも「失語症」は、脳の損傷によって言葉を話す・聞く・理解するといった言語機能に支障が出る障害で、日常生活や社会復帰に大きな影響を及ぼします。
しかし、「なぜ交通事故で失語症になるのか?」「回復の可能性はあるのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、交通事故による失語症の原因や発生メカニズム、治療法、リハビリ、後遺障害認定に関するポイントまでを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/4/23
Table of Contents
交通事故後の失語症とは
失語症の定義と種類
失語症とは、脳の言語をつかさどる領域が損傷されたため、言葉の理解や表現が困難になる障害です。
主な失語症の種類として、以下のようなものがあります。これらは損傷部位や程度により異なります。
- 言葉を理解できるが話せない「運動性失語」
- 話せるが理解できない「感覚性失語」
- 物の名前が思い出せない「健忘性失語」
- すべての言語機能が障害される「全失語」
交通事故後に失語症が発生する原因
交通事故で頭部を強打して、脳の言語をつかさどる部分が損傷されると、失語症が発生します。
失語症を引き起こす脳の損傷箇所
失語症は、脳の言語機能をつかさどる領域の損傷によって引き起こされます。特に、左脳のブローカ野やウェルニッケ野といった言語中枢が損傷されると、言語の理解や表現に支障をきたします。
失語症は高次脳機能障害の一種
失語症は、高次脳機能障害の一種であり、脳の損傷によって言語機能が障害された状態です。具体的には、「聞く」「話す」「読む」「書く」といった言語活動全般に影響を及ぼします。
高次脳機能障害とは、脳の損傷により認知機能や言語機能などが低下する障害の総称であり、失語症はその代表的な症状の一つとされています。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
失語症で考えうる後遺障害等級
失語症は、高次脳機能障害の一種です。このため、交通事故が原因で失語症が残ると、高次脳機能障害として後遺障害に認定される可能性があります。
高次脳機能障害では、話す力や考える力、集中力、疲れにくさ、人との関わり方などが、どのくらいできなくなっているかを評価して等級が判断されます。
後遺症の重さによって、1級から14級までの等級に分けられます。高次脳機能障害の後遺障害認定基準を詳細に知りたい方は、以下のコラムにまとめています。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
失語症の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故で発症した失語症は、画像診断によって後遺症との関連性が確認できると、後遺障害に認定される可能性があります。
特に脳挫傷などの局所脳損傷では、損傷部位と症状が一致していることが重要な判断基準となります。
失語症の後遺障害認定は、高次脳機能障害に準じて審査されます。高次脳機能障害が後遺障害認定されるポイントを詳しく知りたい方は、以下のコラム記事にまとめています。ご参考にしていただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
交通事故で発症した失語症の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
失語症の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で発症した失語症が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
失語症の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
失語症が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
交通事故によって発症した失語症で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
失語症の後遺障害慰謝料とは
交通事故で外傷性脳損傷によって失語症が残った精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
失語症の後遺障害慰謝料の相場は?
失語症の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、9級の場合は約690万円、7級は約1000万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることがあります。
このように、失語症の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
失語症の後遺障害逸失利益とは
失語症が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
失語症の後遺障害逸失利益の相場は?
失語症の逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
交通事故の失語症でよくある質問
失語症は回復しますか?
失語症は、適切なリハビリテーションによって回復が期待できます。特に発症初期の数週間から数か月間は、脳の自然回復が進む重要な時期です。
言語聴覚士との訓練や家族の支援を通じて、言語機能の改善が見込まれます。ただし、回復の程度や期間は個人差があり、症状の重さやリハビリの取り組み方によって異なります。
失語症の職業復帰率は?
失語症の職業復帰率は、発症前に就業していた人の約17.7%と報告されています。復職には、職場の理解や適切な支援が不可欠です。
言語機能の改善だけでなく、職場環境の調整やコミュニケーション方法の工夫が求められます。
早期からのリハビリと職場との連携が、復職の可能性を高める鍵となります。
まとめ
交通事故で頭部に強い衝撃を受けると、脳の言語をつかさどる領域が損傷されて、失語症を発症する可能性があります。
失語症は「話す・聞く・読む・書く」といった言語機能に障害が出る高次脳機能障害の一種です。
種類は、言葉を理解できても話せない「運動性失語」や、その逆の「感覚性失語」などがあり、損傷部位によって異なります。
重度の場合、自賠責保険から後遺障害に認定されて、慰謝料や逸失利益の請求も可能です。
適切なリハビリで回復の見込みもありますが、職業復帰率は低めで、適切な支援体制が必要です。
交通事故で発症した失語症の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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