交通事故は、一瞬にして私たちの生活を大きく変えてしまう可能性があります。特に、脳にダメージを負うと、その後遺症は長期間にわたって影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、交通事故による脳の後遺症について詳しく解説して、具体的な症状の種類や特徴、後遺障害等級の認定ポイントを説明しています。
脳の後遺症と一口に言っても、その症状や種類は多岐にわたります。交通事故後に生じる可能性のある課題を理解して、適切な対処を行うための参考にしてください。
最終更新日: 2025/4/10
Table of Contents
交通事故による脳の後遺症とは
遷延性意識障害
遷延性意識障害とは、交通事故などで脳に重度の損傷を受けた結果、長期間にわたり意識が回復しない状態を指します。
具体的には、事故後1ヵ月以上にわたり、自発的な覚醒や意思表示が見られない状態で、日常生活において全面的な介護が必要となります。
<参考>
遷延性意識障害(植物状態)における医師意見書の有効性|医療鑑定
高次脳機能障害
高次脳機能障害は、脳の損傷により認知機能や行動に影響を及ぼす障害です。以下のような具体的な症状が現れることがあります。
1. 記憶障害
新しい情報を覚えられない、過去の出来事を思い出せないなどの症状が見られます。記憶障害のために、日常生活や仕事に支障をきたす可能性があります。
2. 注意障害
集中力が続かない、複数の作業を同時に行えないなどの問題が生じます。注意障害のために、作業効率の低下やミスの増加が見られる可能性があります。
3. 遂行機能障害
計画を立てて物事を進めることが難しくなり、指示がないと行動できない、行き当たりばったりの行動をとるなどの症状が現れます。
4. 社会的行動障害
場にそぐわない言動や感情のコントロールが難しくなるなど、対人関係において問題が生じる可能性があります。
5. 言語障害(失語)
話す、聞く、読む、書くといった言語能力に障害が生じて、コミュニケーションが困難になる可能性があります。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
身体性機能障害
脳の損傷により、手足の麻痺や筋力低下など、身体的な機能に障害が生じる可能性があります。脳への外傷では、同側の手足を動かしにくくなる片麻痺になるケースが多いです。
外傷性てんかん
交通事故による頭部外傷が原因で、てんかん発作を引き起こすことがあります。これを外傷性てんかんと呼び、発作の頻度や重症度は個人差があります。
<参考>
外傷性てんかんの後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
感覚器(目、耳、鼻)の機能障害
脳の損傷により、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚器に障害が生じることがあります。具体的には、視力低下、聴力低下、嗅覚の喪失などの後遺症です。
<参考>
交通事故の脳後遺症の原因となる傷病
脳挫傷
強い頭部外傷により、脳組織が直接損傷を受けた状態です。脳挫傷によって、言語障害、運動機能の低下、意識障害など、多様な神経症状が現れる可能性があります。
<参考>
脳挫傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
脳出血
脳出血は、交通事故による頭部外傷の影響で脳内の血管が破裂して、血液が脳実質内に流出することにより発生します。激しい頭痛、吐き気、意識障害といった症状が現れます。
治療は、血腫の除去や血圧管理を中心に行われ、迅速な対応がなされなければ、運動機能や認知機能の障害など、重篤な後遺症を残す可能性があります。
<参考>
脳出血の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
急性硬膜外血腫
頭蓋骨と硬膜の間に血液が急速に溜まる状態で、頭部外傷後に一時的な意識回復が見られた後、再び意識が低下する「ルシッドインターバル」が特徴的です。迅速な外科的治療が必要となります。
<参考>
急性硬膜外血腫の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
急性硬膜下血腫
硬膜と脳表面の間に血液が溜まる状態で、脳組織への圧迫により、頭痛、嘔吐、意識障害などの症状が急速に進行します。致死率が高く、早急な診断と治療が求められます。
<参考>
急性硬膜下血腫の後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
びまん性軸索損傷
頭部が激しく揺さぶられることで、脳内の神経線維(軸索)が広範囲にわたり損傷を受ける状態です。意識障害が長期間続くことが多く、重篤な後遺症を残す可能性があります。
<参考>
びまん性軸索損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
交通事故で受傷した脳後遺症の後遺障害等級
交通事故で受傷した脳の後遺症は、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。後遺障害等級の詳細は、こちらのコラム記事を参照してください。
脳の後遺症の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故で受傷した脳の後遺症の後遺障害認定ポイントは、原因となる後遺障害や傷病毎に異なります。以下のそれぞれのコラム記事を参照いただければ幸いです。
交通事故で発症した脳後遺症の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
交通事故による脳後遺症の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した脳の後遺症が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故による脳後遺症の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
交通事故による脳の後遺症が、後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
交通事故による脳の後遺症の後遺障害慰謝料とは
交通事故による脳の後遺症が残った精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
交通事故による脳の後遺症の後遺障害慰謝料の相場は?
交通事故による脳の後遺症の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、9級の場合は約690万円、7級は約1000万円、5級は約1400万円、3級は約1990万円、2級は約2370万円、1級は約2800万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることがあります。さらに、1級や2級の場合には将来の介護費として数千万円から1億円を超える額が認められることがあります。
このように、交通事故による脳の後遺症の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
交通事故による脳の後遺症の後遺障害逸失利益とは
交通事故による脳の後遺症が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
後遺障害逸失利益の相場は?
逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、1級の後遺障害の場合、逸失利益は約1億円前後となる可能性があります。一方、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
交通事故による脳の後遺症でよくある質問
交通事故による脳機能障害とは?
交通事故の衝撃によって脳が損傷を受けると、高次脳機能障害が発生する可能性があります。高次脳機能障害は、認知機能や社会的行動に影響を及ぼして、具体的には記憶力の低下、注意力の散漫、計画性の欠如、感情のコントロール困難などの症状が現れます。
脳に事故が起こると性格は変わりますか?
交通事故による脳の損傷が原因で、性格や行動パターンが変化することがあります。例えば、以前は穏やかだった人が怒りっぽくなったり、社交的だった人が無関心になったりすることがあります。
これらの変化は、高次脳機能障害の一部として現れる社会的行動障害によるもので、本人や周囲の人々にとって大きな負担となることがあります。
交通事故で脳にどのような影響がありますか?
交通事故は、脳に深刻な影響を及ぼすことがあり、その結果としてさまざまな障害が生じる可能性があります。
まとめ
交通事故で脳にダメージを受けると、さまざまな後遺症が残る可能性があります。たとえば、長く意識が戻らない「遷延性意識障害」や、記憶力や集中力が低下する「高次脳機能障害」などがあります。
また、話す・書く力が落ちたり、体がうまく動かせなくなったり、数年してから外傷性てんかんの発作が出る可能性もあります。
交通事故で受傷した脳後遺症の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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