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【医師が解説】廃用症候群とは?原因、症状は?|交通事故の後遺障害

廃用症候群は、長期間の安静や活動の低下によって引き起こされる身体機能の衰えです。足や背骨の骨折や頭部外傷などに併発しやすいです。

 

例えば、重症外傷で長期間にわたる治療が行われると、ケガの状態に関わらず、身体に生理学的な変化が起こって廃用症候群を併発します。

 

本記事は、交通事故などに続発した廃用症候群を理解するヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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廃用症候群とは

 

廃用症候群は、長い間ベッド上で寝ていることで身体の機能が落ちてしまい、心身のさまざまな能力が低下した状態です。

 

体を動かすことは、筋肉や関節だけでなく、体の中の様々な部分にも良い影響を与えます。

 

そのため、体を動かさない生活が続くと、身体の機能が低下して、内臓の働きも悪くなってしまうのです。

 

 

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廃用症候群の原因

 

廃用症候群は、ベッド上で体を動かさない状態が長く続くことによって発症します。長期間にわたる安静を強いられる原因として以下のものがあります。

 

  • 病気やケガによる長期間にわたる治療
  • 頭部外傷や脊髄損傷による麻痺
  • 認知症や精神的な病気
  • 下肢や背骨の骨折

 

 

廃用症候群の症状

 

廃用症候群では、以下のようにさまざまな症状を発症します。

 

  • 運動器(筋骨格系)
  • 循環器
  • 呼吸器
  • 消化器
  • 泌尿器
  • 精神、認知症
  • 皮膚

 

 

運動器(筋骨格系)

運動器(筋骨格系)は、廃用症候群の中で最も目に見える症状です。歩けなかったり、立ち上がれなくなるケースが多いです。以下のような症状があります。

 

  • 筋萎縮(筋肉がなくなる)
  • 関節拘縮(関節の動きが悪くなる)
  • 骨萎縮(骨がスカスカになる)
  • 筋力低下(力が弱くなる)

 

 

循環器

循環器の症状として、以下のような症状があります。具体的には、息切れ、脱力感、めまい、立ちくらみなどです。

 

  • 心機能低下(心臓の働きが悪くなる)
  • 起立性低血圧(立ちくらみを起こす)
  • 深部静脈血栓症(静脈内に血の塊ができる)

 

 

呼吸器

咳をしたり、むせる力が弱くなるため、誤嚥(食べ物や唾液が肺に入ってしまうこと)が起こりやすくなります。息切れや疲労感も覚えやすいです。

 

  • 誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が肺に入って起こる肺炎)
  • 換気障害(十分に呼吸できない)

 

 

消化器

廃用症候群で活動量が低下すると食欲も無くなります。食事量が少なくなると、ますます筋力が低下してしまう悪循環に陥ります。

 

  • 食欲低下
  • 逆流性食道炎(胸やけ)
  • 便秘

 

食欲が低下すると栄養状態が悪化するため、風邪を引いたり褥瘡(床ずれ)の原因にもなります。

 

 

泌尿器

廃用症候群で寝たきりの状態が続くと、尿路感染症を併発しやすくなります。

 

  • 尿路感染症
  • 尿路結石

 

 

精神、認知症

特に高齢者では、認知症を発症したり悪化するケースが多いです。不眠、せん妄、うつ病も起こりやすくなります。

 

  • 認知症
  • 抑うつ状態

 

 

<参考>
【遺言能力鑑定】せん妄と認知症の違いは意思能力に影響する?
【医師が解説】認知症ステージ分類のFASTとは|遺言能力鑑定
【医師が解説】長谷川式認知症スケールの解釈|遺言能力鑑定
【医師が解説】交通事故後に認知症を発症するのは珍しくない!

 

 

皮膚

廃用症候群で寝たきりの状態が続くと、褥瘡(床ずれ)を併発しやすくなります。自分で寝返りを打てなくなったり、食欲低下のために低栄養状態になることが原因となります。

 

 

廃用症候群のリハビリ

 

廃用症候群を発症すると、リハビリテーションによっても身体機能を回復することは困難です。このため、予防が重要になります。

 

廃用症候群の予防のためには、積極的に体を動かすことが最も推奨されます。理学療法士による歩行訓練や筋力訓練も効果的でしょう。

 

廃用症候群が進んでしまった方には、さらなる進行を防ぐために関節の可動域訓練や、座った状態でのリハビリテーションを実施することが重要です。

 

 

 

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【弁護士必見】廃用症候群の後遺障害認定ポイント

廃用症候群と交通事故との因果関係が争点になりやすい

廃用症候群は、交通事故による骨折や頭部外傷が原因となって発症することも、決して珍しくありません。

 

しかし、廃用症候群によって発症した関節可動域制限や歩行能力低下であっても、交通事故との因果関係を否定されて、後遺障害に認定されない事案は多いです。

 

廃用症候群と交通事故との因果関係が否定された場合には、加齢や既往症の影響よりも、交通事故の影響の方が強い大きいことを主張する必要があります。

 

廃用症候群を併発しやすいのは、圧倒的に高齢者です。このため、廃用症候群と交通事故との因果関係の証明には、医師による臨床経過や画像所見の精査が必要です。

 

 

廃用症候群の後遺障害等級は神経系統の機能障害に準ずる

下肢の骨折などで廃用症候群を併発した事案では、関節機能障害で後遺障害等級が決定されるケースが多いです。

 

しかし、いわゆる寝たきりなどの状態になった場合には、「常に介護を要する」「随時介護を要する」などの神経系統の機能障害に準じた1~3級の後遺障害等級となります。

 

 

廃用症候群の加重障害と素因減額

廃用症候群は高齢者に多いため、既往症が問題になるケースが多いです。廃用症候群においても後遺障害等級は、受傷前の状態(等級)と症状固定時の状態(等級)を比較して、加重障害に該当するかを判断します。

 

一方、訴訟で既往症による素因減額が争いになっている事案では、若杉方式による外因の関与程度判定基準を用いて主張することも有効です。

 

廃用症候群と交通事故との因果関係や、素因減額でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

廃用症候群は、治療のために長い間ベッド上で寝ていることで身体の機能が落ちてしまい、心身のさまざまな能力が低下した状態です。

 

体を動かさない生活が続くと、身体の機能が低下して内臓の働きも悪くなってしまいます。廃用症候群を一度発症すると回復が困難なため、リハビリテーションによる予防が重要です。

 

交通事故との因果関係が否定された事案では、加齢や既往症の影響よりも交通事故の影響の方が強い大きいことを主張する必要があります。

 

 

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