筋挫傷は、交通事故などで手足や体に大きな外力が加わって発生する筋肉のケガです。筋挫傷は骨折や靭帯損傷と異なり軽傷と思われがちです。しかし筋挫傷で後遺症を残す人がいるのも事実です。
本記事は、筋挫傷の後遺症が、後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/8
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筋挫傷とは
筋挫傷とは、鈍い衝撃によって筋肉が傷ついた状態です。より強い力がかかると筋挫傷にとどまらず、骨折することもあります。交通事故では、手足の筋挫傷が問題になるケースが多いです。
筋挫傷の症状
筋挫傷の主な症状は、激しい痛みと腫れです。ケガした部分が腫れて皮膚は光沢を帯び、張りつめたようになります。
局所の腫れは翌日から数日で最大になり、その後は次第に軽くなります。太ももの(大腿四頭筋)の筋挫傷では、歩行困難や膝の曲げが制限されることもあります。
筋挫傷の診断
単純X線像(レントゲン)、CT検査、MRI検査などで、骨折や靱帯損傷が無いことを確認します。骨折まで至らなくても、筋挫傷では筋肉の中に血種(いわゆる血の溜まり)をきたしているケースは少なくありません。
このような事案では、MRI検査で筋肉内に血腫を確認できることが多いです。ただし、筋挫傷の診断目的でMRI検査を実施することは滅多にありません。
あくまでも骨折や靭帯損傷の有無を精査する過程で、副次的に筋挫傷が発見されるという流れです。
筋挫傷に対する治療
筋挫傷では、受傷直後から48時間程度は、RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を必要があります。RICE処置とは、Rest(安静)、Icing(冷却)、 Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字から名付けられました。
痛みに応じて、湿布や鎮痛剤の服用も行います。軽症の場合には、RICE処置を実施すると1~2週間で痛みや腫れが軽減します。
筋挫傷の合併症
筋挫傷は、以下のような合併症が伴うことがあります。
- 異所性骨化・骨化性筋炎
- コンパートメント症候群
異所性骨化や骨化性筋炎
筋肉内に血の溜まり(血腫)ができると、受傷してから数週間後に骨組織が形成されることがあります。この骨組織は、異所性骨化や骨化性筋炎と呼ばれています。
異所性骨化や骨化性筋炎によって、関節の可動域が難治的に制限されたり、痛みを生じることがあります。
特に重症な筋挫傷では、適切な初期治療(RICE処置)が重要であり、治療が遅れると異所性骨化や骨化性筋炎を発症する危険性があります。
コンパートメント症候群
筋肉内の出血や腫れが高度になると、筋肉の内圧が増大して血行障害が起こします。その結果、筋肉の壊死や神経障害が生じて、重い後遺症が残ります。
痛みが我慢できない、皮膚に水疱ができる、高度な腫れや感覚の障害、運動麻痺などがみられる場合には、早急に適切な手術(減張切開術)を行う必要があります。
<参考>
【医師が解説】コンパートメント症候群の5P症状と後遺症|交通事故
筋挫傷で考えられる後遺症
筋挫傷単体では、ほとんど後遺障害に認定される可能性はありません。14級9号に認定されるとしても、他にメインの外傷があって、その外傷が14級9号以上に認定された場合に限られます。
一方、異所性骨化、骨化性筋炎、コンパートメント症候群を合併すると、上位等級に認定される可能性が高いです。
筋挫傷
14級9号:局部に神経症状を残すもの
傷病名が筋挫傷の場合、多くの事案は非該当となります。骨折や捻挫などの明らかな器質的障害が無いので、12級13号以上に該当することはありません。
異所性骨化や骨化性筋炎(機能障害)
10級10号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。筋挫傷に異所性骨化を併発した場合には、高度の関節可動域制限を残す可能性があります。
12級6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。10級10号や10級11号と同様に異所性骨化を併発した場合には、関節可動域制限を残す可能性があります。
異所性骨化や骨化性筋炎(神経障害)
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
筋挫傷に異所性骨化や骨化性筋炎を合併すると、痛みの原因となるケースもあります。異所性骨化や骨化性筋炎のサイズが大きい場合には、12級13号が認定される可能性があります。
<参考>
【医師が解説】肘関節脱臼が後遺症認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】尺骨神経麻痺が後遺症認定されるポイント|交通事故
14級9号:局部に頑固な神経症状を残すもの
手術施行有無やリハビリテーションなどの条件次第で、後遺障害等級認定される可能性があります。
コンパートメント症候群(機能障害)
8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
下腿にコンパートメント症候群を併発すると、足関節の自動運動が不可能になるケースが多いです。
<参考>
【医師が解説】腓骨神経麻痺の後遺障害認定ポイント|交通事故
【医師が解説】コンパートメント症候群の5P症状と後遺症|交通事故
9級15号:1足の足指の全部の用を廃したもの
下腿に発生したコンパートメント症候群のために、足部の小さな筋肉が壊死するケースも多いです。
<参考>
【医師が解説】足骨折やリスフラン靭帯損傷の後遺症|交通事故
コンパートメント症候群(醜状障害)
12級相当
コンパートメント症候群では、減張切開が行われます。このため、12級や14級5号に認定される可能性が高いです。
上肢または下肢に手のひらの大きさの3倍程度以上の瘢痕を残しているものは、12級に認定される可能性があります。
14級5号
下肢の露出面に手のひらの大きさ瘢痕を残したものは、14級5号に認定される可能性があります。
<参考>
【医師が解説】外貌醜状や醜状障害の後遺障害認定ポイント|交通事故
【医師が解説】足(下肢)の傷跡の後遺障害|交通事故
【弁護士必見】筋挫傷の後遺障害認定ポイント
筋挫傷単体では14級9号が上限
前述のように、傷病名が筋挫傷の事案では、14級9号が後遺障害等級の上限です。しかも14級9号でさえも後遺障害認定のハードルは高いと言わざるを得ません。
自賠責認定基準のすべての条件をクリアしている事案でしか、14級9号が認定されることはありません。
だからと言って、筋挫傷での14級9号認定事案が珍しいのかというと、そういう訳でもありません。弊社でも筋挫傷事案で14級9号が認定された事案を経験しています。
ただし、いずれも他にメインで後遺障害に認定された外傷が存在しており、筋挫傷は「ついでに」認定された印象を受けています。
筋挫傷と名前が似ている骨挫傷は後遺障害認定可能性が無い
筋挫傷と似ている傷病名に、骨挫傷があります。筋挫傷では14級9号が認定される可能性が僅かにありますが、骨挫傷では後遺障害に認定される可能性はありません。
<参考>
【日経メディカル】骨挫傷は交通事故診療では禁忌ワード!
【医師が解説】骨挫傷の後遺症で等級認定されるヒント|交通事故
筋挫傷でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
筋挫傷の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故による筋挫傷の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
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<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
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弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故による筋挫傷の後遺症でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
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尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
筋挫傷とは、鈍い衝撃によって筋肉が傷ついた状態です。筋挫傷の主な症状は、激しい痛みと腫れです。局所の腫れは翌日から数日で最大になり、その後は次第に軽くなります。筋挫傷では、受傷直後からRICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を丁寧に行う必要があります。
筋挫傷単体では14級9号が上限ですが、異所性骨化、骨化性筋炎、コンパートメント症候群を合併すると、より上位の後遺障害等級に認定される可能性があります。
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