無症候性の肩腱板断裂の頻度

投稿日:2017年3月4日 更新日:

交通事故や労災事故において、肩関節損傷も頻度の高い外傷のひとつです。そして、骨折を伴わない軟部組織損傷としては、腱板断裂が最もメジャーな疾患です。

 

一般的な腱板断裂の自然経過として、断裂した腱板は自然治癒しないとされています。むしろ、腱板断裂の自然経過として、断裂サイズが拡大する傾向にあります。

 

しかし、腱板断裂は全例が有症状になるわけでは無く、無症候性腱板断裂が存在することは近年明らかになってきました。私がこのことを意識しだしたのは、群馬大学整形外科学教室の前教授である高岸憲二先生の講演を拝聴してからです。

 

群馬大学のグループは、群馬県利根郡片品村で行われた特定検診において運動器検診を行い、腱板断裂を含めた整形外科領域の各種疾患の有病率を調査しました。腱板断裂の調査には超音波検査を用いたそうで、結果は下記のごとくです。

 

  • 50歳以上の住民の26.6%に腱板断裂を認めた
  • 高齢になるとともに有病率が高くなる
  • 背景因子は①外傷の既往 ②利き腕側 ③年齢
  • 症候性断裂の割合は34.6%、無症候性断裂は65.4%
  • 無症候性断裂の割合は、年代に関わらず腱板断裂例の約2/3であった

 

意外なほど、腱板断裂は一般的な病態であることが分かります。私たち整形外科医は、有症状の患者さんしか診察しないので、腱板断裂=痛い という図式を連想しがちです。

 

しかし、実際はそうではなくて、無症候性の腱板断裂もかなり多いようです。人口比では、26.6%×65.4%=17.4%の方が無症候性腱板断裂ということになります。

 

交通事故や労災事故をきっかけに肩関節痛を訴える方が多いですが、もともと無症候性腱板断裂を抱えている方も多そうです。

 

もちろん、このような無症候性腱板断裂の方も、事故にあわなければ一生痛みとは無縁の生活を送れた可能性もあるので、事故の影響度を正確に判断することは難しいと思います。

 

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