高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中などの外傷や病気によって引き起こされることが多く、その影響は日常生活に大きな支障をきたします。
特に、後遺障害3級の高次脳機能障害は、認知機能や行動に顕著な障害をもたらし、生活の質を大きく低下させます。
本記事では、高次脳機能障害の3級に該当する症状や特徴、そして後遺障害3級の認定を受けるためのポイントについて詳しく解説しています。
最終更新日: 2024/11/13
Table of Contents
高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害の概要
高次脳機能障害とは、病気や事故などによって脳が損傷を受けた結果、言語、記憶、思考、学習、注意などの脳機能に障害が起こった状態です。
顔や手足の麻痺症状がない場合でも、日常生活や社会生活に大きな支障をきたすケースが多いです。
高次脳機能障害の一般的な原因
高次脳機能障害の主な原因は、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、頭部外傷、低酸素血症、脳炎、てんかんなどです。
成人では脳卒中が最も多く、小児ではウイルス性疾患や頭部外傷が主な原因とされています。
高次脳機能障害の4大症状
高次脳機能障害の4大症状は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害です。
記憶障害は新しいことを覚えられない、注意障害は集中力の低下、遂行機能障害は計画的な行動ができない、社会的行動障害は感情や行動のコントロールが難しい状態を指します。
高次脳機能障害の診断基準
高次脳機能障害の診断基準では、厚生労働省が作成したものが一般的です。高次脳機能障害の診断基準の詳細は、こちらのコラム記事を参照ください。
診断基準には、脳の器質的病変の存在、日常生活や社会生活に制約があること、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害が含まれます。
MRIやCT、神経心理学的検査の所見も参考にされます。尚、診断基準の目的は行政支援であり、補償が目的の後遺障害認定基準とは異なることに注意が必要です。
<参考>
高次脳機能障害の診断基準とは?後遺障害認定基準との違い|交通事故
高次脳機能障害3級の認定基準
高次脳機能障害の後遺障害認定基準
高次脳機能障害の後遺障害は、障害の程度に応じて1級から14級までの等級が設けられています。等級認定基準は、脳の損傷の程度や症状の重さに基づいて決定されます。
具体的には、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力の4つの能力の喪失程度によって、以下のような等級に評価されます。
等級 |
認定基準 |
具体例 |
1級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの |
|
2級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの |
|
3級3号 |
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの |
|
5級2号 |
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの |
|
7級4号 |
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの |
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9級10号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
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12級13号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの |
|
14級9号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの |
|
3級の後遺障害認定基準
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの
- 4能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの
- 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの
3級の認定基準は、「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」とされています。
具体的には、自宅周辺を一人で外出できるが、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、対人関係の維持能力などに著しい障害があり、一般就労が困難な状態を指します。
3級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しているため、終身労務に服することができません。一般的に、就労できている事案では、5級認定に留まります。
3級に該当する具体的な症状
高次脳機能障害3級の具体的な症状としては、以下が考えられます。
記憶障害
- 短期記憶や長期記憶の障害が顕著で、日常生活の中で重要なことを忘れる(例:食事の時間や予定の変更を覚えられない)。
- 新しい情報を覚えにくく、過去の出来事を正確に思い出せない
注意・集中力の障害
- 家事など、集中を要する作業において持続的な注意力を保つことができない。
- 周囲の刺激に過剰に反応しやすく、注意散漫になる。
判断力・計画力の低下
- 日常的な意思決定や判断ができない。
- 問題解決や計画立てができない。
言語障害
- 言葉がうまく出てこない、または会話の流れが途切れることが頻繁にある。
- 会話の内容を理解するのに時間がかかる、または理解できない。
感情・情動の不安定さ
- 感情のコントロールが難しく、過剰に怒りっぽくなったり、逆に無気力になる。
- 感情的な反応が過剰で、社会的な場面で不適切な行動をとることが多い。
社会生活への影響
- 日常生活で他人とのコミュニケーションに問題を生じる。
- 家事や育児などの家庭内での役割を果たせない。
3級と2級との違い
3級と2級との違いは、介護の必要度です。1級は常に介護を要する状態、2級は随時介護を要する状態ですが、3級は介護の必要性がありません。
3級と5級との違い
3級と5級の違いは、労働能力の喪失度合いです。3級は就労できない状態ですが、5級は軽易な労務なら服することができます。
後遺障害3級認定のポイント【弁護士必見】
症状固定は受傷から1年以降で
後遺障害3級の認定を受けるためには、症状固定が重要なポイントとなります。症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない状態を指します。
一般的に、高次脳機能障害では、受傷から1年以降に症状固定となるケースが多いです。高次脳機能障害の症状が安定するまで、最低でも受傷から1年程度かかるためです。
また、高次脳機能障害をきたすほどの頭部外傷では、外傷性てんかんを併発する可能性があります。外傷性てんかんは受傷から数ヵ月経過してから発症することも珍しくありません。
このため、早過ぎる症状固定は、被害者の立場では不利になるケースがあります。
<参考>
外傷性てんかんの後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
就労していると3級は難しい
後遺障害3級の認定を受けるためには、労働能力の喪失が重要な要素となります。具体的には、労働能力が100%喪失していることが求められます。
したがって、就労している場合は、3級の認定を受けることが難しいとされています。これは、就労していることが労働能力の一部が残っていると見なされるためです。
後遺障害3級の認定を受けるためには、労働能力を完全に喪失していることを証明する必要があります。
高次脳機能障害の後遺障害認定ポイントは多岐にわたる
後遺障害3級に限らず、高次脳機能障害で後遺障害認定を受けるためには、さまざまなポイントやピットフォールがあります。
また、後遺障害認定を受けてからも、保険会社との示談でたくさんのハードルを乗り越えなければなりません。
高次脳機能障害の後遺障害認定ポイントやピット―フォールへの対応法は、こちらのコラムで詳述しています。興味のある方は参照してください。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の後遺障害3級認定に必要なこと
慢性期に画像検査を受ける
高次脳機能障害の後遺障害3級認定には、慢性期の画像検査が重要です。MRI検査やCT検査で、脳の器質的損傷や異常を証明します。
特に、びまん性軸索損傷では、後遺症が高度であるにもかかわらず、画像所見が乏しいケースが珍しくありません。
このようなケースであっても、慢性期の画像検査では脳萎縮を認める可能性があります。
<参考>
びまん性軸索損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
最適な神経心理学検査を受ける(評価バッテリー)
高次脳機能障害にはさまざまな症状があるため、ひとつの検査だけで全ての障害を評価できません。
このため、高次脳機能障害を評価するために、神経心理学的検査の組み合わせ(評価バッテリー)が提唱されています。
高次脳機能障害が適正な後遺障害に認定されるためには、神経心理学的検査の評価バッテリーが参考になります。
<参考>
高次脳機能障害の診断テストと評価バッテリー|交通事故の後遺障害
診断書を作成してもらう
後遺障害3級の認定には、専門医による診断書が不可欠です。診断書には、後遺障害診断書、頭部外傷後の意識障害についての所見、神経系統の障害に関する医学的意見があります。
それぞれの診断書には、高次脳機能障害が後遺障害に認定されるポイントがあります。詳細は以下のコラム記事を参照してください。
<参考>
日常生活状況報告書を作成する
日常生活状況報告書は、被害者の日常生活における具体的な支障を記録するための書類です。家族や介護者が、事故前後の被害者の状態を詳細に記載します。
これにより、医師や審査機関が被害者の実際の生活状況を理解しやすくなり、後遺障害の認定に役立ちます。日常生活状況報告書の詳細は、こちらのコラム記事を参照してください。
<参考>
日常生活状況報告の書き方とポイント|高次脳機能障害の後遺障害
高次脳機能障害3級の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残った高次脳機能障害が後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害3級の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
高次脳機能障害3級の慰謝料相場
高次脳機能障害3級の慰謝料相場は、約1990万円が相場です。また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることもあります。
慰謝料の金額は、裁判所基準、任意保険基準、自賠責基準の3つの基準によって異なりますが、裁判所基準が最も高額となることが一般的です。
高次脳機能障害でよくある質問
自賠責・労災・障害者手帳・障害年金の認定基準の違いは?
高次脳機能障害の認定基準は、目的や制度によって異なります。自賠責保険は交通事故による後遺障害の補償を目的とし、労災保険は労働災害による障害の補償を目的としています。
一方、障害者手帳は日常生活や社会生活の支援を目的とし、障害年金は生活の安定を図るための経済的支援を目的としています。
公共サービスや支援制度の活用方法
高次脳機能障害のある方が利用できる公共サービスや支援制度には、障害者総合支援法に基づく福祉サービスや障害者手帳の取得があります。
これらにより、税金の減免や公共料金の割引、介護サービスの利用が可能です。また、地域の障害福祉担当窓口で相談して、適切なサービスを受けることが重要です。
日常生活における課題は?
高次脳機能障害のある方が日常生活を過ごす上で、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などの症状が課題となります。
これらの課題を克服するためには、周囲の理解とサポートが不可欠です。具体的には、メモやチェックリストの活用、家庭内での配慮が求められます。
まとめ
高次脳機能障害の後遺障害3級とは、脳の損傷により労働が困難となる状態です。
主な症状には、記憶力の低下、新しい情報を覚えられない、集中が続かない、重要な判断ができない、言葉がうまく話せないなどがあります。また、感情が不安定になり、社会的な生活も困難になることがあります。
3級に該当する場合、生活の中で他人の介護は必要ないものの、労働能力が大幅に喪失しているため、通常の仕事を続けることが難しい状態です。
交通事故で受傷した高次脳機能障害に関してお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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