交通事故による高次脳機能障害は、症状の存在が見えにくいため、後遺障害の認定基準はとても分かりにくいです。
高次脳機能障害が残ると仕事が難しくなり、被害者を支える家族の精神的負担も大きくなります。このため被害者には適切な補償が必要です。
本記事では、高次脳機能障害の認定基準を「後遺障害に認定されるステップ」と「認定後の等級判定のステップ」に分けて詳しく解説しています。
最終更新日: 2026/2/13
Table of Contents
高次脳機能障害の認定基準
高次脳機能障害の認定基準は2段階に分かれている
高次脳機能障害の認定基準は、「高次脳機能障害に認定されるステップ」と「認定後の等級判定のステップ」の2段階に分かれています。
まず、高次脳機能障害が後遺障害に認定されるためには、以下の3つの基準をすべて満たす必要があります。
- 脳外傷の診断名がついている
- 症状固定時に脳損傷の画像所見が確認できる
- 受傷直後に意識障害があり、一定期間持続している
高次脳機能障害であると判断された後には、その後遺症が後遺障害の何級に該当するのかが判定されます。
後遺障害の等級判定では、症状の程度が客観的に評価されます。後遺障害等級は1級から12級まであり、後遺症の重さに応じて分類されます。
高次脳機能障害の認定に必要な6つの資料
高次脳機能障害に認定されるのか、認定されたとして何級に該当するのかは、以下の資料を参考にして審査されます。
- 後遺障害診断書
- 画像検査(CT、MRI)
- 頭部外傷後の意識障害についての所見
- 神経系統の障害に関する医学的意見
- 日常生活状況報告
- 神経心理学的検査

ステップ1:高次脳機能障害に認定される3つの基準
高次脳機能障害に認定されることが、最初にクリアするべき関門です。前述のように、高次脳機能障害に認定される3つの基準は以下のとおりです。
- 脳外傷の診断名がついている
- 症状固定時に脳損傷の画像所見が確認できる
- 受傷直後に意識障害があり、一定期間持続している
自賠責保険は、醜状障害を除いて書類審査です。このため、高次脳機能障害に認定される3つの基準は、以下の資料で審査されます。
- 後遺障害診断書
- 画像検査(CT、MRI)
- 頭部外傷後の意識障害についての所見
<参考>
頭部外傷後の意識障害についての所見|高次脳機能障害の後遺障害
ステップ2:高次脳機能障害の等級が認定される基準
高次脳機能障害の4大症状とは
残っている症状が高次脳機能障害であると認定された後には、その症状が何級に該当するのかが審査されます。
その際に重視されるのは、認知機能に関する4つの能力が、どの程度障害されているかです。
記憶障害
記憶障害は、脳の側頭葉内側が損傷することによって起こります。記憶障害は、前向性健忘と逆向性健忘の2つに分かれます。
前向性健忘は新しい情報を覚えられない状態、逆向性健忘は過去の記憶を思い出せない状態を指します。
注意障害
注意障害は、前頭葉や頭頂葉の損傷で起こります。周囲が気になって集中できなくなったり、複数の作業を同時に進めることが難しくなります。
遂行機能障害
遂行機能障害は、前頭葉の損傷で起こります。段取りをつけて進められない、計画通りに仕事を進められない、約束の時間に遅れるなどの症状です。
社会的行動障害
社会的行動障害は、前頭葉や側頭葉の損傷で起こります。感情のコントロールが難しい、すぐに怒る、自己中心的にふるまうなどの症状です。
<参考>
【日経メディカル】定量化が難しい交通事故による高次脳機能障害
高次脳機能障害の後遺障害等級を決める3つの資料
認知機能に関する4つの能力がどの程度障害されているのかは、以下の3つの資料を参考にして総合的に判断します。
- 神経心理学的検査
- 主治医が作成する「神経系統の障害に関する医学的意見」
- 主に被害者の家族が記載する「日常生活状況報告」
<参考>
等級認定に使用する主な神経心理学的検査
高次脳機能障害のが何級に該当するのかを判定するために、以下のような神経心理学的検査の組み合わせ(評価バッテリー)が使用されます。
全般的認知機能検査
記憶機能検査
注意機能検査
遂行機能検査
社会的行動検査
- 認知-行動障害尺度(TBI-31)
<参考>
高次脳機能障害の診断テストと評価バッテリー|交通事故の後遺障害
高次脳機能障害で考えられる後遺障害等級
高次脳機能障害は、意思疎通能力、問題解決能力、作業の持続力・持久力、そして社会行動能力の喪失度合いで評価します。
これらの「高次脳機能」の喪失度合いに応じて、後遺障害等級は1級~14級に分かれます。
高次脳機能障害が後遺障害に等級認定される要件を、さらに詳細に知りたい方は、以下のコラムにまとめています。ご参照いただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の後遺障害認定基準のポイント
高次脳機能障害では、画像診断で後遺症との整合性が確認されると、後遺障害認定の可能性が高まります。
特に、脳挫傷などの局所脳損傷の際には、損傷部位と症状の整合性を確認することが必要です。
高次脳機能障害の存在が認定されたら、「神経心理学的検査」、「医学的意見」、「日常生活状況報告」を総合的に判断し等級審査が行われます。
近年、受傷時の意識障害の重要性は低下しており、総合的な判断が重視される傾向にあります。
高次脳機能障害と身体性機能障害は一体として評価されて、就労制限や日常生活の制限度合いに基づき後遺障害等級が認定されます。
交通事故の賠償実務では、主観的要素が強い神経心理学的検査が争点となることが多いです。
神経心理学的検査が経時的に悪化する事例は稀ですが、その際にはガイドラインを引用して反論可能です。
高次脳機能障害が後遺障害認定されるポイントを詳しく知りたい方は、以下のコラム記事にまとめています。ご参考にしていただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の認定基準で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残った高次脳機能障害が後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的データ量をベースにしています。整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくため、初回事務所様は無料で承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した専門医が作成します。作成前に検討項目を共有して、クライアントと意見書の内容を擦り合わせます。
必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックで、意見書の質を担保しています。
弊社は、数千におよぶ医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例があります。是非、弊社の医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査や資料を精査して、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では、事案の分析から画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害の認定基準でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解のほどお願いいたします。

高次脳機能障害が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
高次脳機能障害で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料とは
交通事故で高次脳機能障害が残った精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料の相場は?
交通事故で発症した高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級によって異なります。
例えば、9級は約690万円、7級は約1000万円、5級は約1400万円、3級は約1990万円、2級は約2370万円、1級は約2800万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円が加算されることがあります。さらに1~2級では将来の介護費として1億円が認められることもあります。
このように、高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益とは
高次脳機能障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、被害者の年収や年齢をベースにして、等級に応じた労働能力喪失率と喪失期間で決まります。以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益の相場は?
高次脳機能障害の逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、1級の後遺障害の場合、逸失利益は約1億円前後となる可能性があります。一方、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
高次脳機能障害の認定基準でよくある質問
認定には画像所見が必須ですか?
原則として、CTやMRI検査などで、脳の器質的損傷が確認できることが重要視されます。
画像所見がない場合は認定が難しくなる傾向がありますが、受傷状況や神経心理学検査結果、診療経過を総合的に評価して判断されます。
どのような検査が必要ですか?
ウェクスラー成人知能検査 (WAIS-Ⅳ)、ウェクスラー記憶検査(WMS-R)、遂行機能の行動評価法 (BADS)などの神経心理学検査が重要です。
単なる自覚症状だけでなく、神経心理学的検査などの客観的検査で、機能低下が裏付けられることが認定のポイントになります。
受傷直後に意識障害がないと認定されませんか?
意識障害の存在は重要な判断材料です。しかし、弊社の経験では、最近は必須条件ではなくなってきた印象があります。
ただし、意識障害が全く確認できない場合は外傷との因果関係が問題となり、慎重な医学的立証が求められます。
就労していると認定は不利ですか?
就労の有無だけで直ちに不利にはなりません。ただし、通常勤務が問題なく可能なら、障害の程度が軽いと判断される可能性があります。
家族の陳述書はどの程度重要ですか?
高次脳機能障害は外見から分かりにくいため、家族による日常生活の変化に関する具体的な陳述は重要な補強資料になります。
ただし、医療記録や検査結果と整合している必要性があるため、後遺障害認定基準を熟知した脳神経科専門医の助言が推奨されます。
発症から時間が経つと認定されにくいですか?
症状固定時の状態が審査対象となりますが、時間経過のみで認定されにくくなるわけではありません。
ただし、特に高齢者では認知症を発症しやすく、受傷との因果関係が曖昧になるため、初期の診療記録の保存が極めて重要です。
うつ病など精神疾患との違いは?
高次脳機能障害は脳の器質的損傷に基づく認知機能障害であり、心理的要因が中心の精神疾患とは区別されます。
異議申し立てで認定が変わることはありますか?
異議申し立てで認定が変わることはあります。新たな検査結果や医師意見書の追加提出で判断が変更されるケースもあります。
後遺障害認定基準を満たしていない点を補強する医証を提出することが、異議申し立て成功のポイントです。
高次脳機能障害の症状は?
高次脳機能障害は、受傷した部位や程度によって様々な症状が現れます。主な症状に以下のようなものがあります。
行動の変化
行動の自己制御が困難になり、衝動的な行動や社会的なマナーの欠如が見られることがあります
認知機能の低下
注意力の散漫、計画の策定や実行の困難、記憶の問題などがあります
感情の変化
感情の制御が難しくなり、怒りや興奮が急激に現れることがあります
言語の問題
言語の理解や表現が困難になり、会話が不自然になることがあります
日常生活の困難
日常生活のスケジュール管理やタスクの完了が困難になることがあります
これらの症状は個人によって異なり、一部の症状だけが目立つケースも珍しくありません。
<参考>
高次脳機能障害の原因は?
高次脳機能障害は脳がダメージを受けて起こります。主な原因は、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)や頭部外傷(交通事故や転倒)です。
また、低酸素血症(酸素不足による脳の損傷)や脳炎(ウイルスや細菌の感染)も原因となります。
これらの要因により、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの症状が現れます。
診断を受ける際の注意点
高次脳機能障害の診断を受ける際には、患者本人や家族が症状を正確に伝えることが重要です。
特に、記憶障害や注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの症状がある場合、それらを具体的に説明することが求められます。
高次脳機能障害と認知症の違いは?
高次脳機能障害と認知症は、どちらも脳の機能に影響を与える障害ですが、いくつかの重要な違いがあります。
高次脳機能障害は、脳卒中や頭部外傷などの明確な原因によって発症して進行性ではありません。
一方、認知症は高齢者に多く見られ、時間の経過とともに進行します。認知症の原因には、アルツハイマー病や脳血管障害などが含まれます。
<参考>
高次脳機能障害のリハビリは?
高次脳機能障害の診断後は、患者の生活の質を向上させるために非常に重要です。診断後、まずはリハビリテーションが開始されます。
リハビリテーションには、理学療法、作業療法、言語療法などが含まれ、患者の具体的な症状に応じて個別に計画されます。
リハビリの進行状況は定期的に評価されて、必要に応じて治療計画が修正されます。
また、患者の精神的な健康も重視され、心理的サポートが提供されることが多いです。
障がい者手帳取得の流れは?
障がい者手帳を取得するためには、まず医師の診断書が必要です。診断書には、障害の程度や症状の詳細が記載されている必要があります。
次に、市区町村の障害福祉窓口に申請書と診断書を提出します。申請が受理されると、審査が行われ、障害者手帳が交付されます。
手帳の種類には、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の3種類があります。
手帳を取得することで、医療費の助成や税金の軽減など、さまざまな公的サービスを受けることができます。
家族ができるサポートは?
家族ができるサポートとしては、まず障害について理解し、適切な支援を提供することが重要です。
具体的には、生活や行動の構造化、経済的基盤の整備、公的支援の活用などが挙げられます。
まとめ
高次脳機能障害の認定は2つのステップに分かれます。まず脳外傷の診断名、画像所見、意識障害があると高次脳機能障害に認定されます。
その後、神経系の機能や精神に著しい障害が残るかを評価して、1級から12級までの等級が決まります。
後遺障害等級の判定には、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害の四つの主要症状が評価されます。
高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニング®を承ります。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。






