むちうちが後遺障害に認定されるためには、週4回の通院が必要なのでしょうか。週1回の通院でも後遺障害に認定されるのでしょうか。
本記事は、整形外科専門医が、むちうちが後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/16
Table of Contents
むちうちの後遺障害
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
むちうちの主な症状は、首の痛み、手の痛み・しびれです。これらの症状は、自賠責保険用語で「神経症状」と言います。
むちうちの後遺障害では、12級13号と14級9号に認定される可能性があります。このうち、12級13号は非常に条件が厳しいです。
後遺障害として認定される可能性のある症状は、首の痛みだけではなく、肩こり、上肢のしびれや痛み、めまいや頭痛、嘔気などがあります。
12級13号認定のためには、レントゲン検査とMRI検査で客観的な異常所見を証明する必要があります。
異常所見には、椎間板ヘルニアや骨棘(首の骨の年齢による変化)、椎間板高の減少(年齢による変性で椎間板の厚みが減少する)も含まれます。
神経や椎間板は、レントゲンには写らず、MRI検査でしか評価ができません。このため、レントゲン検査しか実施されていないと、12級13号に認定される可能性は極めて低いです。
12級13号が認定されるためには、自覚症状や画像所見だけでは不十分で、客観的な身体所見が必要です。客観的な所見には以下のものが含まれます。
- 筋力低下
- 筋肉の萎縮(やせて細くなる)
- 深部腱反射の異常
上記に加えて、痛みやしびれの範囲が、MRI検査での異常所見の高位と一致している必要があります。痛みやしびれの範囲をデルマトームと言います。
<参考>
14級9号:局部に神経症状を残すもの
むちうちでは、12級13号と14級9号に認定される可能性があります。しかし、12級13号は非常に条件が厳しいため、むちうちで後遺障害に認定される事案のほとんどは14級9号です。
むちうちの後遺障害14級では、画像検査で異常所見が存在しなくても、事故規模や通院頻度などの周辺状況を総合的に判断して後遺障害認定されます。
自賠責保険の中では、交通事故被害者の救済色が強く、13級以上の後遺障害とは趣の異なるやや特殊な等級だと言えます。
<参考>
むちうちの後遺障害認定に週4回通院が必要?
むちうちの後遺障害認定は週3回通院で充分
整形外科(病院や開業医)に通院しているケースでは、週3回通院がおおよその目安になります。
もちろん、週3回以上通院したからと言って、自動的にむちうちの後遺障害に認定されるわけではありません。
逆に、週3回以上の通院頻度は、最低限の条件だと考えましょう。これ以下の通院頻度では、むちうちで後遺障害に認定される可能性は極めて低くなります。
整骨院がむちうち治療のメインなら週4回ちかい通院も必要
むちうちの後遺障害が非該当になる事案でよく見かけるのは、混雑している整形外科を避けて、整骨院(接骨院)をメインにしているケースです。
自賠責保険は、整骨院や接骨院での施術を、整形外科(病院や開業医)と同等には見ていません。あくまでも、整骨院(接骨院)は整形外科の治療を緊急避難的に補完するものというスタンスです。
このため、整骨院への通院だけでは不充分で、整形外科への通院も2週間に1回程度以上の通院が必要です。このため、トータルでは週4回ちかい通院頻度が必要となります。
<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
むちうちで後遺障害認定に必要な通院期間
むちうちで後遺障害が認定されるためには、6ヶ月以上の通院期間が必要です。弊社では、通院期間のデッドラインは5.5ヶ月と考えています。詳細は以下の記事を参照してください。
<参考>
【医師が解説】整形外科のリハビリはいつまで通う?|交通事故後遺症
むちうちでは週3回通院が後遺障害認定に必要
弊社ではこれまで数千例の交通事故事案に取り組んできましたが、医療機関(病院や開業医)への通院頻度には、実臨床と自賠責保険のベストミックスが存在すると考えています。
その通院頻度とは整形外科への週3回の通院です。これぐらいの頻度が、治療面でも自賠責保険の後遺障害認定においても最適解ではないでしょうか。
<参考>
【医師が解説】交通事故にあったら毎日通院した方がいいのか?
【弁護士必見】むちうちの後遺障害認定ポイント
後遺障害認定には通院頻度だけでは不十分
ご存知の弁護士は多いと思いますが、むちうちなどの神経障害の自賠責認定基準において、通院頻度は最低限の条件に過ぎません。
通院頻度をクリアしていることは必要最低限であり、この条件をクリアしていても多くの事案は非該当になります。通院頻度は、約20項目近くある自賠責認定基準の入り口の条件に過ぎません。
むちうちなどの神経障害の後遺障害認定のためには、更に高いレベルでの検討と対策が必要なのです。
<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫(むちうち)の後遺症認定のポイント|交通事故
14級9号とそれ以外に分けて考える
後遺障害認定事案で最も数が多いのは、むちうちや腰椎捻挫による神経障害14級9号です。これらに該当する事案は、後遺障害の中でもボリュームゾーンです。
対象となる被害者の数が多いため、自賠責保険も厳格な運用を行っています。認定率3.2%と言われている後遺障害14級の狭き門をくぐるためには、以下の2段階のステップを踏む必要があります。
- どの項目が自賠責認定基準をクリアしていないのか
- いかにして不足分を補うのか
一方、14級9号以外の事案では、比較的明確な認定基準が存在します。このため、これらの条件をクリアすれば、後遺障害が等級認定される傾向にあります。
どの項目が自賠責認定基準をクリアしていないのか
弊社の感覚では、年間数百レベルの事案をこなしていない限り、自賠責認定基準を把握することは困難と思われます。その理由は、自賠責認定基準のマイナーチェンジの存在です。
自賠責認定基準は少しずつアップデートされていくので、取り組み事案数が少ないと自賠責認定基準の理解の精度が落ちます。
特に、むちうちでは、微妙な条件の違いが認定結果を左右するケースが多いだけに、重要なポイントです。
弊社では、年間1000事案の圧倒的取り組み事案数に裏付けされた等級スクリーニングというサービスを実施しています。
いかにして不足分を補うのか
仮に自賠責認定基準を正確に理解しているとしても、実際のむちうち事案と後遺障害認定の間には、大きなギャップが存在するケースがほとんどです。
実臨床と自賠責認定基準が全く別物です。したがって、真っ当な治療を行っているだけでは後遺障害に認定される可能性は極めて低いと言えます。
自賠責認定基準の高い壁をクリアするためには、不足している部分を補う新たな医証を収集する必要があります。医証にはいくつか種類がありますが、第三者医師による医師意見書と画像鑑定報告書が有用なケースが多いです。
<参考>
【医師が解説】後遺障害の異議申し立てを成功させるヒント|交通事故
鑑定医師が自賠責認定基準を熟知している必要がありますが、そのような医師が作成した医師意見書や画像鑑定報告書は、不足分を補う有力なツールとなります。
弊社では、年間1000事案の圧倒的取り組み事案数に裏付けされた医師意見書と画像鑑定報告書を提供しています。むちうちの後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
<参考>
まとめ
むちうちの後遺症が後遺障害に認定されるために必要な通院頻度や通院期間は、週3回以上、通院期間は6ヶ月以上です。
一方、医療機関と整骨院を併用する場合には、整形外科と整骨院のトータルで週4回ちかい通院頻度が必要と考えられています。
しかし、むちうちの自賠責認定基準において通院頻度は最低限の条件に過ぎません。後遺障害認定のためには、更に高いレベルでの検討と対策が必要です。
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