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【医師が解説】腕がズキズキする神経痛の治し方と後遺障害|交通事故

腕がズキズキする神経痛はつらい症状ですね。交通事故のむちうちでは、腕の神経痛が後遺症になりやすいです。

 

どこで治療を受ける? どのような治療を受ける? どれぐらい通院すればよい? 後遺症が残った時に後遺障害が認定される方法は? 悩みや疑問が尽きませんね。

 

本記事は、年間1000例の交通事故事案を取り扱っている整形外科医が、腕がズキズキする神経痛の治し方と後遺障害を説明しています。

 

 

最終更新日: 2024/5/13

 

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腕がズキズキする神経痛の原因

 

arm pain

 

腕の神経痛をきたす原因には、以下のようなものがあります。

 

  • 頚椎椎間板ヘルニア
  • 頚椎症性神経根症
  • 胸郭出口症候群
  • むちうち

 

 

頚椎椎間板ヘルニア

腕の神経痛の原因として、最も有名なのは頚椎椎間板ヘルニアでしょう。脳から手足に向かう神経は、背骨の中の空間(脊柱管)を通って首の骨(頚椎)まで来ます。

 

頚椎は竹の節のように連なっており、頚椎の間から手に向かう神経(神経根)が出てきます。足に向かう神経は首の部分では外に出ず、そのまま脊柱管を通って腰の骨(腰椎)まで行きます。

 

そして、腰椎の間から足に向かう神経(神経根)が出ていきます。頚椎の間には、椎間板という一種のクッションのような働きをする軟部組織があります。正常な椎間板には弾性があるので、首が前後左右に動くことができます。

 

交通事故などによって外部から強い衝撃が頭や首に伝わると、頚椎の間にある椎間板が損傷して脊柱管の中に突出します。首の椎間板が突出した状態を、頚椎椎間板ヘルニアと言います。

 

椎間板が突出すると、その近くを走っている脊髄や神経根を圧迫して、上肢の痛みやしびれが出現します。

 

 

<参考>
【医師が解説】頚椎椎間板ヘルニアが後遺症認定されるコツ|交通事故

 

 

頚椎症性神経根症

頚椎症性神経根症は、頚椎椎間板ヘルニアと似たような病態です。頚椎椎間板ヘルニアでは、神経根を圧迫しているのが椎間板ヘルニアです。

 

一方、頚椎症性神経根症は、加齢による頚椎の変性によって、椎間板ヘルニアだけではなく骨棘などの変形した骨も原因となって椎間孔の狭窄が生じて神経根が圧迫します。

 

頚椎椎間板ヘルニアが比較的若年者に発症することと比べて、頚椎症性神経根症は中~高齢者に発症することが特徴的です。

 

 

むちうち

交通事故で後方から追突されると、頚部が「むち」のようにしなって強い外力が加わります。このため、首の骨の周りに炎症が発生して、首の痛みや腕の神経痛を発症します。

 

むちうちでは、無症状だった頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性神経根症が、交通事故によって首に加わった大きな外力をきっかけにして発症するケースが多いといわれています。

 

 

<参考>
【医師が解説】むちうち(頚椎捻挫)後遺症認定のポイント|交通事故

 

 

胸郭出口症候群

胸郭出口症候群とは、首と肩の間を通る血管や神経が圧迫されたり、引っ張られたりすることにより起こる血流障害や神経障害のことをいいます。

 

首から肩の間には、肩や腕、手などの運動や感覚にかかわる血管や神経があり、頚部の筋肉(斜角筋)の間、第1肋骨と鎖骨の間といった狭い場所を通過するため、圧迫を受けやすく、肩や腕、手などに症状があらわれることがあります。

 

 

<参考>
【医師が解説】胸郭出口症候群が後遺症認定されるヒント|交通事故

 

 

腕がズキズキする神経痛は何科?

 

腕の神経痛では整形外科を受診しましょう。整形外科の中にも、脊椎外科や手の外科といった専門領域がありますが、まずは一般的な整形外科で問題ありません。

 

可能性は高くないですが、整形外科から脳神経内科に紹介される場合もあります。いずれにせよ、初診は整形外科が望ましいでしょう。

 

 

腕がズキズキする神経痛の治し方

神経痛の保存療法

発症した直後は、安静と消炎鎮痛剤(お薬、シップ)の処方が一般的です。交通事故直後のむちうちでは、頚部保護のために頚椎装具(ソフトカラー)を処方することもあります。

 

交通事故では受傷から1〜2週間経過すると、物理療法(温熱、低周波など)、牽引、セラピストによるリハビリテーションなどが行われます。

 

一般的な消炎鎮痛剤で効果が無い場合には、プレガバリンなどの神経痛を抑える薬剤が処方されるケースもあります。

 

 

neck collar

 

 

神経痛の手術療法

神経痛の原因が頚椎椎間板ヘルニアなどである場合は、頚椎の手術が行われることもあります。

 

具体的には上肢の強い痛みやしびれが持続するケース、上肢や下肢に麻痺(まひ)を生じているケースなどが該当します。

 

頸髄という神経本体が損傷を受けると、両手の巧緻性障害(こうちせいしょうがい:細かい作業ができない)、四肢のしびれ、感覚異常などの症状が出てきます。

 

症状が重症化してくると歩行障害(痙性や失調によるもの)や直腸膀胱障害(自力で尿が出せない、失禁するなど)を生じることもあります。

 

交通事故後に頚椎手術が必要とされる病態として、元々神経の通り道(脊柱管)が狭い方が事故後に脊髄や神経根圧迫の症状が出現してしまうケースがあります。

 

脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)の原因として多いのは、発育性脊柱管狭窄と頚椎後縦靭帯骨化症によるものです。

 

日本人の頚椎脊柱管は欧米の方と比較すると、狭い傾向があり、無症状で生活されている方の中にも潜在的な脊柱管狭窄を有する人がいます。

 

また、後縦靭帯骨化症は、アジア人に多いとされており、脊柱管狭窄症の原因となりえます。

 

そのため、脊柱管狭窄がベースにある方が、交通事故の外傷により脊髄や神経根の症状が悪化してしまった場合は、脊髄や神経根の圧迫をとりのぞくための除圧術が行われることもあります。

 

 

<参考>
【医師が解説】後縦靭帯骨化症(OPLL)と後遺症|交通事故

 

 

整骨院の施術には医学的なエビデンスが無い

整骨院へ通う理由は、至る所に存在することや夜遅くまで営業していること以外にも、施術そのものに効果を感じることが挙げられます。

 

しかし残念ながら、整骨院の施術で、むちうち症状を改善させたという医学的エビデンスは存在しません。自然科学では、ランダム化比較試験(Randomised Controlled Trial, RCT)の有意結果が最上位のエビデンスです。

 

一方、医学的な治療法や薬物療法で使用される薬剤は、ランダム化比較試験で効果を確認されたものがほとんどです。やはり科学的に効果が確認されている整形外科の治療を優先させるべきでしょう。

 

 

むちうち神経痛の後遺障害

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

局部とは、頚椎捻挫においては頚椎(首)をさします。神経症状とは、頚椎捻挫に由来する症状をさします。頚部痛に留まらず、肩こり、腕のしびれや痛み、めまいや頭痛、嘔気なども含まれます。

 

14級9号との大きな違いは、「障害の存在が医学的に証明できるもの」という箇所です。12級13号認定のためには、まずレントゲンやMRIで客観的(他覚的)な異常所見があることが前提になります。

 

異常所見には骨折や脱臼はもちろんですが、その他にも椎間板ヘルニアや骨棘(頚椎加齢の変化)、椎間板高の減少(加齢による変性で椎間板の厚みが減少する)も含まれます。

 

神経や椎間板は、レントゲンには写らず、MRIを撮らないと評価ができないため、頚椎捻挫治療の過程で頚椎のレントゲンしか撮影されていない場合は、障害の存在を医学的に証明することが困難なケースが多いです。

 

また若い患者さんでは、加齢の変化が少ないため、MRIの異常所見が存在しないことも多く、その場合も、12級13号は非該当となります。

 

神経症状に関しても14級9号では、自覚症状(患者さんの訴え)としての痛みで良いのですが、12級13号では、より条件が厳しくなります。

 

自覚症状だけでは不十分で、客観的な症状が必要とされます。客観的な症状には、筋力低下、筋肉の萎縮(やせて細くなる)、深部腱反射の異常(医師が打腱器を使って行う検査)をさします。

 

しびれ(知覚障害)の範囲も、損傷された神経の分布に一致している必要があります。頚椎捻挫で行われる頻度は非常に低いですが、筋電図や神経伝導検査といった特殊な検査の異常値も客観的な所見に含まれます。

 

筋力低下は、医学的には徒手筋力テスト(MMT)で評価され、筋力が正常な5から完全運動麻痺の0までの6段階で記載されます。

 

 

<参考>
【医師が解説】徒手筋力検査は後遺症12級認定のポイント|交通事故

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

局部とは、頚椎捻挫では頚椎(首)をさします。神経症状とは、頚椎捻挫に由来する症状をさします。頚部痛に留まらず、腕のしびれや痛み、めまい、頭痛、嘔気なども含まれます。

 

将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)が前提になります。

 

症状の常時性(時々痛みがあるのではなく、常に痛みがある)が認定要件です。「天気が悪いときに痛い」といったように症状の消失する時間があると認定されません。

 

また、交通事故と本人の感じる後遺症に因果関係が認められることが条件となるため、あまりに車体の損傷が小さい軽微な交通事故は非該当とされることが多いです。

 

 

<参考>
【医師が解説】むちうち(頚椎捻挫)後遺症認定のポイント|交通事故

 

 

【弁護士必見】むちうち神経痛の後遺障害認定基準

 

むちうちの治療に全力で取り組んだにもかかわらず、症状が残ってしまった場合には後遺障害の申請をすることになります。

 

 

むちうちで後遺障害が認定されるためには、たくさんのチェックポイントがあります。そして最初のハードルは通院頻度と通院期間です。

 

 

医療機関のみなら60日以上

病院や整形外科開業医(クリニック)に通院しているケースでは、60日がおおよその目安になります。

 

もちろん、60日以上通院したからと言って、自動的に後遺障害14級9号が認定されるわけではありません。

 

逆に、通院期間60日以上は最低限の条件だと考えましょう。これ以下の通院日数では後遺障害14級9号に認定される可能性は極めて低くなります。

 

 

医療機関+整骨院は80日以上

よくありがちなのは、非常に混雑している整形外科開業医を避けて、整骨院(接骨院)をメインにして施術を受けているパターンです。

 

しかし、自賠責保険は整骨院や接骨院での施術を、医療機関(病院や整形外科開業医)と同等には見ていません。

 

あくまでも、整骨院(接骨院)は医療機関の治療を緊急避難的に補完するものというスタンスです。

 

このため、医療機関のみの60日を大幅に上回る80日程度の通院が必要と思われます。

 

しかも、医療機関への通院が15~20日程度必要です。そして医療機関には月1日程度しか受診しておらず、それ以外は整骨院の施術で済ませているケースは、ほとんど非該当になります。

 

 

<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害

 

 

通院期間は6ヶ月以上

通院期間としては、医療機関のみの場合にも、整骨院併用の場合でも、6ヶ月以上が必須です。

 

 

<参考>
【医師が解説】むちうち後遺障害12級、14級のポイント|交通事故

 

 

むちうち神経痛の後遺障害認定確率は約5%

 

損害保険料率算出機構は、自動車保険の概況という統計資料を公表しています。2021年度(2020年度統計)では、損害調査受付件数が1041737件でした。

 

このうち、後遺障害に認定された事案は49267件で、後遺障害認定率は約4.7%です。むちうちのみに限った確率ではないですが、ほぼ近似した数字と言ってよいでしょう。

 

 

<参考>
損害保険料率算出機構「2021年度 自動車保険の概況」

 

 

まとめ

 

腕がズキズキする神経痛は、まず整形外科を受診しましょう。必要に応じて、脊椎外科や手外科などの各専門領域の専門医や、脳神経内科を紹介される場合もあります。

 

神経痛の治療は、安静と消炎鎮痛剤(お薬、シップ)の処方などの保存療法が基本です。一般的な消炎鎮痛剤で効果が無い場合には、プレガバリンなどの神経痛を抑える薬剤が処方されるケースもあります。

 

むちうちのよる神経痛で想定される後遺障害は12級13号もしくは14級9号ですが、いずれも認定のハードルは高いです。

 

弁護士の先生で、腕の痛みなどの神経痛でお困りの事案があれば、こちらから気軽にご相談お願いいたします。尚、患者さんからの相談は固くお断りいたします。治療に関しては主治医に、後遺障害に関しては弁護士に相談してください。

 

 

 

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