交通事故による頭部外傷で脳組織に損傷を受けると、高次脳機能障害を発症する可能性があります。
高次脳機能障害は、記憶、注意、思考、言語などの脳の高次機能に影響を及ぼし、日常生活や仕事に大きな支障をきたします。
本記事では、高次脳機能障害が12級に後遺障害認定されるための基準や具体的な症状について、詳しく解説しています。
最終更新日: 2024/11/23
Table of Contents
高次脳機能障害の基本
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされる神経心理学的な障害です。主に脳血管障害や交通事故による頭部外傷が原因で、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などが現れます。
高次脳機能障害の原因は?
高次脳機能障害の主な原因は、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)や交通事故による頭部外傷、脳腫瘍、脳炎、低酸素脳症などです。特に高齢者では脳卒中が多く見られます。
高次脳機能障害の4大症状
高次脳機能障害の主な症状には、失語症、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。これらの症状は、損傷部位によって異なります。
高次脳機能障害の診断基準
高次脳機能障害の診断は、認知機能を総合的に調べる簡易検査や神経心理検査、頭部MRIやCT検査などの画像検査を通じて行われます。
高次脳機能障害の診断基準は、厚生労働省が作成したものが一般的です。高次脳機能障害の診断基準の詳細は、こちらのコラム記事を参照ください。
<参考>
高次脳機能障害の診断基準とは?後遺障害認定基準との違い|交通事故
高次脳機能障害12級の認定基準
高次脳機能障害の後遺障害認定基準
高次脳機能障害の後遺障害は、障害の程度に応じて1級から14級までの等級が設けられています。等級認定基準は、脳の損傷の程度や症状の重さに基づいて決定されます。
具体的には、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力の4つの能力の喪失程度によって、以下のような等級に評価されます。
等級 |
認定基準 |
具体例 |
1級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの |
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2級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの |
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3級3号 |
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの |
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5級2号 |
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの |
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7級4号 |
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの |
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9級10号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
|
12級13号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの |
|
14級9号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの |
|
12級の後遺障害認定基準
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの
- 4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているもの
実務上は、高次脳機能障害として認定される等級の下限は12級13号と言われています。臨床的な症状が無くても、症状固定時のCTやMRIで脳挫傷痕や脳萎縮などの所見を認めれば、12級13号が認定されます。
12級に該当する具体的な症状
12級に該当する具体的な症状には、軽度の記憶障害や注意障害、遂行機能障害などがあります。
これらの症状により、日常生活や労働において一部の支障が生じることがありますが、完全に労務ができないわけではありません。
12級と9級の違い
12級と9級の違いは、障害の程度と労務への影響にあります。12級は、日常生活においても少しの支援があれば自立できる状態です。
9級は、日常生活は可能ですが、仕事には多少の支障があるため、就労可能な職種が相当程度に制約されます。
高次脳機能障害の後遺障害12級認定に必要なこと
慢性期に画像検査を受ける
高次脳機能障害の後遺障害12級認定には、慢性期の画像検査が重要です。MRI検査やCT検査で、脳の器質的損傷や異常を証明します。
高次脳機能障害の4大症状が無くても、画像検査で脳挫傷痕や脳萎縮を認めれば、高次脳機能障害12級に認定されます。
診断書を作成してもらう
後遺障害12級の認定には、専門医による診断書が不可欠です。診断書には、後遺障害診断書、頭部外傷後の意識障害についての所見、神経系統の障害に関する医学的意見があります。
特に、後遺障害診断書と頭部外傷後の意識障害についての所見が重要です。それぞれの診断書には、高次脳機能障害が後遺障害に認定されるポイントがあります。詳細は以下のコラム記事を参照してください。
<参考>
後遺障害12級認定のポイント【弁護士必見】
画像所見の有無が最重要ポイント
高次脳機能障害で後遺障害12級の認定を受けるためには、画像検査で異常所見が存在することを証明する必要があります。
脳挫傷痕が存在する場合はあまり問題になりませんが、脳萎縮に関しては、軽度の場合には異常所見とみなされないケースも散見します。
このような場合には、経時的に比較すると、脳萎縮の進行を確認できるケースがあります。画像所見がネックになって非該当になった場合には、画像鑑定も検討が必要でしょう。画像鑑定について不明点があれば、こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
9級認定のための医証の集め方
9級認定のためには、神経心理学的検査、神経系統の障害に関する医学的意見、日常生活状況報告が重要です。これらの資料を基に、9級の認定基準が審査されます。
日常生活や社会生活に軽度の支障しかない場合であっても、後遺障害9級に認定される可能性があります。
このため、周囲から見て受傷前と違う感じがあれば、上記の3つの医証の内容を精査して、不足している記載や資料が無いかを確認しましょう。
尚、高次脳機能障害の後遺障害認定ポイントやピット―フォールへの対応法は、こちらのコラムで詳述しています。興味のある方は参照してください。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害12級の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残った高次脳機能障害が後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害12級の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
高次脳機能障害12級の慰謝料相場
高次脳機能障害12級の慰謝料相場は、後遺障害慰謝料として約290万円が一般的です。この他に、逸失利益として労働能力を14%失ったことによる減収額が加算されます。
慰謝料の金額は、弁護士基準、任意保険基準、自賠責基準の3つの基準によって異なりますが、弁護士基準が最も高額となることが多いです。適切な慰謝料を受け取るためには、弁護士に相談することが推奨されます。
高次脳機能障害でよくある質問
高次脳機能障害はよくなるのですか?
高次脳機能障害の回復は個人差がありますが、適切なリハビリテーションを受けることで症状が改善することがあります。ただし、すべての患者に効果があるわけではなく、早期の治療が重要です。
発達障害や認知症とはどのように違うのですか?
高次脳機能障害は、脳の損傷による認知機能の障害であり、発達障害や認知症とは異なります。発達障害は生まれつきの特性であり、認知症は加齢による脳の変性が原因です。
高次脳機能障害の患者は自分の障害に気がついているのでしょうか?
高次脳機能障害の患者は、自分の障害に気づかないことが多いです。これは病識欠如と呼ばれ、患者自身が自分の状態を正確に認識できないため、周囲のサポートが必要です。
高次脳機能障害の患者とどのように接したらよいですか?
高次脳機能障害の患者と接する際は、理解と忍耐が重要です。具体的な指示を出し、繰り返し説明することが効果的です。また、患者の感情や行動の変化に対して柔軟に対応し、サポートを続けることが大切です。
まとめ
高次脳機能障害の後遺障害は1級から14級までの等級で分類され、12級は日常生活においても少しの支援があれば自立できる状態です。
12級の後遺障害認定基準は、画像検査で脳挫傷痕や脳萎縮像が認められれば、外観上の症状が無くてもクリアできます。このため、慢性期の画像検査が、もっとも重要です。
一方、9級を目指して異議申し立てする際には、神経心理学的検査、神経系統の障害に関する医学的意見、日常生活状況報告が重要です。
交通事故で受傷した高次脳機能障害に関してお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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