交通事故による圧迫骨折の痛みが続いているのに、「後遺障害に該当しない」「想定より低い等級になった」といった結果に不満を抱えていませんか。
圧迫骨折はレントゲン検査など画像上に変形が見られるかどうかが後遺障害等級の認定に直結するため、画像所見や提出書類の内容によって結果が大きく変わる可能性があります。
このコラムでは、圧迫骨折の後遺障害認定で非該当や低い等級となった方に向けて、異議申し立ての流れや成功のためのポイント、必要な書類、そして実際の成功事例までを分かりやすく解説します。
適切な手続きを踏めば、等級が変更される可能性もあります。納得のいく等級を目指すための第一歩として、ぜひご活用ください。
最終更新日: 2025/8/5
Table of Contents
圧迫骨折で非該当になる理由
圧迫骨折の後遺障害認定基準
圧迫骨折が原因で脊柱に変形や運動障害が残ったら、以下の5つの後遺障害に認定される可能性があります。
- 脊柱の変形障害(6級、8級、11級)
- 脊柱の運動障害(6級、8級)
- 脊柱の荷重機能障害(6級、8級)
- 局部の神経障害(12級、14級)
- 脊髄損傷の後遺障害
1. 脊柱の変形障害(6級、8級、11級)
等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
8級2号 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
6級5号:脊柱に著しい変形を残すもの
2つ以上の椎体で、前側の高さを合計すると、後ろ側の高さの合計よりも、椎体1個分以上低くなっている状態です。簡単に言えば、椎体の前側の高さが、1個分以上つぶれて低くなっている状態です。
1個の椎体分とは、骨折した椎体の後方椎体高の平均値です。脊柱変形障害の詳細については、こちらのコラム記事を参照してください。
8級2号:脊柱に中程度の変形を残すもの
1個以上の椎体について、前側の高さの合計が、後ろ側の高さの合計よりも椎体の高さの半分以上低くなっている状態です。簡単に言えば、椎体の前側の高さが、全体の半分以上つぶれている状態です。
具体的な胸椎圧迫骨折の後遺障害8級の画像を知りたい方は、こちらのコラム記事を参照してください。
11級7号:脊柱に変形を残すもの
以下の3つのいずれかに該当すれば、後遺障害に認定されます。
- 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
- 脊椎固定術が行われたもの
- 3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けたもの
2. 脊柱の運動障害(6級、8級)
等級
認定基準
6級5号
脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級2号
脊柱に運動障害を残すもの
等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
6級5号:脊柱に著しい運動障害を残すもの
脊柱に著しい運動障害を残すものとは、以下のいずれかの原因で頚部および胸腰部が強直したものです。
- 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、それがレントゲン等によって確認できるもの
- 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8級2号:脊柱に運動障害を残すもの
脊柱に運動障害を残すものとは、以下のいずれかに該当する場合です。
- 頚椎、腰椎それぞれに圧迫骨折等があることが画像上確認できるもの
- 頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
- 頭蓋や上位頚椎間に著しい異常可動性が発生したもの
脊柱の運動障害を詳細に知りたい方は、こちらのコラム記事を参照してください。
3. 脊柱の荷重機能障害(6級、8級)
等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に荷重機能障害を残すもの |
年間1000件以上の事案を取り扱う弊社においても、圧迫骨折によって「脊柱の荷重機能障害」として後遺障害に認定されたケースは、ほとんど経験がありません。
その主な理由は、多くの事案が「脊柱の変形障害」として処理されるためと考えられます。実際の臨床現場で「荷重機能障害」として認定される可能性があるのは、圧迫骨折後に偽関節が生じたケースではないでしょうか。
若年層ではあまり見られませんが、高齢者では椎体の前方に偽関節ができるケースが珍しくなく、こうした症例では慢性的な腰背部痛が続くため、コルセットを常時装着せざるを得ない例もしばしば見られます。
6級5号:脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの
頚部及び腰部の両方が、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
- 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8級2号:脊柱に荷重機能障害を残すもの
頚部または腰部のいずれかが、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
- 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
脊柱の荷重機能障害を詳細に知りたい方は、こちらのコラム記事を参照してください。
圧迫骨折後遺症による神経障害(12級、14級)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
圧迫骨折の程度がごく軽い場合には、「脊柱の変形障害」としてではなく、「神経症状(痛み)」に基づく後遺障害として認定される可能性もあります。
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
圧迫骨折は、レントゲンやCT検査によって確認することができます。そして、もし画像上で圧迫骨折が明らかに認められるのであれば、「脊柱の変形障害(11級7号)」の認定を視野に入れて、異議申し立てを検討すべきでしょう。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
レントゲンやCT検査では圧迫骨折が写らなくても、MRI検査で骨折が疑われるようなケースでは、痛みなどの神経症状に基づいて、14級9号の後遺障害と認定される可能性があります。
MRI検査で骨折が疑われる場合には、骨挫傷と骨折の両方の可能性があります。治療経過で椎体に化骨形成を認めるケースは骨折なので、11級7号や12級13号を念頭において異議申し立てするべきでしょう。
4. 脊髄損傷の後遺障害
脊椎圧迫骨折では、脊髄損傷を合併するケースがあります。脊髄損傷の後遺障害に関しては、こちらのコラム記事を参照してください。
非該当と判断されやすいケース
圧迫骨折で非該当となる主な理由は、画像所見が骨折ではなく骨挫傷であると判断されたり、古い(陳旧性)圧迫骨折とみなされるケースです。
特に、MRI検査でのみ椎体の骨折が確認できるケースでは、骨挫傷と判断されて非該当になるケースが多いです。
圧迫骨折の異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての流れと必要書類
圧迫骨折で納得できない後遺障害等級になったら、異議申し立てが可能です。
手続きは「異議申立書」を作成して、前回の認定理由を分析したうえで、新たな追加書類を添付して保険会社に提出します。
添付資料としては、新たに取得した診断書、画像検査、医師意見書、画像鑑定報告書などが有効です。
異議申し立てでは、初回認定で否定された要素を、新たな医学的根拠を用いて主張することが大切です。
異議申し立ての申請先
異議申し立ての申請先は、初回申請の方法によって異なります。事前認定の場合は加害者の任意保険会社へ、被害者請求の場合は自賠責保険会社へ直接提出します。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申し立て手続きそのものは無料ですが、新たな診断書や画像検査の取得費用などの実費がかかります。
弁護士へ依頼する場合は別途報酬が発生しますが、的確な資料作成や主張ができるメリットがあります。
一般的には数千円~数万円程度が目安です。審査結果が出るまでには2~3ヶ月ほどかかる場合が多いです。
効果的な異議申し立てのための準備
効果的な異議申し立てには、前回認定の「否定理由」を正確に把握して、そのポイントを裏付ける新たな医学的資料(画像検査、診療記録、医師の意見書など)を追加することが不可欠です。
不足していた項目や見落とされていた検査結果を補完して、主治医や専門医に意見書作成を依頼するのも有効です。
弁護士などの専門家に相談することで、適切な書類作成や戦略的な申請が可能になります。
圧迫骨折の異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
非該当の原因を分析
圧迫骨折で非該当となる主な理由は、以下のとおりです。
- 骨折や変形の画像所見が無い(MRIしか所見がない)
- 事故と骨折の因果関係が無い(陳旧性とみなされた)
認定審査では、特に画像検査や診断書など医学的根拠が重視されるため、書類不備や記載漏れも非該当の要因となります。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
圧迫骨折の後遺障害の認定条件をクリアする
圧迫骨折で後遺障害に認定されるには、レントゲン検査やCT検査で骨折部の変形を証明する必要があります。
MRI検査でのみ骨折所見が認められるケースでは、骨挫傷(骨内出血)と判断されやすいです。明確な変形が認められなければ、非該当になる可能性があります。
<参考>
【日経メディカル】圧迫骨折の後遺障害認定では、なぜCTやMRIよりもX線を重視?
異議申し立てでは新たな医証が必須
異議申し立てで成功するには、初回申請では出せなかった新たな医療証拠(診断書、画像検査、医師意見書、画像鑑定など)の提出が不可欠です。
前回の審査で、後遺障害認定基準に足りなかった要素を、新たな医証で補強するイメージです。症状の具体性や継続性を裏付ける医証を揃えることが認定への近道となります。
尚、新たな医証の添付が無ければ、異議申し立てで認定される可能性は無いことに注意が必要です。
<参考>
圧迫骨折の後遺障害認定ポイント
圧迫骨折で後遺障害認定されるには、それぞれの後遺障害の認定基準をクリアする必要があります。
圧迫骨折の後遺症が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
圧迫骨折の後遺症が後遺障害認定されるポイント|交通事故の医療鑑定
圧迫骨折の異議申し立て成功事例【8級2号】
事案サマリー
- 被害者:35歳
- 初回申請:11級7号
- 異議申立て:8級2号(脊柱に中程度の変形を残すもの)
自動車乗車中にトラックと正面衝突して受傷しました。初回申請では第12胸椎圧迫骨折(青矢印)に対して11級7号が認定されました。
弊社の取り組み
弊社にて画像所見を精査すると、受傷時のMRI検査で第3.4.5胸椎圧迫骨折(赤矢印)も併発していました。CT検査を追加実施して、圧迫骨折を受傷した全ての椎体高を計測しました。異議申し立てしたところ8級2号が認定されました。
圧迫骨折の異議申し立て成功事例【11級7号】
事案サマリー
- 被害者:60歳
- 被害者申請:14級9号
- 異議申立て:11級7号(脊柱に変形を残すもの)
バイク乗車中に自動車と衝突して受傷しました。第1腰椎脱臼骨折に対して、脊椎固定術(第12胸椎~第2腰椎)が施行されました。術後1年で脊椎インストゥルメンテーションの抜釘(異物除去術)を施行されました。
被害者請求では、椎体の明らかな変形を認められないことから脊柱の変形障害として評価を行うことは困難という理由で14級9号が認定されました。
弊社の取り組み
弊社にて画像所見を精査すると、CT検査ではL1椎体前方に椎体皮質の不整像が残っており、T12/L1椎間板は外傷により変性して、椎間板高が減少しており局所後弯が残存していました。
医師意見書を添付して異議申し立てしたところ、脊柱に変形を残すものとして11級7号が認定されました。
圧迫骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した圧迫骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
圧迫骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
圧迫骨折の異議申し立てでよくある質問
圧迫骨折で11級ではなく非該当になったのはなぜ?
医師が圧迫骨折と診断しても骨折による変形を確認できなかったり、事故前からの圧迫骨折と判断されると11級に認定されません。
画像上、圧迫骨折が明らかなのに非該当だったのはなぜ?
画像検査で圧迫骨折が明白でも、陳旧性と判断されると交通事故との因果関係を否定されて非該当になります。
骨癒合していても後遺障害は認定される?
骨癒合しても、脊椎の変形(骨折の形跡)が残っていれば、後遺障害が認定される可能性があります。
ただし、骨癒合により形態的変形や機能障害が消失している場合は非該当となることもあり、変形の程度と症状の残存が判断基準になります。
異議申し立てで11級を獲得するために必要な証拠は?
異議申し立てでは「これまで提出していなかった画像資料(CT・MRIや追加レントゲン)」「専門医による意見書」「事故と傷病の因果関係を補強する新たな診断書」などが有効です。不足資料を補うことで認定された事例もあります。
圧迫骨折の痛みだけでは後遺障害は認定されないの?
痛みのみで客観的な骨の変形や機能障害が画像や検査で証明できないと、原則として後遺障害は認定されません。
あくまで画像上の変形や神経症状(しびれ等)が残っている場合にのみ、後遺障害認定の対象となります。
複数椎体の圧迫骨折がある場合、等級は上がる?
複数の椎体にわたる圧迫骨折があり、変形度の合計が一定以上であれば、より重い等級(8級・6級等)が認定される可能性があります。全体の変形度(後弯の合算)が重要なポイントです。
まとめ
圧迫骨折による後遺障害の認定では、骨折による脊柱の変形や運動障害、神経症状などが評価対象となります。
変形の程度により6級、8級、11級などに分かれるため、画像検査で骨折の変形を証明することが重要です。
痛みだけでは認定されにくく、またMRI所見のみの場合は骨挫傷とされて、非該当となる可能性があります。
認定に納得できない場合は異議申し立てが可能で、新たな診断書、画像検査、医師意見書、画像鑑定が成功のカギとなります。
圧迫骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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