交通事故などによって生じる末梢神経障害は、事故直後の治療だけでなく、後遺症として長く生活に影響を与えるケースも少なくありません。
手足のしびれや動かしにくさ、慢性的な痛みなど、日常生活を送る上で大きな制限となる症状が現れることもあり、適切な理解と対応が求められます。
本記事では、「末梢神経障害の後遺症」について、症状の種類や原因、治療法、さらに後遺障害等級の認定に関するポイントまで詳しく解説します。
後遺症への不安や疑問を解消して、適切なサポートを受けるための第一歩としてお役立てください。
最終更新日: 2025/4/30
Table of Contents
末梢神経障害とは
末梢神経障害の概要と原因
末梢神経障害は、運動・感覚・自律神経が損傷を受けて、手足のしびれや筋力低下、発汗異常などの症状を引き起こします。
原因は多岐にわたり、糖尿病や中毒、交通事故やスポーツ外傷、感染症、遺伝性疾患などが含まれます。
診断方法
末梢神経障害の診断には、レントゲン検査やMRI検査などの画像検査、筋電図や神経伝導速度検査が用いられて、障害の部位や程度を評価します。
さらに、画像診断、血液検査、尿検査、そして身体検査などを通じて、糖尿病や中毒、感染症などの原因を特定します。
具体的な末梢神経障害の種類
末梢神経障害には、特定の神経が障害される「単神経障害」と、複数の神経が影響を受ける「多発性神経障害」があります。
単神経障害の例として、手根管症候群(正中神経障害)や肘部管症候群(尺骨神経障害)、腓骨神経麻痺などがあり、圧迫や外傷が原因で発症します。
<参考>
末梢神経障害の3つの症状
運動障害
末梢神経障害による運動神経の損傷によって、手足の筋力低下や動作の困難さが引き起こされる可能性があります。
歩行時のふらつきや物を持つ際の力の入れにくさが生じて、日常生活に支障を来すケースがあります。末梢神経障害が進行すると、筋萎縮や麻痺が現れる可能性もあります。
感覚障害
感覚神経の障害は、しびれや痛み、温度感覚の異常などを引き起こします。特に手足の末端でこれらの症状が現れやすいです。
感覚が鈍くなることで怪我に気付きにくくなるケースもあります。また、感覚過敏により軽い刺激でも強い痛みを感じる可能性があります。
自律神経障害
自律神経の障害は、内臓機能や血圧の調整に影響を及ぼします。具体的には、立ちくらみや便秘、排尿障害、不整脈などの症状が現れます。
末梢神経障害の後遺障害等級
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
12級13号は、交通事故などにより骨折や靭帯損傷といった器質的損傷が生じて、その後の治療にもかかわらず、局部に頑固な神経症状(痛みやしびれ)が残存する場合に認定されます。
12級13号の認定には、MRI検査やレントゲン検査などの画像検査で、神経症状の原因が明確に示されることが求められます。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
14級9号は、むちうち(頚椎捻挫)や腰椎捻挫などの外傷後、治療を継続しても首や腰の痛み、手足のしびれといった神経症状が残る場合に認定されます。
14級9号では、画像所見がなくても、事故の状況や治療経過から医学的に説明可能な症状であると判断されれば認定される可能性があります。
末梢神経障害の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故による末梢神経障害は、後遺障害等級として12級13号または14級9号に認定される可能性があります。12級13号の認定には、症状が他覚的に証明される必要があります。
MRI検査などの画像検査では末梢神経損傷の視覚的確認が難しいため、筋電図検査や神経伝導速度検査などの電気生理学的検査が必要となる事案もあります。
また、各種の疼痛誘発テスト、ティネル徴候の有無や徒手筋力テスト(MMT)、感覚検査などの臨床所見も、後遺障害認定の際に参考とされます。
末梢神経障害と言っても、傷病毎に後遺障害認定ポイントは異なります。以下に代表的な傷病名のコラム記事を挙げています。必要に応じて参照いただければ幸いです。
<参考>
- 頚椎捻挫の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
- 腰椎捻挫の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
- 手根管症候群の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
- 尺骨神経麻痺が後遺症認定されるポイント|交通事故の医療鑑定
- 橈骨神経麻痺の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
- 腓骨神経麻痺の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
交通事故で受傷した末梢神経障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
末梢神経障害の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した末梢神経障害が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
末梢神経障害の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
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弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
交通事故による末梢神経障害で賠償請求が可能
賠償請求の流れと必要な書類
交通事故の被害者は、加害者側の保険会社に対して損害賠償請求を行います。まず、事故発生直後に警察へ届け出を行い、事故証明書を取得します。
その後、医療機関で診断書を作成してもらい、治療費や通院交通費の領収書、休業損害証明書など、損害を証明する書類を収集します。これらの書類を基に、保険会社と示談交渉を進めます。
損害賠償額の計算方法と基準
損害賠償額は、治療費、休業損害、慰謝料などの項目から構成されます。慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があり、入通院慰謝料は通院期間や傷害の程度に応じて算定されます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に基づいて決定され、死亡慰謝料は被害者の家族構成や年齢などを考慮して算出されます。
交通事故による後遺障害慰謝料とは
交通事故による末梢神経障害が残った精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
末梢神経障害の後遺障害慰謝料の相場は?
末梢神経障害の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、腰椎捻挫では12級13号に認定される可能性があり、慰謝料の相場は、110万円~290万円です。
末梢神経障害の後遺障害逸失利益とは
末梢神経障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
後遺障害逸失利益の相場は?
逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
非常にざっくりした数字で言うと、高齢者で軽度の症状であれば数十万円から、若年者で重度の症状であれば数百万円に達する可能性もあります。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
弁護士に相談すべきタイミング
保険会社から提示された賠償額が適正か判断が難しい場合や、示談交渉が難航している場合、または後遺障害等級認定に関する手続きが必要な場合には、弁護士への相談を検討すべきです。
示談交渉を有利に進めるためのポイント
示談交渉を有利に進めるためには、事故直後からの証拠収集が重要です。事故現場の写真撮影、目撃者の連絡先確保、医療機関での詳細な診断書の取得などが有効です。
また、日々の治療経過や痛みの程度を記録することで、後の交渉材料として活用できます。さらに、弁護士に依頼することで、専門的な視点から交渉を進め、適正な賠償額を得る可能性が高まります。
末梢神経障害の後遺症でよくある質問
末梢神経障害の治療は?
末梢神経障害の治療は、原因に応じて異なります。糖尿病やアルコール依存症などの基礎疾患の管理が重要であり、薬物療法やリハビリテーション、手術などが選択肢としてあります。早期の診断と適切な治療が重要です。
末梢神経障害の回復期間は?
末梢神経障害の回復期間は、原因や重症度、治療の開始時期によって異なります。軽度の障害では数週間で改善することもありますが、重度の場合は数ヶ月から数年かかることもあります。
末梢神経障害の留意点は?
末梢神経障害の留意点として、日常生活での注意が必要です。例えば、感覚障害がある場合は火傷や怪我に注意して、適切な靴を選ぶなどの対策が重要です。
中枢神経障害と末梢神経障害の違いは?
中枢神経障害は脳や脊髄に影響を及ぼして、痙性麻痺や認知機能の低下などが見られます。
一方、末梢神経障害は手足のしびれや筋力低下など、末梢神経に関連する症状が中心です。治療法やリハビリテーションのアプローチも異なります。
まとめ
末梢神経障害は、手足のしびれや筋力低下、発汗異常などを引き起こす傷病で、運動・感覚・自律神経の障害が原因です。
原因は糖尿病や中毒、外傷、感染症などさまざまです。診断には筋電図や神経伝導検査が使われ、単神経障害と多発性神経障害の2種類があります。
交通事故で負った末梢神経障害で後遺症が残ると、12級や14級に認定される可能性があります。
交通事故で受傷した、末梢神経障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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