脳挫傷による高次脳機能障害は、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性がある深刻な問題です。
本記事では、脳挫傷がどのようにして高次脳機能障害を引き起こすのか、具体的な症状や治療法、そして後遺障害に認定されるポイントについて詳しく解説しています。
最終更新日: 2024/12/8
Table of Contents
脳挫傷とは?高次脳機能障害との関係
脳挫傷の主な症状
脳挫傷が発生すると、脳の損傷部位に応じて様々な症状が現れます。脳挫傷の主な症状には、頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害、けいれん発作などがあります。
脳挫傷で損傷した部位によっては、顔面や四肢の麻痺、感覚障害、言語障害なども見られます。脳挫傷の症状は多岐にわたり、軽度のものから重篤なものまで様々です。
高次脳機能障害は、脳挫傷の後遺症の1つです。記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などを併発します。
<参考>
脳挫傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害とは?定義と分類
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって引き起こされる認知機能や行動の障害を指します。具体的には、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などです。
これらの障害は、脳の損傷部位や程度によって異なり、日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼします。高次脳機能障害は、脳卒中や頭部外傷、低酸素脳症などが原因で発生することが多いです。
脳挫傷で起こりやすい高次脳機能障害の具体例
脳挫傷によって起こりやすい高次脳機能障害の具体例としては、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
例えば、記憶障害では新しい情報を覚えることが難しくなり、注意障害では一つのことに集中するのが困難になります。
遂行機能障害では計画的な行動ができなくなり、社会的行動障害では感情のコントロールが難しくなることがあります。
これらの障害は、脳の損傷部位や程度によって異なりますが、日常生活に大きな影響を及ぼすため、適切なリハビリテーションが必要です。
脳挫傷による高次脳機能障害の具体的な症状
記憶障害や注意障害の発生メカニズム
記憶障害は、脳の海馬という部位が損傷を受けることで発生します。海馬は新しい情報を記憶する役割を担っており、損傷すると新しい情報を覚えることが難しくなります。
注意障害は、脳の前頭葉や頭頂葉が関与しており、これらの部位が損傷すると注意を持続することや複数の情報を同時に処理する能力が低下します。
これらの障害のために、日常生活での集中力や作業効率が著しく低下するケースがあります。
言語障害の種類と症状
言語障害には主に失語症と構音障害があります。失語症は、脳の言語中枢が損傷を受けることで発生し、言葉の理解や表現が困難になります。
運動性失語症では、言葉の理解はできるが発話がぎこちなくなります。感覚性失語症では、言葉の意味を理解することが難しくなります。
構音障害は、発声や発音がうまくできなくなる状態で、舌や唇、声帯などの発語器官の麻痺や運動障害が原因です。
認知機能の低下と生活への影響
認知機能の低下は、記憶力や判断力、理解力などの能力が低下する状態を指します。これにより、日常生活において買い物や金銭管理、交通機関の利用などが困難になります。
軽度の認知機能低下では、複雑な作業が苦手になり、簡単な料理や家事ができなくなることがあります。認知機能の低下が著しいと、基本的な日常生活動作にも支障をきたし、介護が必要になることがあります。
<参考>
【日経メディカル】脳挫傷による多様な後遺症を適正に評価するには
行動や感情の変化に注意するポイント
行動や感情の変化は、高次脳機能障害の一部として現れることがあります。感情のコントロールが難しくなり、怒りやすくなったり、抑うつ状態になることがあります。
また、行動の変化としては、衝動的な行動や社会的に不適切な行動が見られることがあります。これらの変化に対処するためには、適切なサポートと環境調整が必要です。
<参考>
脳挫傷後の性格変化は後遺症?高次脳機能障害の可能性も|医療鑑定
高次脳機能障害と後遺障害認定基準
高次脳機能障害は、交通事故などによる脳の損傷が原因で発生し、記憶障害や注意障害、言語障害など多岐にわたる症状が現れます。
これらの症状が後遺障害として認定されるためには、一定の基準を満たす必要があります。
後遺障害等級は、労働能力の喪失度合いに応じて1級から14級までの等級に分類され、等級が高いほど重度の障害と認定されます。
等級 |
認定基準 |
具体例 |
1級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの |
|
2級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの |
|
3級3号 |
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの |
|
5級2号 |
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの |
|
7級4号 |
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの |
|
9級10号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
|
12級13号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの |
|
14級9号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの |
|
1級1号
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの
- 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
- 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの
1級1号の障害程度と症状の目安
高次脳機能障害の1級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要する状態です。高度の認知機能障害があり、生活維持に必要な身の回り動作に全面的な介護が必要です。
2級1号
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの
- 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
- 高次脳機能障害による認知症、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
- 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの
2級1号の障害程度と症状の目安
2級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しているため、随時介護を要する状態です。判断力の低下や情動の不安定があり、一人で外出することができず、日常生活は自宅内に限定されます。
3級3号
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの
- 4能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの
- 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの
3級3号の障害程度と症状の目安
3級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しているため、終身労務に服することができない状態です。記憶や注意力、新しいことを学習する能力に著しい障害があり、一般就労が困難です。
<参考>
高次脳機能障害3級の後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
5級2号
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの
- 4能力のいずれか1つの能力の大部分が失われているもの
- 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの
5級2号の障害程度と症状の目安
5級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しているためし特に軽易な労務以外の労務に服することができない状態です。単純繰り返し作業に限定すれば一般就労も可能ですが、新しい作業を学習することが難しいです。
<参考>
高次脳機能障害5級の後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
7級4号
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの
- 4能力のいずれか1つの能力の半分程度が失われているもの
- 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの
7級4号の障害程度と症状の目安
7級は、神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができない状態です。一般就労を維持できますが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどの問題があります。
<参考>
高次脳機能障害で7級が後遺障害認定されるポイント|交通事故
9級10号
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
- 高次脳機能障害のため4能力のいずれか1つの能力の相当程度が失われているもの
問題解決能力の相当程度が失われているものの例:1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、たまに助言を必要とする
9級10号の障害程度と症状の目安
9級は、神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される状態です。一般就労を維持できますが、問題解決能力や作業効率に問題があります。
<参考>
高次脳機能障害で9級が後遺障害認定されるポイント|交通事故
12級13号
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの
- 4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているもの
実務上は、高次脳機能障害として認定される等級の下限は12級13号と言われています。臨床的な症状が無くても、症状固定時のCTやMRIで脳挫傷痕や脳萎縮などの所見を認めれば、12級13号が認定されます。
12級13号の障害程度と症状の目安
12級は、神経系統の機能または精神に軽度の障害を残し、日常生活や労働に支障がある状態です。具体的な症状としては、軽度の記憶障害や注意力の低下が見られます。
<参考>
高次脳機能障害が12級に後遺障害認定されるポイント|交通事故
14級9号
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの
- MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるもの
14級9号の障害程度と症状の目安
14級は、神経系統の機能または精神にごく軽度の障害を残し、日常生活や労働に軽微な支障がある状態です。軽微な記憶障害や注意力の低下が見られますが、日常生活には大きな影響はありません。
脳挫傷による高次脳機能障害が後遺障害認定されるポイント
脳挫傷による高次脳機能障害が後遺障害として認定されるためには、脳挫傷による脳組織の損傷が原因であることが証明されて、日常生活や社会生活に支障をきたしていることが必要です。
具体的には、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などの認知障害が残り、生活に支障をきたしているケースです。被害者家族ができることとしては、日常生活状況報告において、事故前と後の生活状況の変化を具体的に示すことが重要です。
高次脳機能障害が後遺障害に認定されるポイントを詳しく知りたい方は、こちらのコラム記事を参照いただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
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等級スクリーニング
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等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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脳挫傷が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
脳挫傷による高次脳機能障害が、後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で脳挫傷による高次脳機能障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料の相場は?
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、9級の場合は約690万円、7級は約1000万円、5級は約1400万円、3級は約1990万円、2級は約2370万円、1級は約2800万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることがあります。さらに、1級や2級の場合には将来の介護費として数千万円から1億円を超える額が認められることがあります。
このように、高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
後遺障害逸失利益とは
高次脳機能障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益の相場は?
高次脳機能障害の逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、1級の後遺障害の場合、逸失利益は約1億円前後となる可能性があります。一方、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
脳挫傷と高次脳機能障害でよくある質問
外傷性脳損傷と高次脳機能障害の関係は?
外傷性脳損傷は、頭部に強い衝撃が加わることで脳の組織が損傷する状態を指します。これにより、脳の特定の部位が損傷されると、高次脳機能障害が発生することがあります。
高次脳機能障害は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など多岐にわたる症状が現れます。特に若年層では、交通事故やスポーツ中の衝突が原因となることが多いです。
頭を打つと高次脳機能障害になる?
頭を強く打つと、脳の組織が損傷し、高次脳機能障害が発生する可能性があります。脳の損傷部位や程度によって、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが現れます。
高次機能障害の原因で最も多いのはどれか?
高次脳機能障害の原因として最も多いのは脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)です。これらの脳血管障害が全体の約60%を占めており、次いで頭部外傷が約10%を占めています。その他の原因としては、脳腫瘍、脳炎、低酸素脳症などが挙げられます。
頭をぶつけて脳挫傷になったらどうなる?
頭を強く打って脳挫傷になると、脳の組織が損傷し、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれん発作などの症状が現れます。損傷部位によっては、顔面や四肢の麻痺、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などが発生することがあります。
高次脳機能障害の4大症状は?
高次脳機能障害の4大症状としては、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害が挙げられます。記憶障害は新しい情報を覚えることが難しくなり、注意障害は一つのことに集中するのが困難になります。
遂行機能障害は計画的な行動ができなくなり、社会的行動障害は感情のコントロールが難しくなることがあります。
まとめ
脳挫傷は、脳が損傷することで発生して、頭痛、吐き気、意識障害などの症状が現れます。また、脳挫傷が原因で、記憶障害や注意障害などの高次脳機能障害が引き起こされることがあります。
高次脳機能障害は、記憶や注意、言語、感情制御が困難になる状態です。症状は、例えば新しい情報を覚えられない、集中が続かない、言葉が理解できない、怒りっぽくなるなどが挙げられます。
後遺障害等級には1級から14級まであり、生活や労働にどれだけ影響を及ぼすかで等級が判断されます。交通事故で受傷した高次脳機能障害に関してお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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