交通事故コラム詳細

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【医師が解説】下半身不随の後遺障害認定ポイント|交通事故

交通事故や労災事故などで下半身不随になると、歩いたり、トイレに行ったりできなくなります。更に仕事や学校に行くのも困難になる可能性もあります。

 

このため、下半身不随では後遺障害に認定されて適切な賠償金を受け取ることが重要です。賠償金があれば、新しい生活を送るための備えになります。

 

本記事は、下半身不随が後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2023/11/23

 

 

下半身不随(対麻痺)とは

 

下半身不随とは、両下肢を含めた身体の下半分が麻痺して思うように動かせなくなる症状です。医学的には「対麻痺」と言います。下半身の麻痺の程度によって異なりますが、日常生活や仕事に大きな影響を与えます。

 

 

wheel chair

 

 

下半身不随の原因

 

下半身不随(対麻痺)は、以下のような脳や脊髄の障害が原因となって発症します。

 

  • 脊髄損傷(胸髄損傷、馬尾損傷)
  • 脊髄梗塞
  • 脳性麻痺
  • 感染性ないし炎症性脊髄炎
  • 多発性硬化症(MS)
  • ビタミンB12欠乏症(亜急性連合性脊髄変性症)

 

 

最も多いのは、胸椎や腰椎骨折に伴った脊髄損傷です。しかし、遺伝性や内科的疾患が原因となることも珍しくありません。

 

 

<参考>
【医師が解説】脊髄損傷が後遺症認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】圧迫骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

下半身不随の症状

 

具体的な下半身不随(対麻痺)の症状には以下のものがあります。

 

  • 麻痺した下肢の動きが制限されるか動かすことができない
  • 麻痺した下肢の感覚がなくなるか鈍くなる
  • 麻痺した下肢の筋力が低下するか失われる
  • 排便や排尿の機能が低下または失われる
  • 腸の機能が低下する

 

 

<参考>
【医師が解説】不全麻痺とは?リハビリや完全麻痺との違い|交通事故

 

 

wheel chair

 

 

下半身不随の検査

脊髄損傷の画像検査

MRI検査

 

脊髄損傷で実施するべき検査の筆頭はMRI検査です。脊髄損傷には骨折や脱臼の無い非骨傷性頚髄損傷もあります。

 

これらの脊髄損傷では、レントゲン検査やCT検査で外傷性の異常所見が存在しません。MRI検査を実施して、脊髄損傷の高位を確認する必要があります。

 

 

CT検査

 

脊髄損傷では、脊椎の骨折や脱臼を伴っているケースが多いです。背骨の状況を把握するには、CT検査がベストです。

 

このため、診断・治療において、CT検査はMRI検査と並んで必須と言えるでしょう。

 

 

レントゲン検査

 

レントゲン検査は、最も簡便にできる画像検査です。精度はMRI検査やCT検査に劣りますが、脊髄損傷で最初に実施するべき検査です。

 

また、レントゲン検査はMRI検査やCT検査と異なり、腰椎の前後屈などの動的な評価が可能です。

 

 

<参考>
【医師が解説】胸椎圧迫骨折 8級の画像とは|交通事故の後遺障害

 

 

脊髄損傷の身体検査

徒手筋力テスト

 

徒手筋力検査は筋力の評価方法で、それぞれの筋肉がどの程度筋力が低下しているかを数字で表します。徒手筋力検査の検査結果は、6段階で表します。正常が5で、筋肉の収縮が全く認められない状態が0です。

 

脊髄損傷の評価や治療方針を決定するために、徒手筋力テストは非常に重要な情報です。脊髄損傷では、徒手筋力テストが必須と言えます。

 

 

<参考>
【医師が解説】徒手筋力検査は後遺症12級認定のポイント|交通事故

 

 

深部腱反射

 

深部腱反射とは、ゴムハンマー等で腱を叩いた刺激に反応して起こる不随意かつ瞬間的な筋肉の収縮です。深部腱反射は刺激に対して反射弓を通じて起こる自動的な筋収縮なので、筋肉を動かそうとする自発的な意志は不要です。

 

深部腱反射の検査結果は、正常(+)、軽度亢進(2+)、亢進(3+)、低下(±),消失(-)などの記号で記載されます。

 

深部腱反射は、脊髄損傷の評価、予後判定、治療方針を決定するために重要な情報です。脊髄損傷では、深部腱反射の評価が必須と言えます。下半身不随では、深部腱反射が亢進する場合も消失する場合もあります。

 

 

<参考>
【医師が解説】深部腱反射は12級の後遺症認定のポイント|交通事故

 

 

wheel chair

 

 

下半身不随に対する治療

 

背骨が骨折したり、脱臼している場合はボルトで固定する必要があります。グラグラしている背骨にチタン製のネジを入れて、背骨を安定化させます。

 

骨折を治すことはできますが、脊髄に生じたダメージは、今の医学では治すことが難しいです。手術の目的は脊髄にできた傷を治すことではなく、グラグラしている背骨をボルトで支えることです。

 

脊髄損傷で下半身不随になると入院のリハビリテーションが数ヶ月を超えることも珍しくありません。後遺症が回復せずに、車椅子で退院される方がほとんどです。高齢者の場合は、自宅に帰ることができず施設に入所することもあります。

 

脊髄損傷で発生した下半身不随に対する先進医療として、2019年5月からヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞(ステミラック)を用いた治療やその他の幹細胞を用いた再生医療の試みが開始されています。

 

全国どこの病院でも治療が可能なものではありませんので、主治医と相談が必要になるでしょう。

 

 

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脊髄損傷による下半身不随が治る可能性

 

受傷直後の脊髄ショック期には完全麻痺であった場合にも、脊髄損傷の程度によっては少し不完全麻痺に回復するケースもあります。

 

しかし、脊髄が損傷すると神経細胞が再生しません。このため、慢性期になって安定化した脊髄損傷の麻痺が回復することはありません。

 

一方、前述のように脊髄損傷に対する間葉系幹細胞を用いた再生医療が先進医療に適応されました。まだ十分な効果があるとは言えない治療ですが、脊髄損傷の患者さんに一縷の希望が出現したと言えるでしょう。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

下半身不随の後遺障害

神経障害(麻痺)

後遺障害1級1号

 

せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの

 

  • 高度の対麻痺(両下肢麻痺)が認められるもの
  • 中等度の対麻痺(両下肢麻痺)であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

 

 

高度の対麻痺の具体例は以下のごとくです。

 

  • 障害のある下肢の運動性・支持性がほとんど失われている状態
  • 障害のある下肢の基本動作(立ったり歩行すること)ができない状態
  • 完全強直またはこれに近い状態にあるもの
  • 三大関節および5つの手指のいずれの関節も自動運動によって可動させることができないもの、またはこれに近い状態にあるもの
  • 随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性および随意的な運動性をほとんど失ったもの

 

 

中等度や対麻痺の具体例は以下のごとくです。

 

  • 障害を残した一下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの、または障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であること

 

 

後遺障害2級1号

 

せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの

 

  • 中等度の対麻痺(両下肢麻痺)であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

 

 

中等度の対麻痺の具体例は以下のごとくです。

 

  • 障害のある下肢の運動性・支持性が相当程度失われている状態
  • 障害のある下肢の基本動作にかなりの制限があるもの
  • 障害を残した一下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの、または障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であること

 

 

後遺障害3級3号

 

生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のために労務に服することができないもの

 

  • 中等度の対麻痺(両下肢麻痺)が認められるもので、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの

 

 

中等度の対麻痺の具体例は以下のごとくです。

 

  • 障害のある下肢の運動性・支持性が相当程度失われている状態
  • 障害のある下肢の基本動作にかなりの制限があるもの
  • 障害を残した一下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの、または障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であること

 

 

後遺障害5級2号

 

せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの

 

  • 軽度の対麻痺が認められるもの
  • 一下肢の高度の単麻痺(片足の麻痺)が認められるもの

 

 

軽度の対麻痺の具体例は以下のごとくです。

 

  • 障害を残した一下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの、または障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であること

 

 

一下肢の高度の単麻痺(片足の麻痺)の具体例は以下のごとくです。

 

  • 完全強直またはこれに近い状態にあるもの
  • 三大関節および5つの手指のいずれの関節も自動運動によって可動させることができないもの、またはこれに近い状態にあるもの
  • 随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性および随意的な運動性をほとんど失ったもの

 

 

後遺障害7級4号

 
せき髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの

  • 一下肢の中等度の単麻痺が認められるもの

 

 

一下肢の中等度の単麻痺の具体例は以下のごとくです。

 

  • 障害を残した一下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの、または障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であること

 

 

後遺障害9級10号

 

通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの

 

  • 一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの

 

 

一下肢の軽度の単麻痺の具体例は以下のごとくです。

 

  • 日常生活はおおむね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく速度も遅いもの、または障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの

 

 

後遺障害12級13号

 

通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの

 

  • 運動性、支持性、及び速度についての障害はほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
  • 運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの

 

 

 

nikkei medical

 

 

胸腹部臓器の障害

脊髄損傷による下半身不随では、膀胱直腸障害などの胸腹部臓器の障害を併発する可能性があります。このようなケースでは、併合の取扱いは行わず、脊髄の障害として認定します。

 

ただし、脊髄損傷に伴う胸腹部臓器の障害が麻痺の範囲と程度により判断される後遺障害等級よりも重い場合には、それらの障害の総合評価により等級を認定することになります。

 

このようなケースでは、随伴する胸腹部臓器の障害の後遺障害等級を下回りません。

 

【具体例】

  • 麻痺:12級13号
  • 膀胱直腸障害:11級10号
  • 総合評価として9級10号に認定される

 

 

<参考>
【医師が解説】内臓破裂の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】小腸切除の後遺症|交通事故の後遺障害

 

 

脊柱の変形障害

脊髄損傷では下半身不随だけではなく、脊椎固定術などの脊柱の障害を併発する可能性があります。このようなケースでは、併合の取扱いは行わず、脊髄の障害として認定します。

 

ただし、脊髄損傷に伴う脊柱の障害が麻痺の範囲と程度により判断される後遺障害等級よりも重い場合には、それらの障害の総合評価により等級を認定することになります。

 

このようなケースでは、随伴する脊柱の障害の後遺障害等級を下回りません。

 

【具体例】

  • 麻痺:7級4号
  • 脊柱の著しい変形:6級5号
  • 総合評価として5級2号に認定される

 

 

<参考>
【医師が解説】圧迫骨折の後遺症が等級認定されるポイント

 

 

instrumentation

 

 

骨盤骨等の変形障害

脊髄損傷では四肢麻痺だけではなく、脊椎固定術などの際の採骨によって骨盤骨等の変形障害を併発する可能性があります。このようなケースでは、併合の取扱いは行わず、脊髄の障害として認定します。

 

 

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【弁護士必見】下半身不随の後遺障害認定ポイント

MRI検査で所見が無いケース

下半身不随(対麻痺)が高度にもかかわらず画像所見に乏しいケースがあります。このような事案では、3テスラのMRIで再撮像することを推奨します。

 

 

既往症として脊髄空洞症や脊髄軟化症が存在するケース

このような事案では、受傷後早期のMRI、および慢性期のMRIを撮像して、所見に変化があるのかを精査します。経時的に変化があれば、画像鑑定や医師意見書で事故との因果関係を主張できます。

 

 

下半身不随(対麻痺)の一貫性を否定されたケース

多発外傷で意識障害のある事案では、搬送時に正確な下肢の神経学的所見を記録することが困難です。このような状況で初診時の対麻痺の存在を否定された事案では、診療録を精査して医師意見書で対麻痺の一貫性を主張します。

 

 

神経障害と合併する胸腹部臓器の障害が問題になるケース

下半身不随による神経障害が後遺障害認定されても、小腸切除後などの胸腹部臓器の障害が認定されないケースを散見します。このような事案では、後遺障害認定基準に精通した消化器外科や消化器内科医師に相談する必要があります。

 

 

<参考>
【医師が解説】内臓破裂の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】小腸切除の後遺症|交通事故の後遺障害

 

 

 

nikkei medical

 

 

下半身不随の後遺障害まとめ

 

下半身不随とは、両下肢を含めた身体の下半分が麻痺して思うように動かせなくなる症状です。医学的には「対麻痺」と言います。下半身の麻痺の程度によって異なりますが、日常生活や仕事に大きな影響を与えます。

 

下半身不随の後遺障害認定で問題になるケースとして、MRI検査で所見が無い、既往症として脊髄空洞症や脊髄軟化症が存在する、下半身不随(対麻痺)の一貫性を否定された、胸腹部臓器障害が非該当になるなどが存在します。下半身不随でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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