交通事故コラム詳細

fv fv

【医師が解説】外傷性くも膜下出血の後遺症と後遺障害認定ポイント

交通事故で発生する頭部外傷のひとつに外傷性くも膜下出血があります。病名を聞くと何だか恐ろしい病気のような印象を受けますね。

 

本記事は、外傷性くも膜下出血の後遺症が等級認定されるヒントとなるように説明しています。

 

 

最終更新日: 2024/9/8

 

book

 

 

外傷性くも膜下出血とは

 

脳の表面は、くも膜という半透明の膜に覆われています。くも膜は脳の外表面を覆う「膜」の部分と、脳と脳の隙間を埋める「くも膜小柱」から成り立っています。

 

外傷性くも膜下出血とは、頭部外傷によりくも膜と脳の表面の間(くも膜下腔)に出血することをいいます。

 

 

anatomy of arachnoid

 

 

anatomy of arachnoid

 

 

脳卒中の「くも膜下出血」と混同しやすいですが、両者は明確に区別される必要があります。なぜなら両者の治療方針は全く異なるからです。

 

内因性(元々存在する病気によるもの)のくも膜下出血は脳動脈瘤破裂が原因のことがほとんどであり、治療の主座はこの破裂した脳動脈瘤の治療になります。

 

一方、外傷性くも膜下出血は原因が頭部外傷ですので、頭部外傷に対する治療を行います。

 

 

交通事故での外傷性くも膜下出血の受傷機序

 

交通事故で頭部外傷を負った場合、脳が勢いをもって振られます(回転加速)。この時、脳に逆向きの力が加わり(剪断力)、架橋静脈(脳の表面の静脈)に代表される脳表の血管が破綻します。

 

破綻した血管からくも膜下腔に出血が起こり、(外傷性)くも膜下出血となります。

 

 

shear force

 

 

非常に稀ですが、かなり大きな剪断力が加わった場合には、くも膜下腔に存在する内頚動脈や椎骨動脈が破綻して、重篤なくも膜下出血を生じることがあります。

 

また、交通事故で外傷性くも膜下出血を生じた場合は、血管の検査をして出血の原因が内因性のくも膜下出血ではないことを確認する必要があります。運転中に脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を発症した可能性もあるからです。

 

 

外傷性くも膜下出血の症状

 

頭部打撲に伴う頭痛はありますが、少量のくも膜下出血なら顕著な症状はないことが多いです。くも膜下出血の量や、合併する急性硬膜下血腫や脳挫傷に伴い意識障害を生じることがあります。

 

むしろこれらの合併する病態が、症状や予後を規定するといえるでしょう。また、内頚動脈や椎骨動脈が破綻するような重篤な外傷性くも膜下出血の場合は残念ながら救命は困難でしょう。

 

 

外傷性くも膜下出血の診断

 

通常、頭部CTで脳と脳の隙間にうっすらと高吸収域(白く映る)のくも膜下出血を認めます。症状が軽く出血が少量の場合は、見逃されることもあるので注意が必要です。

 

頭部MRIでは、T2 FLAIR画像が診断に有用とされています。

 

 

head computerized tomography

 

画像所見:頭部CTにて右前頭部に少量の外傷性くも膜下出血を認めます。

 

 

外傷性くも膜下出血に対する治療

 

くも膜下出血そのものに対する外科的な治療は行わないことがほとんどです。小さな静脈からの出血なら自然に止血されて、くも膜下腔の出血は脳脊髄液によって流されて綺麗になるからです。

 

約半数は24時間以内に画像上の所見は消失します。くも膜下出血が少量の場合は、血圧管理や内服薬の管理など行います。

 

血をさらさらにする薬(抗血小板薬や抗凝固薬)を定期的に内服されている方には、薬の必要性と出血を助長させる危険性とを天秤にかけて休薬期間を決めます。

 

外傷性くも膜下出血には、急性硬膜下血腫を合併することが多く、この程度により頭蓋骨を開けて血腫を取り除く手術(開頭血腫除去術)を行うかどうか判断します。

 

急性硬膜下血腫により脳が圧迫される脳ヘルニアという状態になると、命の危険が生じます。

 

その場合は緊急で開頭血腫除去術と頭蓋骨を大きく取り除いて脳の腫れに備える減圧開頭術を必要とします。高齢者では元々脳が萎縮していることが多いため、頭蓋骨を戻すこともあります。

 

また、内頚動脈や椎骨動脈が破綻しているような場合は、緊急で脳カテーテル手術による母血管閉塞術(太い動脈の血管ごとコイルで閉塞させる)の適応になります。ただし救命は極めて難しいでしょう。

 

 

外傷性くも膜下出血で考えられる後遺障害

 

単独の外傷性くも膜下出血なら後遺症を残さずに回復する場合が多いです。

 

急性硬膜下血腫や脳挫傷を合併した場合には、その損傷部位に応じた局所症状(運動麻痺、失語、視野障害など)を残す可能性があります。

 

びまん性脳損傷を合併した場合には、高次脳機能障害(記憶力、判断力、集中力などの低下)を残す可能性があります。

 

また、高齢者では頭部外傷の1~2ヶ月後に慢性硬膜下血腫を発症することがあります。

 

 

<参考>

 

 

book

 

 

【弁護士必見】外傷性くも膜下出血だけでは後遺障害が認定されにくい?!

 

前述の如く、単独の外傷性くも膜下出血なら後遺症を残さずに回復する場合が多いです。

 

このため、外傷性くも膜下出血単独では後遺障害の等級認定対象とはなりにくいです。

 

一方、合併する脳挫傷やびまん性脳損傷の程度により、身体性機能障害や高次脳機能障害の後遺障害等級が認定されます。

 

 

<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害が等級認定されるポイント

 

 

 

nikkei medical

 

 

外傷性くも膜下出血の後遺障害認定で弊社ができること

弁護士の方へ

弊社では、交通事故による外傷性くも膜下出血が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。

 

 

等級スクリーニング

 

現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。

 

等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。

 

等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。

 

 

<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

 

 

fv_appraisal_pc

 

 

医師意見書

 
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。

 

医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。

 

医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。

 

弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。

 

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

doctor

 

 

画像鑑定報告書

 

交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。

 

画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。

 

画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。

 

弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。

 

 

<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

inquiry

 

 

交通事故による外傷性くも膜下出血の後遺症でお悩みの被害者の方へ

弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。

 

また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。

 

もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。

 

尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。

 

 

Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

交通事故による頭部外傷で受傷することの多い「外傷性くも膜下出血」について概説しました。

 

くも膜下出血が少量でも、びまん性脳損傷を起こしていることがありますので、CT検査のみならずMRI検査も依頼すべきでしょう。

 

外傷性くも膜下出血でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

inquiry

 

Traffic accident patient

 

 

関連ページ

 

 

 

 

 

 

 

 

book

 

 

資料・サンプルを無料ダウンロード

 

以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。

     

     

    ※ 本コラムは、脳神経外科専門医の高麗雅章医師が解説した内容を、弊社代表医師の濱口裕之が監修しました。

     

    関連記事

    ランキング