むちうちは、交通事故で受傷する首の外傷では最も有名です。いわゆる追突事故で生じることが多く、むちうちの症状はなかなか治らないと言われています。
本記事は、むちうちの症状が治らない確率や、後遺症が残った時の対処法が分かるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/11/4
Table of Contents
むちうち(頚椎捻挫)とは
むちうちの概要
むちうち(頚椎捻挫)は、追突されて頭から首が鞭のようにしなって受傷することから名付けられました。正式な傷病名は、外傷性頚部症候群です。交通事故の当日は痛みをあまり感じず、翌日以降に痛みが強くなるケースが多いです。
むちうちの特徴として、首のレントゲンやMRI検査では異常所見が無いにもかかわらず、首の痛みなどの症状が続くことが挙げられます。
むちうちの症状は、軽度から日常生活に支障をきたすほど重度なものまでさまざまです。症状は、事故から数日で治ることもあれば、1年以上続くこともあります。
むちうちの症状
むちうちの症状は、首の痛みや肩こりだけではありません。以下のようにいろいろな症状があります。
- 首の痛み
- 肩こり
- 上肢のしびれ、痛み
- 上肢の脱力感
- 頭痛
- めまい
- 嘔気
- 耳鳴り
- 下肢のしびれ
- 動悸
- 全身倦怠感
私たち医師が日常診療していて最もよく見かける症状は、首の痛み、肩こり、上肢のしびれや痛み、頭痛の4つです。
<参考>
むちうちの治療期間
むちうちの治療期間はさまざまです。短いケースでは1~2週間で症状が軽快する場合もあります。一般的には、1~3ヵ月かかることが多いですが、中には6ヵ月しても症状が残ってしまうケースもあります。
6ヵ月しても症状が残った場合には、自賠責保険に後遺障害を申請します。しかし、むちうちが後遺障害に認定される確率は、約5.5%ととても低いです。
このため、後遺障害申請に際しては細心の注意が必要です。後遺障害申請は、加害者側の任意保険会社に依頼する事前認定が一般的です。しかし、後遺障害の認定確率を上げるためには、弁護士に依頼して被害者請求する方が望ましいでしょう。
<参考>
【医師が解説】交通事故の後遺障害|認定確率を上げるポイント
むちうちが治らない確率は20%
むちうちの後遺症とは?
むちうちの主な症状は、首の痛み、上肢のしびれ、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなどです。これらの症状は時間の経過とともに軽減しますが、治らない場合は後遺症として残るケースがあります。
むちうちで残りやすい後遺症は、首の痛み(肩のこり)、上肢のしびれ、頭痛です。事故から6ヵ月しても後遺症が残っている場合は、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。
1~3ヶ月でむちうちが治らない人は約50%
むちうち症状が続く期間はさまざまです。短いケースでは1~2週間で症状が軽快する場合もあります。一般的には、1~3ヶ月の治療期間が必要なことが多いですが、約半数の人は3ヵ月しても症状が完全には治りません。
むちうちの20%は1年経っても症状が治らない
むちうちの疫学調査では、むちうちによる明らかな日常生活障害は、受傷後1ヶ月後に約50%、3ヶ月後に約40%、6ヶ月後に約30%、1年後に約20%の患者で症状が残っています。
むちうちの後遺症は数年しても治らないケースもある
一般的に、1年以上症状が続くと、後遺症として症状が続く可能性が高くなります。調査によってバラつきがありますが、数年しても10~20%の患者で後遺症が残ると言われています。
後遺症が残った場合には、自賠責保険に後遺障害を申請することになります。しかし、後遺障害に認定される可能性は約5.5%と極めて低いのが現状です。
後遺障害申請は、加害者側の任意保険会社に依頼する事前認定が一般的です。しかし、後遺障害の認定確率を上げるためには、弁護士に依頼して被害者請求する方が望ましいでしょう。
<参考>
【医師が解説】交通事故の後遺障害|認定確率を上げるポイント
むちうちはどこで治療するのがよい?
整形外科が圧倒的に有利
単純比較であれば、整形外科に通院するべきです。医学的にも、自賠責保険の後遺障害認定確率からも、整形外科への通院が圧倒的に有利です。
しかし、整形外科は医療機関なので数が少なく、診療時間が短いです。このため、忙しい人では通院しにくいケースも考えられます。
整形外科が近くに無かったり、診療時間内の通院が難しい場合には、整骨院(接骨院)での施術も選択肢のひとつです。
整骨院(接骨院)でも整形外科通院が必要
整骨院(接骨院)に行く場合には注意点があります。それは整形外科への通院も併用することです。
整骨院(接骨院)のみでは、保険会社から打ち切り対象になりやすいです。また後遺症が残ったとしても、自賠責保険で後遺障害に認定される可能性はゼロです。
<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
むちうちの後遺障害
後遺障害認定率は5%しかない
むちうちによる後遺障害認定率は非常に低く、全体の認定率は約5%前後とされています。むちうちに限った確率ではないですが、ほぼ近似した数字と言ってよいでしょう。
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
むちうちでは、12級13号が最も高い後遺障害等級です。首の痛みだけではなく、肩こり、上肢のしびれや痛み、めまいや頭痛、嘔気なども後遺障害として認定される可能性があります。
12級13号に認定されるためには、レントゲン検査やMRI検査で客観的(他覚的)な異常所見があることが前提になります。
異常所見には骨折や脱臼はもちろんですが、その他にも椎間板ヘルニアや骨棘(頚椎加齢の変化)、椎間板高の減少(加齢による変性で椎間板の厚みが減少する)も含まれます。
椎間板や神経は、レントゲン検査では写らないため、MRI検査を実施しないと評価できません。このため、症状固定までレントゲン検査しか施行されていないと、12級13号に認定される可能性は極めて低いです。
また、若い患者さんでは加齢による変化が少ないため、MRIを撮像しても異常所見が無いことが多いです。このようなケースでも12級13号には認定されません。
12級13号では、画像検査だけでは不十分で、客観的な身体所見が必要とされます。身体所見とは、筋力低下、筋肉の萎縮(やせて細くなる)、深部腱反射の異常(医師が打腱器を使って行う検査)です。
しびれ(知覚障害)の範囲も、画像所見で圧迫されている神経の分布に一致している必要があります。筋力低下は、徒手筋力テスト(MMT)で評価されます。
<参考>
【医師が解説】徒手筋力検査は後遺症12級認定のポイント|交通事故
14級9号:局部に神経症状を残すもの
12級13号では、自覚症状(患者さんの訴え)だけでは不充分で、身体所見と画像所見の完全一致が原則です。しかし、14級9号では、自覚症状だけでも後遺障害に認定される可能性があります、
14級9号に認定されるためには、症状の常時性(時々痛みがあるのではなく、常に痛みがある)が必要です。「天気が悪いときに痛い」などの症状が消失する時間があると認定されません。
また、あまりに車体の損傷が小さい軽微な交通事故では、いくら症状が強くても14級9号は認定されにくいです。
【弁護士必見】むちうちの後遺障害認定ポイント
むちうちの後遺障害認定ポイントはこちらにまとめています。むちうちの後遺障害認定でお困りの方は参照していただければ幸いです。
<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫が後遺障害に認定されるポイント|交通事故
むちうちの後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、むちうちの後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
むちうちの後遺症でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
むちうちで後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる
むちうちで後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害慰謝料の相場は?
むちうちによる後遺障害慰謝料の相場は、後遺障害等級によって異なります。例えば、12級13号の場合、慰謝料の相場は約290万円、14級9号の場合は約110万円です。
等級が高いほど慰謝料の金額も高くなります。また、弁護士基準を用いることで、より高額な慰謝料を受け取ることができる場合もあります。
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。
後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
後遺障害慰謝料の相場は?
むちうちによる後遺障害逸失利益の相場は、後遺障害等級や被害者の年収によって異なります。一般的には、年収または平均賃金の5%から14%を数年から最大10年分として計算されます。
例えば、12級13号の場合、労働能力喪失率は14%、14級9号の場合は5%とされています。
まとめ
むちうち症状の持続期間は、事故から数日で治癒することもあれば、1年以上持続することもあります。1~3ヶ月でむちうち症状が治らない人は約50%で、むちうちの約20%は1年経っても症状が治りません。
むちうちに後遺症が残った際には、後遺障害に認定される場合がありますが、認定率は約5.5%と極めて低いです。後遺障害の認定確率を上げるためには、弁護士に依頼して被害者請求する方が望ましいでしょう。
むちうちが治らなくて困っている事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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