高次脳機能障害は、交通事故などによる脳損傷が原因で発生して、記憶力や注意力の低下、感情コントロールが難しくなるといった症状が現れます。
しかし、その影響の程度は人によって異なり、後遺障害等級も症状の重さに応じて分類されます。
なかでも「救済等級」と位置付けられている14級は、比較的軽度の後遺障害とされますが、日常生活や仕事に影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、高次脳機能障害14級の認定基準や具体的な症状、補償内容について詳しく解説して、適正な認定を受けるために必要なポイントを分かりやすくお伝えしています。
最終更新日: 2025/2/7
Table of Contents
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害の原因
主な原因は、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)や頭部外傷です。脳腫瘍、脳炎、低酸素脳症、脳血管障害なども原因となります。
高次脳機能障害の症状
記憶障害(物忘れや新しい情報の記憶困難)、注意障害(集中力の低下やミスの増加)、遂行機能障害(計画立案や実行の困難)、社会的行動障害(感情のコントロール困難や自己中心的行動)などが見られます。
高次脳機能障害の診断方法
診断には、症状の確認、MRI検査やCT検査などの画像検査、神経心理学的検査が用いられます。これらの検査によって、脳の器質的病変の有無や認知機能の状態を評価します。
高次脳機能障害の診断基準は、厚生労働省が作成したものが一般的です。高次脳機能障害の診断基準の詳細は、こちらのコラム記事を参照ください。
<参考>
高次脳機能障害の診断基準とは?後遺障害認定基準との違い|交通事故
高次脳機能障害14級の認定基準
高次脳機能障害の後遺障害等級とは
後遺障害等級は、障害の重さや日常生活への影響度に基づき、1級から14級まで分類されています。 高次脳機能障害の場合、症状の深刻さや生活への支障度合いに応じて、これらの等級が適用されます。
具体的には、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力の4つの能力の喪失程度によって、以下のような等級に評価されます。
等級 |
認定基準 |
具体例 |
1級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの |
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2級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの |
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3級3号 |
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの |
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5級2号 |
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの |
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7級4号 |
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの |
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9級10号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
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12級13号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの |
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14級9号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの |
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14級の後遺障害認定基準
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの。
- MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるもの
実務上は、高次脳機能障害として認定される等級の下限は12級13号と言われています。14級9号に関しては、むちうち(頚椎捻挫)と同様に、救済等級と位置付けられています。
14級に該当する具体的な症状
14級に該当する症状としては、軽度の記憶障害や注意力の低下、軽い感情の不安定さなどが挙げられます。
これらの症状は日常生活に支障を及ぼすものの、比較的軽度であると判断される場合に14級として認定されます。
14級と12級の違い
14級と12級の違いは、画像所見の有無です。14級では、画像検査で異常所見が認められなくても、後遺障害に認定される可能性があります。
12級は、症状固定期のCT検査やMRI検査などの画像検査で、脳挫傷痕や脳萎縮を認めることが必須です。
一方、14級と12級の間に、日常生活や就労能力の差はありません。14級・12級とも就労可能で、少しの支援があれば自立できます。
14級・12級と9級の違い
14級・12級と9級の違いは、障害の程度と労務への影響にあります。14級や12級は、日常生活においても少しの支援があれば自立できる状態です。
一方、9級では日常生活は可能ですが、仕事には多少の支障があるため、就労可能な職種が相当程度に制約されます。
高次脳機能障害14級の後遺障害認定に必要なこと
症状固定期の画像検査
高次脳機能障害の後遺障害14級認定には、画像検査での異常所見(脳挫傷痕や脳萎縮)は必要ありません。
しかし、高次脳機能障害で14級が認定されるハードルは極めて高いため、症状固定期の画像検査を精査して12級認定を目指すことが重要です。
MRI検査やCT検査で、わずかでも脳の器質的損傷や異常を証明できれば、12級13号に認定されます。
このため、画像検査での異常所見が必須ではない14級においても、画像所見の有無は精査するべきでしょう。
神経心理学検査
画像所見が無い事案において、神経心理学検査は高次脳機能障害の存在を証明する唯一の手段です。
適切な後遺障害認定には、最適な神経心理学検査を組み合わせて評価する評価バッテリーが重要です。
<参考>
高次脳機能障害の診断テストと評価バッテリー|交通事故の後遺障害
日常生活状況報告書
高次脳機能障害14級のような画像所見の無い事案においては、神経心理学検査と同様に、家人や介護者による生活状況報告が極めて重要です。
日常生活状況報告書は、身近にいる家族や介護者が、交通事故前と後の被害者の状態を詳しく書きます。
日常生活状況報告書の記載内容は、後遺障害認定のポイントを押さえる必要があります。詳細に関しては、こちらのコラム記事を参照してください。
<参考>
日常生活状況報告の書き方とポイント|高次脳機能障害の後遺障害
高次脳機能障害の14級認定ポイント【弁護士必見】
MTBIが実質的な高次脳機能障害14級
軽度外傷性脳損傷(MTBI)は、受傷時の意識障害が軽度であり、画像所見が明らかでない場合が多いです。
しかし、MTBIであっても高次脳機能障害を残す可能性があり、日常生活に支障をきたす場合には、後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」として認定されることがあります。
実質的に、MTBIは高次脳機能障害14級に認定されるしかありません。しかし、画像所見が無いため、認定のハードルは極めて高いのが実情です。
<参考>
症状固定期の画像所見があれば12級
高次脳機能障害で14級に認定されるハードルは極めて高いです。このため、画像検査で異常所見の有無を精査することが推奨されます。
画像検査で何らかの異常所見が認められれば、12級認定に認定される可能性が高まるからです。
このような場合には、経時的に比較すると、脳萎縮の進行を確認できるケースがあります。
画像所見がネックになって非該当になった場合には、画像鑑定も検討が必要でしょう。画像鑑定について不明点があれば、こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
尚、高次脳機能障害の後遺障害認定ポイントやピット―フォールへの対応法は、こちらのコラムで詳述しています。興味のある方は参照してください。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害14級の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残った高次脳機能障害が後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害14級の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
高次脳機能障害14級の慰謝料相場
高次脳機能障害14級の慰謝料相場は、自賠責基準では、後遺障害14級の慰謝料は32万円と定められています。 一方、弁護士基準(裁判基準)では、慰謝料の相場は110万円とされています。
このように、基準によって慰謝料の金額は大きく異なります。適正な賠償を受けるためには、弁護士に相談し、弁護士基準での請求を検討することが重要です。
高次脳機能障害14級でよくある質問
高次脳機能障害は障害者何級になりますか?
高次脳機能障害の等級は、障害の程度や日常生活への支障度合いによって異なります。軽度の場合は14級、重度の場合は1級と、幅広い等級が設定されています。具体的な等級の判断には、専門医の診断や詳細な評価が必要です。
後遺障害14級が認定されるとどうなる?
後遺障害等級14級が認定されると、自賠責保険から32万円の慰謝料が支払われます。ただし、弁護士基準で請求することで、より高額な慰謝料を受け取れる可能性があります。また、14級の認定により、逸失利益の補償も受けられる場合があります。
高次脳機能障害で最も多く認められる症状は何ですか?
高次脳機能障害でよく見られる症状には、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。これらの症状により、日常生活や社会生活に支障をきたすことがあります。
まとめ
高次脳機能障害の後遺障害等級は、症状の重さや生活への影響で1級から14級に分類されます。14級9号は最も軽い等級で、記憶力の低下や注意力の散漫など軽微な症状が残る場合に認定されます。
MRI検査やCT検査で異常が確認できなくても、症状が医学的に説明できれば認定の可能性がありますが、認定へのハードルは極めて高いです。
このため、より確実な後遺障害認定を目指すのであれば、画像検査を再検して12級認定を目指す方が望ましいでしょう。
交通事故で受傷した高次脳機能障害に関してお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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