圧迫骨折は、転倒や交通事故、骨粗しょう症などによって発生しやすい骨折の一種です。特に高齢者に多く見られ、背骨(脊椎)の一部が潰れることで強い痛みや動きの制限が生じます。
圧迫骨折を負ったら、「どのくらいで完治するのか?」「元の生活に戻るにはどのようなリハビリが必要なのか?」といった疑問を抱く方が多いでしょう。
本記事では、圧迫骨折の治癒までの期間や段階ごとの回復プロセス、後遺症のリスク、さらに復帰のタイミングについて詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/3/27
Table of Contents
圧迫骨折の全治まで3~6ヶ月が目安
圧迫骨折の治療期間は一般的に3~6ヶ月が目安とされています。ただし、骨折の程度や患者の年齢、全身状態によって個人差があります。
治療は主に保存療法が中心で、安静やコルセットの装着、鎮痛剤の使用などが行われます。
しかし、痛みが長引く場合や骨癒合が遅れる場合には、経皮的椎体形成術(PVP)などの外科的治療が検討されることもあります。
圧迫骨折の治療過程と期間
急性期(受傷後~1ヶ月)
この期間は、骨折による強い痛みが生じるため、安静が最も重要です。ベッド上での安静やコルセットの装着が推奨され、痛みの管理のために鎮痛剤が使用されます。
高齢者の場合、長期の安静は筋力低下や肺炎のリスクを高めるため、適切なリハビリテーションが必要です。
回復期(1~3ヶ月)
痛みが徐々に軽減して、日常生活への復帰を目指す時期です。コルセットを装着しながら、医師や理学療法士の指導のもと、軽いリハビリテーションを開始します。
ただし、無理な運動は椎体圧壊が増悪するリスクを伴うため、慎重にリハビリテーションを進めることが重要です。
骨癒合期(3~6ヶ月)
骨が完全に癒合して、通常の生活に戻る時期です。リハビリテーションを継続して、筋力や柔軟性の回復を図ります。
そして、骨粗鬆症が原因のケースでは、再発防止のための骨密度の改善や生活習慣の見直しが必要です。
圧迫骨折を詳しく知ろう
圧迫骨折の原因と症状
圧迫骨折は、脊椎の椎体が押しつぶされるように変形する骨折で、特に高齢者や骨粗鬆症の患者に多く見られます。
主な原因は、骨密度の低下による骨の脆弱化で、軽微な外力や日常的な動作でも発生することがあります。また、転倒や交通事故などの外傷も原因となります。
症状としては、突然の腰背部痛や動作時の痛みが挙げられます。重症例では、神経症状や歩行障害を引き起こす可能性もあります。
圧迫骨折の診断と治療法
診断は、患者の症状や受傷状況の聴取、身体診察、そして画像検査によって行われます。初期のレントゲン検査では骨折が確認できない場合もあり、その際にはMRI検査が有効です。
治療法は、痛みの程度や骨折の状態によって異なりますが、一般的には保存的治療が選択されます。具体的には、安静、コルセットの装着、鎮痛剤の使用などが行われます。
しかし、痛みが持続する場合や骨癒合が得られない場合は、外科的治療が検討されることもあります。
圧迫骨折の後遺症
慢性的な腰痛や背部痛
骨折部位の変形や不安定性により、持続的な痛みが生じることがあります。また、骨折時や治療中の不自然な動作により、仙腸関節症を併発する可能性もあります。
このようなケースでは、AKA-博田法などの仙腸関節の治療が有効とされています。
姿勢の変化
椎体の変形が進行すると、背中が丸くなる後弯変形(円背)を引き起こし、姿勢や身長に影響を及ぼすことがあります。
特に複数の圧迫骨折が起こると、背骨が曲がった状態で癒合して、後弯や側弯といった変形が生じます。
姿勢の変化によって、腹部が圧迫されて、逆流性食道炎を引き起こす可能性もあります。
神経症状
破裂骨折で椎体後壁が破壊されると、骨片が脊柱管内に突出して、脊髄や神経を圧迫するケースがあります。
これにより、神経麻痺や痛み、しびれなどの神経症状が現れることがあります。重度の場合、歩行障害が生じ、手術が必要となる可能性もあります。
<参考>
破裂骨折と圧迫骨折の違いとは?|交通事故の後遺障害
圧迫骨折の後遺障害
交通事故で受傷した圧迫骨折による後遺症が残存したら、自賠責保険における後遺障害等級の認定対象となる可能性があります。圧迫骨折の後遺障害には、以下のような5つの障害があります。
- 脊柱の変形障害(6級、8級、11級)
- 脊柱の運動障害(6級、8級)
- 脊柱の荷重機能障害(6級、8級)
- 局部の神経障害(12級、14級)
- 脊髄損傷の後遺障害
脊柱の変形障害(6級、8級、11級)
等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
8級2号 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
6級5号:脊柱に著しい変形を残すもの
2個以上の椎体の前方椎体高の高さの合計が、後方椎体の高さの合計よりも、1個の椎体分以上低くなっているものです。端的に言うと、椎体1個以上の椎体前方高の減少したものです。
この場合の1個の椎体分とは、骨折した椎体の後方椎体高の平均値です。脊柱変形障害の詳細については、こちらのコラム記事を参照してください。
8級2号:脊柱に中程度の変形を残すもの
1個以上の椎体の前方椎体高の高さの合計が、後方椎体の高さの合計よりも、1/2個の椎体分以上低くなっているものです。端的に言うと、椎体の1/2以上の椎体前方高の減少したものです。
具体的な胸椎圧迫骨折の後遺障害8級の画像を知りたい方は、こちらのコラム記事を参照してください。
11級7号:脊柱に変形を残すもの
下記3つのいずれかに該当すれば認定されます。
- 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
- 脊椎固定術が行われたもの
- 3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けたもの
脊柱の運動障害(6級、8級)
等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
6級5号:脊柱に著しい運動障害を残すもの
脊柱に著しい運動障害を残すものとは、次のいずれかの原因で頚部および胸腰部が強直したものです。
- 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、それがレントゲン等によって確認できるもの
- 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8級2号:脊柱に運動障害を残すもの
脊柱に運動障害を残すものとは、次のいずれかに該当する場合です。
- 頚椎、腰椎それぞれに圧迫骨折等があることが画像上確認できるもの
- 頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
- 頭蓋や上位頚椎間に著しい異常可動性が発生したもの
脊柱の運動障害を詳細に知りたい方は、こちらのコラム記事を参照してください。
脊柱の荷重機能障害(6級、8級)
等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に荷重機能障害を残すもの |
年間1000事案の取り扱いがある弊社においても、圧迫骨折で脊柱の荷重機能障害に認定された事案の経験はほとんど存在しません。
その理由は、ほとんどの事案は脊柱の変形障害で処理されるためと思われます。
実臨床で、脊柱の荷重機能障害に認定される可能性がありそうな事案は、圧迫骨折後の偽関節ではないでしょうか。
若年者では少ないですが、高齢者では圧迫骨折後に椎体の前方が偽関節になる症例は珍しくありません。
このような症例では頑固な腰背部痛が残るため、コルセットを常用せざるを得ない症例を散見します。
6級5号:脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの
頚部及び腰部の両方が、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
- 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8級2号:脊柱に荷重機能障害を残すもの
頚部または腰部のいずれかが、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
- 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
脊柱の荷重機能障害を詳細に知りたい方は、こちらのコラム記事を参照してください。
圧迫骨折による神経障害(12級、14級)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
圧迫骨折の程度がごく軽度の場合には、脊柱の変形障害ではなく、神経障害(痛み)として後遺障害に認定される可能性もあります。
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
通常、レントゲン検査やCT検査で、破裂骨折や圧迫骨折の存在を確認できます。このため、画像検査で骨折が確認できるのであれば、脊柱の変形障害(11級7号)を念頭に置いて、異議申し立てするべきでしょう。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
レントゲン検査やCT検査では破裂骨折や圧迫骨折の存在を確認できないものの、MRI検査で骨折が疑われる事案では14級9号に認定される可能性があります。
MRI検査で骨折が疑われる場合には、骨挫傷と骨折の両方の可能性があります。治療経過で椎体に化骨形成を認めるケースは骨折なので、11級7号や12級13号を念頭において異議申し立てするべきでしょう。
脊髄損傷の後遺障害
破裂骨折では、脊髄損傷を合併するケースがあります。脊髄損傷の後遺障害に関しては、こちらのコラム記事を参照してください。
圧迫骨折の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
圧迫骨折の後遺障害認定には、さまざまなピットフォールがあります。特に、脊柱の変形障害は、後遺障害に認定されても、労働能力喪失率や労働能力喪失期間で高率に争いになります。
圧迫骨折の後遺障害認定に関するポイントは、こちらのコラム記事にまとめています。興味のある方はご参照ください。
<参考>
圧迫骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した圧迫骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
圧迫骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
圧迫骨折の全治機関でよくある質問
圧迫骨折のコルセットは何ヶ月くらいつけますか?
一般的に、圧迫骨折後のコルセット装着期間は約2ヶ月程度とされています。
ただし、骨折の状態や患者さんの骨密度、全身の健康状態によっては、装着期間が延長されることもあります。
コルセットの長期装着は筋力低下を招く可能性があるため、医師と相談しながら適切な時期に装着を中止することが重要です。
圧迫骨折は歩いてもいいですか?
圧迫骨折後、痛みが和らいできた段階で、コルセットを装着しながらの歩行が推奨されます。
ただし、無理のない範囲での活動が重要であり、過度な負荷を避けるため、医師や理学療法士の指導のもとでリハビリテーションを進めることが望ましいです。
圧迫骨折 いつまで安静?
圧迫骨折後の安静期間は、一般的に2週間程度とされています。しかし、長期間の安静は筋力低下を招く可能性があるため、痛みが許す範囲で脚の運動や軽い筋力トレーニングを行うことが推奨されます。
その後、コルセットを装着しながら、徐々に日常生活動作やリハビリテーションを進めていくことが重要です。
尚、これらの情報は一般的な指針であり、個々の状況によって異なる可能性があります。具体的な治療方針やリハビリテーション計画については、主治医と十分に相談することが大切です。
まとめ
圧迫骨折は、背骨が押しつぶされる骨折で、高齢者や骨粗鬆症の人に多く見られます。治療期間は通常3~6ヶ月で、安静やコルセットの装着、痛み止めを使う保存療法が中心です。
ただし、痛みが長引いたり骨癒合が遅れるケースでは、外科的治療が必要になる可能性もあります。
治療は3段階あり、最初の1ヶ月は安静、次の1~3ヶ月は軽いリハビリ、3~6ヶ月で骨が癒合し通常の生活に戻ります。再発予防のため、骨密度改善も重要です。
交通事故などで受傷したら、後遺障害が認定されることもあり、等級によって補償が変わります。圧迫骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらのお問い合わせから気軽にご相談ください。
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