交通事故などで膝を負傷した後、正座ができなくなるケースは少なくありません。関節の可動域が制限されたり、痛みが続くと、日常生活に大きな影響を及ぼします。
このような膝の後遺障害は、原因によって等級認定が異なり、適切な診断と申請手続きが必要です。
また、機能の回復を目指すには、リハビリテーションや必要に応じた手術などの対処法も検討すべきでしょう。
本記事では、膝の後遺障害で正座ができない原因、後遺障害の等級、さらに正座を可能にする治療法まで詳しく解説します。
膝の痛みや違和感に悩んでいる方、後遺障害認定を検討している方に、役立つ情報をお届けします。
最終更新日: 2025/2/5
Table of Contents
正座ができない膝の後遺障害は?
機能障害(膝関節の可動域制限)
膝関節の可動域制限により、正座が困難になるケースがあります。正座ができないのは、膝を曲げる、伸ばすといった動作が制限されるためです。
等級 | 認定基準 |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節の1関節の機能に障害を残すもの |
8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
膝関節が全く動かない、または可動域が10分の1以下に制限されている状態です。
10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
膝関節の可動域が1/2以下に制限されている状態です。
12級7号:1下肢の3大関節の1関節の機能に障害を残すもの
膝関節の可動域が3/4以下に制限されている状態です。
神経障害(膝関節の痛み)
膝の痛みのために正座できないケースでは、神経障害(膝関節の痛み)として後遺障害に認定される可能性があります。
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
- 画像所見などで痛みの原因を証明できるもの
14級9号:局部に神経症状を残すもの
- 画像所見で痛みの原因を証明できないものの、治療内容などから痛みの存在を類推できるもの
変形障害
大腿骨や脛骨の偽関節や遷延治癒でも、正座できなくなるケースが多いです。
等級 | 認定基準 |
7級10号 | 偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級9号 | 偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
7級10号:偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
- 大腿骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 脛骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの
著しい運動障害を残すものに該当するのは、硬性補装具を常時使用している状態です。
8級9号:偽関節を残すもの
- 大腿骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 脛骨及び腓骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 脛骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
上記のいずれかの条件に該当すれば、8級9号になります。
12級8号:長管骨に変形を残すもの
7級10号や8級9号に該当しない事案でも、直径が2/3以下になっている等で変形が残っていると判断されれば、12級8号に認定される可能性があります。
膝のケガで正座ができない原因
半月板損傷
半月板は膝関節内でクッションの役割を果たす軟骨組織で、内側と外側にそれぞれ存在します。半月板が断裂すると、正座が困難になる可能性があります。
半月板は、スポーツ中の膝のひねりや加齢による変性などで損傷しやすく、痛みや引っかかり感、ロッキング現象(膝が動かなくなる状態)を引き起こします。
靱帯損傷
膝関節を安定させる前十字靱帯や内側側副靱帯が損傷すると、関節の不安定性が生じます。その結果、膝の動きに制限がかかり、正座時に痛みや不安定感を感じることがあります。
<参考>
大腿骨骨折
大腿骨骨折の中でも、大腿骨顆部骨折は関節内骨折なので、高率に膝関節の可動域制限をきたします。また、大腿骨顆上骨折も膝関節に近い部分の骨折なので、可動域制限をきたしやすいです。
一方、大腿骨骨幹部骨折であっても、骨折部で大腿四頭筋と癒着して膝関節の関節可動域制限をきたすケースが珍しくありません。
<参考>
大腿骨骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
脛骨高原骨折(プラトー骨折)
脛骨高原は膝関節の荷重を受ける重要な部分で、ここが骨折すると関節面の不整や変形が生じます。その結果、膝の可動域が制限されて、正座が困難になる可能性があります。
<参考>
脛骨高原骨折(プラトー骨折)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
膝蓋骨骨折
膝蓋骨(膝のお皿)の骨折は関節内骨折であり、また膝の伸展機能に影響を及ぼします。このため、膝の曲げ伸ばしが困難となり、正座が難しくなる可能性があります。
<参考>
膝蓋骨骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
正座ができない膝の対処法
主治医に相談する
膝の痛みや可動域の制限を感じた場合、まずは主治医に相談することが重要です。医師は症状や原因を評価して、適切な診断と治療方針を提案します。
リハビリテーションを強力に行う
リハビリテーションは、膝の機能回復に不可欠です。理学療法士の指導のもと、筋力強化や柔軟性向上のためのリハビリテーションを行います。
リハビリテーションによって、膝関節の可動域が拡大して、正座が可能になることが期待されます。
膝関節拘縮の手術(授動術)を検討する
リハビリテーションだけでは改善が見られない場合、手術療法が選択肢となります。膝関節拘縮の手術(授動術)は、関節の可動域を回復させるために行われます。
自賠責保険に後遺障害を申請する
リハビリテーションや手術によっても、膝関節の可動域制限が残る可能性があります。このような場合、自賠責保険への後遺障害等級の申請が可能です。
膝のケガの後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
膝のケガで正座ができなくなる原因は多岐に渡ります。正座ができない原因が明確であれば、後遺障害に認定される可能性があります。
しかし、現実には、加齢性の所見であるケースも珍しくなく、後遺障害非該当になる事案が多発しているのが実情です。
例えば、半月板損傷では、加齢による変性断裂が多いです。このため、交通事故との因果関係を否定されて非該当になりやすいです。
正座ができないほどの後遺症が残っているにもかかわらず、後遺障害に認定されずにお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
<参考>
【日経メディカル】半月板損傷と交通事故の不都合な真実
正座ができない事案の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、正座ができない事案が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
正座ができない後遺症でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
まとめ
膝の後遺障害で正座ができない原因には、主に3つのタイプがあります。機能障害は膝関節の可動域が制限され、全く動かない場合は8級7号、半分以下の可動域なら10級11号、3/4以下なら12級7号と認定されます。
神経障害は膝の痛みが原因で、画像で証明できれば12級13号、証明できなくても痛みが推測される場合は14級9号です。変形障害は大腿骨や脛骨の偽関節や変形が原因で、著しい障害の場合7級10号、変形のみの場合12級8号に認定されます。
正座ができないのに後遺障害等級が認定されずにお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。