交通事故などで脳に損傷を受けると、高次脳機能障害と診断される可能性があります。しかし、高次脳機能障害が認定されるまでには、一定の期間と複雑なプロセスが必要です。
特に、自賠責保険や障害年金の後遺障害認定を受けるためには、症状固定の時期や申請のタイミングが重要なポイントになります。
本記事では、高次脳機能障害の認定期間について、自賠責保険と障害年金それぞれの観点から詳しく解説しています。
また、症状固定時期の考え方や認定に影響する要素についても触れて、認定プロセスをスムーズに進めるためのポイントをご紹介します。
最終更新日: 2025/3/24
Table of Contents
高次脳機能障害の認定期間(自賠責保険)
受傷から症状固定までの期間
高次脳機能障害の症状固定時期は、個人差が大きく、受傷からの期間、症状の安定性、年齢、原因となった傷病など多くの要素が影響します。
一般的には、受傷後6ヶ月から1年程度で症状が安定して、症状固定と判断されることが多いとされています。
しかし、回復の程度や速度は個々のケースによって異なるため、主治医と相談しながら適切な時期を見極めることが重要です。
後遺障害等級認定の申請から認定までの期間
症状固定後、後遺障害等級認定の申請を行います。申請から認定までの期間は、提出する書類の内容や審査の状況によって異なります。
一般的には2~3ヶ月かかることが多いですが、等級判断が難しい事案では、数ヶ月かかるケースもあります。
後遺障害認定の審査をスムーズに進めるためには、必要な書類を適切に揃えて、詳細な医療記録や検査結果を提出することが重要です。
このためには、高次脳機能障害の賠償実務に詳しい弁護士のアドバイスを受けることを推奨します。
高次脳機能障害に詳しい弁護士の紹介を希望される方は、こちらのリンク先からお問い合わせください。
<参考>
高次脳機能障害の認定基準は2ステップが分かりやすい|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の認定期間(障害年金)
障害年金の認定日
障害年金の「障害認定日」は、初診日から原則として1年6か月経過した日と定められています。この時点での障害状態を基に、年金の等級が判断されます。
ただし、遷延性意識障害など特定のケースでは、初診日から3ヶ月経過後に障害認定日が設定される特例も存在します。この場合には、早期の年金請求が可能となります。
申請から認定までの期間
障害年金の申請から認定までの期間は、提出書類の内容や審査状況により異なりますが、一般的には3か月から6ヶ月程度かかることが多いとされています。
スムーズな審査を進めるためには、必要書類を適切に揃えて、詳細な医療記録や検査結果を提出することが重要です。また、社会保険労務士のサポートを受けることで、申請手続きを円滑に進めることができます。
高次脳機能障害の症状固定時期を考える要素
受傷からの期間
一般的に、脳外傷後の脳室拡大は1~数ヶ月(3ヶ月程度が多い)で完成するといわれています。
そのため、受傷後6ヶ月程度で症状固定を検討することが多いですが、症状の重篤さや回復状況により個人差があります。
症状の安定性
症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない状態を指します。後遺症が治癒した時点ではないことに注意が必要です。s
高次脳機能障害では、認知機能や社会行動の回復状況を慎重に評価して、症状が安定したと判断される時期が症状固定となります。
年齢
高齢者では、受傷後の回復力が低下する傾向があり、一般的に1年程度で症状固定と判断されるケースが多いです。
一方、子供は回復力が高く、また成長に伴う変化のために評価が難しいこともあり、症状固定まで数年かかるケースもあります。
原因となった傷病
高次脳機能障害は、脳外傷、脳卒中、脳炎、低酸素脳症、脳腫瘍など、さまざまな原因で発生します。
原因となる傷病の種類や重症度により、回復の速度や程度が異なるため、症状固定の時期も影響を受けます。
交通事故で受傷した高次脳機能障害の後遺障害等級
交通事故で受傷した高次脳機能障害は、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。
高次脳機能障害では、意思疎通能力、問題解決能力、作業の持続力や持久力、さらには社会行動能力の低下度合いによって評価されます。
この評価結果に基づき、高次脳機能障害の後遺障害等級は、1級から14級までに分類されます。
高次脳機能障害が後遺障害に等級認定される要件を、さらに詳細に知りたい方は、以下のコラムにまとめています。ご参照いただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故で受傷した頭部外傷による高次脳機能障害では、画像診断によって後遺症との関連性が確認できると、後遺障害として認定される可能性が高まります。
特に局所脳損傷の場合、損傷部位と症状が一致していることが重要な判断基準となります。
高次脳機能障害が認定されると、神経心理学的検査、医学的意見、日常生活状況報告の結果を総合的に評価して、等級審査が行われます。
近年では、意識障害期間が短い事案でも、全体的な状況を踏まえた総合的な判断が重視される傾向にあります。
高次脳機能障害は身体機能障害とあわせて評価されて、就労能力や日常生活への影響度を考慮した上で、後遺障害等級が決定されます。
賠償実務においては、主観的な要素が強い神経心理学的検査が争点となるケースが少なくありません。
検査結果が時間の経過とともに悪化することは稀ですが、ガイドラインに基づいて反論が可能なケースもあります。
さらに高次脳機能障害が後遺障害認定されるポイントを詳しく知りたい方は、以下のコラム記事にまとめています。ご参考にしていただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
交通事故で発症した高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
高次脳機能障害の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した高次脳機能障害の後遺症が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
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高次脳機能障害が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
交通事故によって受傷した高次脳機能障害で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料とは
交通事故で外傷性脳損傷によって高次脳機能障害が残った精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料の相場は?
外傷性脳損傷の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、9級の場合は約690万円、7級は約1000万円、5級は約1400万円、3級は約1990万円、2級は約2370万円、1級は約2800万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることがあります。さらに、1級や2級の場合には将来の介護費として数千万円から1億円を超える額が認められることがあります。
このように、高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益とは
高次脳機能障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益の相場は?
高次脳機能障害の逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、1級の後遺障害の場合、逸失利益は約1億円前後となる可能性があります。一方、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
高次脳機能障害の認定期間でよくある質問
高次脳機能障害の診断はいつ?
高次脳機能障害の診断は、外傷や病気による脳の損傷後に、症状が現れ始めた時に行われます。
具体的には、意識障害からの回復後、認知機能や行動の変化が見られた際に、医師が詳細な検査と評価を行います。
診断は、画像検査(CT検査やMRI検査)、神経心理学的検査、日常生活動作の評価などを通じて行われます。
高次脳機能障害に該当するかどうかは、どうやってわかりますか?
高次脳機能障害の該当性は、次の2つの基準で判断されます。1つ目は、脳の器質的病変の原因、たとえば事故による受傷や疾病の事実が確認されていることです。
2つ目は、現在、日常生活や社会生活に制約があり、おもな原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害であることです。
高次脳機能障害の初診日はいつですか?
高次脳機能障害の初診日は、脳の損傷を引き起こした事故や疾病により、初めて医療機関を受診した日を指します。
この初診日は、障害年金の申請や後遺障害等級認定の際に重要な基準となります。そのため、受傷や発症時に受診した医療機関の記録を正確に保管しておくことが重要です。
まとめ
高次脳機能障害の認定期間は、自賠責保険と障害年金で異なります。自賠責保険では、受傷から症状固定までの期間は一般的に6ヶ月から1年程度です。症状固定後、後遺障害等級認定まで2〜3ヶ月かかることが多いです。
一方、障害年金では、障害認定日は原則初診日から1年6ヶ月後ですが、特例で3ヶ月後となる場合もあります。申請から認定まで3〜6ヶ月かかるため、正確な書類準備と専門家の支援が重要です。
交通事故で受傷した高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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