鎖骨骨折は、スポーツや転倒、交通事故などで起こりやすく、全治期間や治療法が気になる方も多いでしょう。
骨折の程度によっては手術が必要になる場合もあり、適切な治療とリハビリが回復を左右します。
本記事では、鎖骨骨折の全治期間の目安や治療方法、リハビリのポイント、手術のリスクや費用、日常生活での注意点について詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/3/12
Table of Contents
鎖骨骨折は全治何ヶ月?
鎖骨骨折の概要
鎖骨骨折は、肩から胸にかけて位置するS字型の骨である鎖骨に生じる骨折で、スポーツ中の衝突や転倒、交通事故などが主な原因です。
この骨折は全体の約10%を占め、若年層から高齢者まで幅広い世代で発生します。
鎖骨骨折は全治3ヶ月が多い
一般的に、鎖骨骨折の骨癒合には2~3ヶ月が必要とされています。固定期間とリハビリ期間を含めると、全治までに3ヶ月が1つの目安となるでしょう。
ただし、骨折の程度や治療法、個人の回復力によって期間は異なるため、医師の指示に従うことが重要です。
コンタクトスポーツは6ヶ月避けた方が無難
コンタクトスポーツへの復帰は、再骨折のリスクを避けるため、慎重な判断が求められます。
一般的には、骨癒合後も強度が十分に回復するまで6ヶ月以上の期間を設けることが推奨されています。
鎖骨骨折の治療方法
保存療法と手術療法
保存療法は、骨のずれが少ない場合に選択され、鎖骨バンドや三角巾で骨折部を固定して、鎖骨の安静を保ちます。
一方、骨のずれが大きい場合や皮膚を突き破る開放骨折、神経や血管の損傷があるケースでは、プレートやワイヤーを用いた手術療法が必要となります。
固定具の種類と使用期間
保存療法では、鎖骨バンド(クラビクルバンド)や三角巾が使用されます。 固定期間は、骨の癒合を促進するために重要で、一般的には4~8週間の安静が必要とされています。
手術の適応と流れ
手術の適応は、鎖骨骨幹部骨折で骨のずれ(転位)が大きいケースや、鎖骨遠位端骨折です。
手術は全身麻酔下で行われて、骨折部位にプレートやワイヤーを装着して固定するケースが多いです。
術後は、感染予防やリハビリテーションが行われて、早期の機能回復を目指します。
鎖骨骨折の治療期間中の過ごし方
4週間は腕を挙げない
骨折直後から約4週間は、患側の腕を肩より上に挙げることは避けましょう。肩よりも上に挙げると、骨折部に回旋力が加わって、骨癒合が阻害されます。
骨折部の安定性を保って、適切な癒合を促すためにも、肩より上に挙げることは避けましょう。ただし、肘や手首、指の運動は行うことは推奨されています。
バストバンドは6~8週間の装着が必要
鎖骨バンド(クラビクルバンド)は、骨折部位の固定に使用されて、通常6~8週間の装着が必要とされています。
この期間中、バストバンドは常時装着して、入浴や着替えの際のみ外すようにしましょう。バストバンドの適切な装着は、骨の正しい癒合に不可欠です。
バストバンドは1日2回締め直す
鎖骨バンドは時間の経過とともに緩むため、1日2回程度の締め直しが推奨されています。適切な締め具合を保つことで、骨折部位の安定性を維持し、早期回復に繋がります。
三角巾は4週間使用する
三角巾は、患側の腕を支えて、骨折部にかかる負担を軽減するために使用されます。一般的に、骨折後約4週間の使用が推奨されています。
これらは一般的なガイドラインであり、個々の状況によって異なる可能性があります。必ず主治医の指示に従ってください。
鎖骨骨折の後遺障害
交通事故で鎖骨骨折を受傷すると、神経障害、機能障害、変形障害の3つの後遺障害が認定される可能性があります。
神経障害(痛みやしびれ)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
骨が部分的にしかついていない場合(遷延治癒)では、変形障害(12級5号)ではなく、12級13号が認定されるケースがあります。
<参考>
偽関節・遷延治癒の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
14級9号:局部に神経症状を残すもの
鎖骨骨折の手術を受けた場合、必ずといっていいほど出現するのが鎖骨上神経障害です。手術によって鎖骨上神経が切断されるため、手術痕の足側に感覚障害を起こす症例を多く経験します。
しかし、患者さん本人が自覚されていない場合があり、見逃されやすい障害です。症状がある場合には、「局所に神経症状を残すもの」として第14級9号が認定されるケースが多いです。
機能障害(肩を動かしにくい)
鎖骨骨折における機能障害とは、肩関節の可動域制限です。特に、肩に近い骨折ほど、肩関節の機能障害が出現しやすくなります。
しかし、鎖骨骨折は肩関節と直接関係のない部位の骨折です。そのため、交通事故と機能障害との因果関係が問われるケースを多く経験します。
肩関節の機能障害が残存した場合、以下のような後遺障害等級が認められる可能性があります。
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
肩関節が強直またはこれに近い状態にあるものです。これに近い状態とは、自動(自分で動かすこと)で健側(ケガをしていない側)の可動域の10%程度以下に制限された状態です。
<参考>
自動運動と他動運動の違いで後遺障害に差も|交通事故の医療鑑定
10級10号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
肩関節の関節運動が、健側の1/2以下の可動域に制限されているものです。
12級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
肩関節の関節運動が、健側の3/4以下の可動域に制限されているものです。
<参考>
変形障害(偽関節、鎖骨の出っ張り)
12級5号: 鎖骨に著しい変形を残すもの
鎖骨の変形は手術をすれば改善するため、変形そのもので等級認定されるケースは多くありません。一方、手術を施行しても骨折部が十分に癒合しない症例を散見します。
全く骨癒合していない状態を偽関節、一部分だけしか骨癒合していない状態を遷延治癒と呼びます。いずれも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
保存的治療を選択した場合は、手術症例と比較して偽関節や遷延治癒に至る可能性が少し高くなります。このような症例でも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
また、鎖骨の変形そのものでも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
この場合の「著しい変形」とは衣服を脱いで裸の状態になったとき、明らかに骨が変形していると分かる状態のことを意味します。
<参考>
鎖骨骨折の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故による鎖骨骨折で後遺症が残った場合、自賠責保険で以下の後遺障害に認定される可能性があります。
- 神経障害(痛みなど)
- 機能障害(腕が動かしにくくなるなど)
- 変形障害(骨の形が変わるなど)
これらは異なる分類に分けられるため、場合によっては複数が認定されることもありますが、一つの障害としてまとめられることもあります。
鎖骨骨折の後遺障害認定には注意点が多いため、詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご参照ください。
<参考>
鎖骨骨折の後遺障害認定事例【12級13号】
事案サマリー
- 被害者:48歳
- 事前認定:14級9号
- 異議申し立て:神経障害として12級13号が認定
弊社の取り組み
鎖骨骨幹部骨折に対して、プレート固定術が施行されましたが痛みが残りました。
単純X線像(レントゲン検査)では骨癒合しているように見えるため、事前認定では14級9号にとどまりました。
弊社でCT検査を追加施行することを提案したところ、骨幹部に遷延癒合を確認できました。
術後に痺れが残存した鎖骨上神経障害も加味された可能性もありますが、神経障害として12級13号が認定されました。
鎖骨骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、鎖骨骨折が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
鎖骨骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
鎖骨骨折の全治期間でよくある質問
鎖骨骨折で仕事復帰できるのはいつから?
仕事復帰の時期は、骨折の程度や仕事内容によって異なります。デスクワークなどの軽作業であれば、受傷後1週間以内に復帰可能な場合もありますが、痛みの程度によります。
一方、立ち仕事や軽作業の場合、受傷後4~6週間、重労働の場合は3~4ヶ月程度の休業が必要とされています。
鎖骨骨折は手術なしで全治できますか?
鎖骨骨折は、骨のずれが少ない場合や安定している場合、保存療法(ギプスやバンドによる固定)で治癒することが可能です。
しかし、骨のずれが大きい場合や複雑な骨折の場合、手術が必要となることがあります。治療方法の選択は、骨折の状態や患者の全身状態を考慮して決定されます。
まとめ
鎖骨骨折は、スポーツや事故などで発生しやすく、骨がくっつくまでに2~3ヶ月かかります。リハビリも含めると、完治まで約3ヶ月が目安です。激しいスポーツは再骨折のリスクがあるため、6ヶ月ほど避けるのが安全です。
治療には、骨のずれが少ない場合は固定具(鎖骨バンド・三角巾)を使う保存療法、大きなずれがある場合は手術が選ばれます。
固定期間は約4~8週間が目安です。後遺症として神経障害・機能障害・変形障害が残ることもあり、自賠責保険の後遺障害認定が受けられる可能性があります。
鎖骨骨折で予想していた後遺障害が認定されず、お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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