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【医師が解説】肩関節拘縮(拘縮肩)の原因と画像所見|交通事故

肩関節周囲の骨折や腱板断裂などの軟部組織損傷を受傷すると、肩関節拘縮(肩関節の可動域制限)を併発する可能性があります。

 

交通事故では、外傷と肩関節拘縮の因果関係を問われるケースが多いです。しかし、肩関節拘縮の存在を客観的に証明することは難しいと言われています。

 

本記事は、肩関節拘縮の存在を画像検査で証明する方法を理解することで、肩関節拘縮が後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2023/4/20

 

 

肩関節拘縮(拘縮肩)とは

 

肩関節拘縮とは、肩の可動域が制限されて動かしにくくなった状態です。肩関節は、骨と、その周囲を覆う靭帯、筋肉、腱などの軟部組織から形成されています。

 

肩関節拘縮は、肩関節周囲の軟部組織や靭帯、筋肉、腱などが拘縮して硬くなることで起こります。

 

 

肩関節拘縮(拘縮肩)の原因

 

肩関節拘縮は、以下のような傷病に併発します。肩関節周囲炎(五十肩)が肩関節拘縮をきたす代表的な疾患です。

 

  • 肩関節周囲炎(五十肩)
  • 腱板断裂
  • 変形性肩関節症
  • 上腕骨近位端骨折
  • 鎖骨骨折
  • 肩甲骨骨折
  • 関節リウマチ

 

 

肩関節周囲炎以外で肩関節拘縮を併発する傷病は、腱板断裂、変形性肩関節症、そして肩関節周囲の骨折です。

 

 

<参考>
【医師が解説】腱板断裂の後遺障害認定ポイント|交通事故
【医師が解説】上腕骨近位端骨折が後遺症認定されるヒント|交通事故
【医師が解説】鎖骨骨折の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】肩甲骨骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故
【医師が解説】肋骨骨折の後遺症が後遺障害認定されるヒント|交通事故

 

 

shoulder pain

 

 

肩関節拘縮(拘縮肩)の症状

もちろん、肩関節拘縮の主な症状は、肩関節の動きが悪くなることです。具体的には背中に手が届かないや、上の物を取りにくいなどがあります。

 

一方、肩関節拘縮では肩の動きの悪さに加えて、肩の痛みを訴える人も多いです。肩の動きが悪くなることと、肩の痛みはセットであるケースが多いのです。

 

 

肩関節拘縮(拘縮肩)の画像所見

MRI検査

肩関節拘縮のMRI検査では、以下のような画像所見を認めるケースが多いです。

 

  • 肩甲上腕関節水腫
  • 腱板の輝度変化(T2強調画像の高信号変化)
  • 上腕二頭筋腱腱鞘内水腫
  • 腋窩嚢(axillary pouch)の炎症や肥厚
  • 腱板疎部の炎症や肥厚(the superior subscaputaris recess sign)

 

 

特に、肩関節拘縮のMRI検査で重要なのは、腋窩嚢や腱板疎部の炎症や肥厚を示す画像所見です。

 

腋窩嚢と腱板疎部は、腱板に裏打ちされていない関節包の「遊び部分」です。遊びの部分が存在するおかげで、関節は大きく動くことが可能になります。

 

一方、腋窩嚢と腱板疎部分に炎症が起こって肥厚すると、遊び部分が無くなってしまい、肩関節の可動域が低下します。

 

 

axillary pouch

 

 

超音波検査

最近は、高分解能の表在プローブが普及しているので、超音波検査でも肩関節拘縮の画像検査を実施できます。

 

  • 肩甲上腕関節水腫
  • 上腕二頭筋腱腱鞘内水腫
  • 肩甲上腕関節包の肥厚(健側と比較)
  • 肩関節周囲の血管新生(カラードップラー)

 

 

肩関節拘縮で考えられる後遺障害

機能障害(肩関節の可動域制限)

8級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

 

  • 人工骨頭置換術が施行されており、かつ肩関節の可動域が2分の1以下に制限されるもの

 

 

8級6号に該当する可能性がある傷病は、上腕骨近位端骨折です。上腕骨近位端骨折では、高い確率で肩関節の可動域制限をきたします。

 

その理由は、上腕骨近位端骨折は関節内もしくは関節近傍の骨折だからです。一般的に関節内骨折や関節近傍の骨折は、可動域制限を残しやすいと言われています。

 

臨床的には、人工骨頭置換術後に肩関節の可動域制限を残す症例が多いです。外転90度に満たない症例も珍しくありません。

 

 

shoulderreplacement

 

 

10級10号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

 

  • 肩関節の可動域が健側と比べて2分1以下に制限されるもの
  • 人工骨頭置換術により人工骨頭を挿入したもの

 

 

臨床的には、高齢者や上腕骨近端骨折で骨折部の粉砕が強い人は、肩関節の可動域制限を残しやすいです。

 

一方、人工骨頭置換術が施行された場合には、肩関節の可動域制限の有無にかかわらず、最低でも10級10号に該当します。

 

 

12級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

  • 肩関節の可動域が健側と比べて4分3以下に制限されるもの

 

 

比較的軽度の骨のずれ(転位)であっても、肩関節の可動域制限を残す可能性があります。10級10号と同様に、高齢者や骨折の粉砕が強い症例は、肩関節の可動域制限を残しやすいです。

 

また、上腕骨近位端骨折だけではなく、鎖骨骨折や肩甲骨骨折でも、肩関節の可動域制限を残すケースが多いです。

 

 

神経障害(肩関節の痛み)

12級13号: 局部に頑固な神経症状を残すもの

 

骨折部が骨癒合しても、関節の可動域制限と一緒に肩関節の痛みが残存しやすいです。また上腕骨頭の骨折で関節面の不整を残して骨癒合したなど、明らかな痛みの原因を認める症例も散見します。

 

 

14級9号: 局部に神経症状を残すもの

 

12級13号には至らない程度の骨折の変形では、14級9号に認定される症例が多いです。

 

 

 

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【弁護士必見】肩関節拘縮の後遺障害認定ポイント

MRI検査の腋窩嚢や腱板疎部の炎症所見が重要

肩関節拘縮は、交通事故後によく見られる機能障害です。腱板断裂、上腕骨近位端骨折、鎖骨骨折、肩甲骨骨折などに併発するケースが多いです。

 

後遺障害診断書で肩関節の可動域制限が記載されても、画像所見や診療経過で肩関節拘縮の存在を客観的に証明できなければ、後遺障害に認定される可能性は低いです。

 

しかし、肩関節拘縮を客観的に証明するのは比較的難しいです。肩関節拘縮を客観的に証明する方法の筆頭はMRI検査でしょう。

 

MRI検査で、腋窩嚢や腱板疎部の炎症や肥厚を示す画像所見が認められれば、肩関節拘縮の存在を証明することは可能です。

 

 

超音波検査の有用性は低い

一方、実臨床でMRI検査以上に頻用されるのは超音波検査です。超音波検査では、関節包の肥厚や滑膜増生を描出できます。

 

しかし、超音波検査の記録された画質は粗く、自賠責保険に提出する客観的な資料としては、MRI検査よりも劣ると言わざるを得ません。

 

また、検者の技量に拠る部分が大きいため、後遺障害認定のための客観的な証明にはなりにくいのが現状です。

 

肩関節拘縮の後遺障害でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

肩関節拘縮は、肩関節周囲の軟部組織や靭帯、筋肉、腱などが拘縮して硬くなることで起こります。

 

肩関節周囲炎(五十肩)が肩関節拘縮をきたす代表的な疾患ですが、それ以外にも腱板断裂、変形性肩関節症、肩関節周囲骨折に併発するケースが多いです。

 

肩関節拘縮を客観的に証明するためには、MRI検査において腋窩嚢や腱板疎部の炎症や肥厚を示す必要があります。

 

 

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