脳挫傷は、交通事故や転倒などによって引き起こされる深刻な外傷の1つです。脳挫傷後には、身体的な症状だけでなく、性格や行動に変化が現れることがあります。
これらの変化は、本人や家族にとって非常に困惑するものであり、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、脳挫傷後の性格変化の具体的な症状や特徴について解説しています。また、性格変化が高次脳機能障害として後遺障害認定される可能性についても触れています。
最終更新日: 2024/12/1
Table of Contents
脳挫傷後の性格変化とは
脳挫傷の一般的な症状と分類
脳挫傷の症状は、損傷の部位や程度によって異なります。一般的な症状には、頭痛、嘔吐、意識障害、運動麻痺、痙攣発作、視野の欠損などがあります。
脳挫傷は、直撃損傷と反衝損傷の2つに分類されます。直撃損傷は外力が直接加わった部位に生じる損傷で、反衝損傷は衝撃を受けた部位の反対側に生じる損傷です。
<参考>
脳挫傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
脳挫傷で性格が変わるのはなぜ?
脳挫傷による性格変化は、脳の損傷部位によって引き起こされます。特に前頭葉が損傷を受けると、感情のコントロールが難しくなり、怒りっぽくなったり、衝動的な行動を取ることがあります。
また、脳の損傷が高次脳機能に影響を与えることで、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などが生じ、これが性格変化に繋がることがあります。
性格変化の具体的な症状例
脳挫傷後の性格変化には、具体的な症状として怒りっぽくなる、頑固になる、失敗を他人のせいにする、人付き合いが悪くなる、気遣いができなくなるなどがあります。
これらの症状は、脳挫傷によって脳組織が損傷された結果、認知機能の低下や感情のコントロールが難しくなることによって引き起こされます。
脳挫傷後に見られる行動の変化
脳挫傷後には、行動にも様々な変化が見られます。例えば、注意力や集中力の低下、遂行機能の障害、感情のコントロールが難しくなることなどが挙げられます。
これらの行動変化のために、日常生活や社会生活において困難が生じるケースが珍しくありません。また、自己認識の低下や他人への依存が強くなることもあります。
高次脳機能障害としての性格変化
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、交通事故や病気によって脳が損傷を受けた結果、言語や記憶、思考、学習、注意などの脳機能に障害が起こった状態を指します。
これにより、日常生活や社会生活に支障をきたすことが多く、特に感情や行動のコントロールが難しくなることがあります。
高次脳機能障害は、外見からは分かりにくいため、周囲の理解が得られにくいことが特徴です。
高次脳機能障害に気付きにくい理由
高次脳機能障害は、外見上の変化が少ないため、本人や周囲が気付きにくいことが多いです。
例えば、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などの症状は、日常生活の中で徐々に現れるため、初期段階では見過ごされがちです。
また、感情や行動の変化も、単なる性格の一部と誤解されることが多く、適切な診断や治療が遅れることがあります。
<参考>
【日経メディカル】交通事故後の高次脳機能障害を見逃すな!把握しにくい2つの理由
脳挫傷後の性格変化は高次脳機能障害かもしれない
脳挫傷後に見られる性格変化は、高次脳機能障害の一部である可能性があります。脳の損傷部位によっては、感情のコントロールが難しくなり、怒りっぽくなったり、衝動的な行動を取ることがあります。
これらの性格や行動変化は、高次脳機能障害かもしれないため、脳神経外科、脳神経内科などの専門医による診断と治療が必要です。
脳挫傷後の性格変化で認定されうる後遺障害
脳挫傷後の性格変化や行動変化は、自賠責保険では高次脳機能障害として、後遺障害に認定される可能性があります。
高次脳機能障害の後遺障害は、障害の程度に応じて1級から14級までの等級が設けられています。等級認定基準は、脳の損傷の程度や症状の重さに基づいて決定されます。
具体的には、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力の4つの能力の喪失程度によって、以下のような等級に評価されます。
等級 |
認定基準 |
具体例 |
1級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの |
|
2級1号 |
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの |
|
3級3号 |
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの |
|
5級2号 |
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの |
|
7級4号 |
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの |
|
9級10号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
|
12級13号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの |
|
14級9号 |
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの |
|
1級1号
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの
- 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
- 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの
1級1号の障害程度と症状の目安
高次脳機能障害の1級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要する状態です。高度の認知機能障害があり、生活維持に必要な身の回り動作に全面的な介護が必要です。
2級1号
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの
- 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
- 高次脳機能障害による認知症、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
- 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの
2級1号の障害程度と症状の目安
2級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しているため、随時介護を要する状態です。判断力の低下や情動の不安定があり、一人で外出することができず、日常生活は自宅内に限定されます。
3級3号
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの
- 4能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの
- 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの
3級3号の障害程度と症状の目安
3級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しているため、終身労務に服することができない状態です。記憶や注意力、新しいことを学習する能力に著しい障害があり、一般就労が困難です。
<参考>
高次脳機能障害3級の後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
5級2号
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの
- 4能力のいずれか1つの能力の大部分が失われているもの
- 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの
5級2号の障害程度と症状の目安
5級は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しているためし特に軽易な労務以外の労務に服することができない状態です。単純繰り返し作業に限定すれば一般就労も可能ですが、新しい作業を学習することが難しいです。
<参考>
高次脳機能障害5級の後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
7級4号
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの
- 4能力のいずれか1つの能力の半分程度が失われているもの
- 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの
7級4号の障害程度と症状の目安
7級は、神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができない状態です。一般就労を維持できますが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどの問題があります。
<参考>
高次脳機能障害で7級が後遺障害認定されるポイント|交通事故
9級10号
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
- 高次脳機能障害のため4能力のいずれか1つの能力の相当程度が失われているもの
問題解決能力の相当程度が失われているものの例:1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、たまに助言を必要とする
9級10号の障害程度と症状の目安
9級は、神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される状態です。一般就労を維持できますが、問題解決能力や作業効率に問題があります。
<参考>
高次脳機能障害で9級が後遺障害認定されるポイント|交通事故
12級13号
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの
- 4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているもの
実務上は、高次脳機能障害として認定される等級の下限は12級13号と言われています。臨床的な症状が無くても、症状固定時のCTやMRIで脳挫傷痕や脳萎縮などの所見を認めれば、12級13号が認定されます。
12級13号の障害程度と症状の目安
12級は、神経系統の機能または精神に軽度の障害を残し、日常生活や労働に支障がある状態です。具体的な症状としては、軽度の記憶障害や注意力の低下が見られます。
<参考>
高次脳機能障害が12級に後遺障害認定されるポイント|交通事故
14級9号
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの
- MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるもの
14級9号の障害程度と症状の目安
14級は、神経系統の機能または精神にごく軽度の障害を残し、日常生活や労働に軽微な支障がある状態です。軽微な記憶障害や注意力の低下が見られますが、日常生活には大きな影響はありません。
性格変化が後遺障害認定されるポイント
性格変化が後遺障害として認定されるためには、脳挫傷による脳組織の損傷が原因であることが証明されて、日常生活や社会生活に支障をきたしていることが必要です。
具体的には、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などの認知障害が残り、生活に支障をきたしているケースです。被害者家族ができることとしては、日常生活状況報告において、事故前と後の生活状況の変化を具体的に示すことが重要です。
高次脳機能障害が後遺障害に認定されるポイントを詳しく知りたい方は、こちらのコラム記事を参照いただければ幸いです。
<参考>
脳挫傷後の性格変化の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、脳挫傷後の性格変化が後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
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医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
脳挫傷後の性格変化の後遺症でお悩みの被害者家族の方へ
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脳挫傷後の性格変化が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
脳挫傷後の性格変化が、高次脳機能障害として後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で性格変化などの高次脳機能障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料の相場は?
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、9級の場合は約690万円、7級は約1000万円、5級は約1400万円、3級は約1990万円、2級は約2370万円、1級は約2800万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることがあります。さらに、1級や2級の場合には将来の介護費として数千万円から1億円を超える額が認められることがあります。
このように、高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
後遺障害逸失利益とは
高次脳機能障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益の相場は?
高次脳機能障害の逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、1級の後遺障害の場合、逸失利益は約1億円前後となる可能性があります。一方、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
脳挫傷後の性格変化でよくある質問
交通事故後に怒りっぽくなるのはなぜですか?
交通事故後に怒りっぽくなるのは、高次脳機能障害が原因であることが多いです。脳の損傷により感情のコントロールが難しくなり、怒りやすくなることがあります。また、事故のストレスやトラウマも影響します。
頭をぶつけると性格が変わるのはなぜ?
頭をぶつけると、脳が損傷を受けることがあります。特に前頭葉が損傷すると、感情のコントロールが難しくなり、性格が変わることがあります。脳の損傷が原因で、怒りっぽくなったり、衝動的な行動を取ることがあります。
脳震盪になると性格は変わりますか?
脳震盪は、脳が激しく揺さぶられることで一時的な機能障害が生じる状態です。脳震盪後には、一時的に情緒が不安定になったり、混乱したりする可能性はあります。
交通事故で性格が変わった人はいますか?
交通事故後で頭部外傷を受傷すると、高次脳機能障害が原因で、感情のコントロールが難しくなり、怒りっぽくなったり、無気力になることがあります。
まとめ
脳挫傷は、外部からの衝撃で脳が損傷し、頭痛、嘔吐、意識障害、運動麻痺などの症状が現れます。
特に前頭葉が損傷すると性格が変わることがあり、感情のコントロールが難しくなるため怒りっぽくなったり、衝動的な行動を取ることがあります。
これらの性格変化は、高次脳機能障害の一部とされ、日常生活や社会生活に支障をきたすことがあります。
後遺障害として認定されるには、脳の損傷が原因であることを証明し、生活に具体的な支障が生じていることが必要です。
交通事故で受傷した高次脳機能障害に関してお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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