交通事故に遭って肩の痛みが続くと、多くの人にとって大きな悩みとなります。肩の痛みは、事故直後に感じる急性の痛みから、時間が経つにつれて現れる慢性的な痛みまでさまざまです。
本記事では、交通事故後の肩の痛みと後遺症について詳しく解説しています。さらに、交通事故を取り扱う弁護士が知っておくべき後遺障害認定のポイントまで幅広くカバーしています。
最終更新日: 2024/10/19
Table of Contents
交通事故後の肩の痛みとは
肩の痛みの種類とその特徴
交通事故後の肩の痛みには、いくつかの種類があります。以下に主なものを紹介します。
骨折
肩の骨が折れると、痛みが非常に強く、ほとんど動かせなくなります。肩の骨折には、鎖骨骨折、上腕骨近位端骨折、肩甲骨骨折などがあります。
関節の損傷
肩の関節が捻じれたり、脱臼したりすることがあります。脱臼すると痛みが強く、ほとんど動かせなくなります。
筋肉や腱の損傷
交通事故の衝撃で、肩の筋肉や腱が部分的に引き裂かれることがあります。すぐに痛みが現れ、肩の動きが制限されることが多いです。
神経の損傷(むちうち)
むちうちでは、首から肩にかけての痛みやしびれを生じることが多いです。交通事故に遭った直後は症状が軽く、半日から1日して悪化するケースが多いです。
交通事故による主な肩の障害
交通事故による主な肩の障害として、痛み、可動域制限、不安定性(すぐ脱臼しそうになる)が挙げられます。
例えば、痛みと可動域制限、痛みと不安定性が残るなど、複数の障害が併存するケースが多いです。
痛みが遷延するケースの特徴
交通事故後の肩の痛みが長引くケースとして、関節内骨折がずれたままで治った場合が挙げられます。また、筋肉や腱の断裂が原因で痛みが続くこともあります。
むちうち症状も長引きやすいです。むちうちで慢性的な痛みやしびれが残すケースは珍しくありません。
交通事故で肩の痛みが後遺症になるケガは?
上腕骨近位端骨折
上腕骨近位端骨折は、転倒、スポーツ、交通事故などによって起こりやすいです。症状としては、肩の痛み、腫れ、そして可動域制限が見られます。
診断にはレントゲン検査やCT検査が使用されます。治療には手術療法と保存療法があり、物理療法を組み合わせたアプローチが取られます。回復には数ヶ月かかるケースが多いです。
<参考>
【医師が解説】上腕骨近位端骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|医療鑑定
鎖骨骨折
鎖骨骨折は、肩と胸の間にある鎖骨が折れる怪我で、痛みや腫れが生じます。主な原因は、スポーツや交通事故などによる転倒や衝撃です。
鎖骨骨折は全骨折の約10%を占め、そのうち約80%が鎖骨の中央部分で発生します。骨折すると、鎖骨がずれて変形し、肩幅が狭くなり、痛みや腫れが生じます。
診断は主にレントゲン検査で行われます。治療はクラビクルバンドによる保存療法が一般的ですが、骨折型によっては手術療法が必要です。
<参考>
肩甲骨骨折
肩甲骨骨折は全骨折の中で1%と比較的稀な骨折です。主な原因は交通事故や高所からの転落などの強力な外力によるものです。
肩甲骨は周囲を筋組織に包まれているため、比較的安定性が保たれ、豊富な血流により骨癒合も良好です。
治療では主に保存療法が選択され、リハビリテーションが重要です。肩甲骨骨折は、肋骨骨折など他の外傷を合併することが多いです。
<参考>
【医師が解説】肩甲骨骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|医療鑑定
腱板断裂
腱板断裂は、肩甲骨と上腕筋をつないでいる腱が切れてしまった状態を指します。肩を動かしたときに痛みを感じたり、可動域が制限される症状が見られます。
腱板は、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の4つの筋肉で構成され、肩関節の安定性と滑らかな動作に重要な役割を果たしています。
腱板断裂は、交通事故などの外傷によって突然起こることもありますが、多くの場合、長年の使用による摩耗や加齢に伴う変性が原因で、徐々に進行します
<参考>
むちうち
むちうちは、交通事故などで首が急激に前後に動かされた際に起こる怪我です。この怪我は、首の筋肉や靭帯に損傷を与え、肩痛を引き起こすことがあります。
むちうちによる肩痛は、首から肩への神経圧迫や炎症によって生じることが多いです。治療には、安静、物理療法、鎮痛剤の使用が一般的です。
<参考>
肩の痛みの診断と検査
初期診断で行われる検査
肩の痛みの初期診断では、いくつかの検査が行われます。まず、視診と触診で肩の外観や痛みの部位を確認します。
次に、レントゲン検査で骨の異常をチェックして、MRI検査や超音波検査で軟部組織の状態を詳しく調べます。これにより、腱板断裂や関節唇損傷などの診断も可能です
画像診断の重要度
画像診断は、肩の痛みの原因を特定するために非常に重要です。MRI検査は、軟部組織(腱板や関節唇)の損傷を詳細に捉えることができます。
また、CT検査は骨折の形態を詳細に評価するのに役立ちます。この評価によって、適切な治療法を選択することができます。
肩の痛みの後遺障害
12級13号( 局部に頑固な神経症状を残すもの)
骨折が治っても、肩の動きが制限されて痛みが残るケースがあります。特に上腕骨近位端骨折では、痛みの原因となりやすいです。
後遺障害12級13号に認定されるためには、肩の痛みの原因をレントゲン検査、CT検査、MRI検査などの画像検査で証明する必要があります。
14級9号(局部に神経症状を残すもの)
画像検査で12級13号ほど肩の痛みの原因が明確ではないものの、通院状況や事故態様から「痛みが残っているだろう」と推認される場合に、14級9号が認定されます。
【弁護士必見】交通事故後の肩の痛みの後遺障害認定ポイント
交通事故後の肩の痛みでは、傷病によって後遺障害認定されやすさに大きな差があります。一般的に転位のある骨折に関しては、比較的後遺障害に認定されやすいです。
一方、転位の小さな骨折や、腱板断裂や関節唇損傷などの軟部組織損傷では、画像所見が明確であっても後遺障害に認定されにくい印象があります。
後遺障害認定される可能性は、事故態様、臨床経過、画像所見などである程度判断できます。また現時点での確率を見極めることで、後遺障害認定にむけて対策を立てることも可能です。
交通事故後の肩の痛みで弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故や労災事故で残った肩の痛みが後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故後の肩の痛みでお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
交通事故後の肩の痛みへの対処法
痛みを和らげるための治療法
交通事故後の肩の痛みへの対処法として、RICE処置が挙げられます。RICE処置は、肉離れや打撲、捻挫などのケガをしたときの基本的な応急処置です。
RICEは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取ったものです。肩の痛みでは、Rest(安静)、Icing(冷却)が重要です。
応急処置としてRICE処置を行ったうえで、早めに医療機関を受診しましょう。
日常生活でのケア方法
冷却や温熱療法を取り入れることで、痛みや炎症を和らげる効果があります。肩に関しては、あまりにも安静にし過ぎると関節可動域制限をきたしやすいので注意が必要です。
また、適度なストレッチや軽い運動を行うことで、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進することができます。日常生活では、正しい姿勢を保ち、重い物を持ち上げる際には注意しましょう。
まとめ
交通事故後の肩の痛みには、骨折、筋肉や腱の損傷、神経の損傷(むちうち)などさまざまな種類があります。
肩の痛みの診断と検査には、視診、触診、レントゲン検査、CT検査、MRI検査、超音波検査などが用いられます。
肩の痛みの後遺障害として、12級13号( 局部に頑固な神経症状を残すもの)と14級9号(局部に神経症状を残すもの)があります。
肩の痛みの後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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