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【医師が解説】腱板断裂を放置するとどうなる?後遺症は?|交通事故

腱板は、肩関節にある4つの小さな筋肉の腱です。腱板は肩関節をスムーズに動かす役割を果たしています。

 

腱板は断裂しやすいことで有名で、交通事故で受傷するケースも多いです。腱板断裂を放置するとどうなるのでしょうか。

 

本記事は、腱板断裂を放置するとどうなるのかと、後遺障害を理解するヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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腱板とは

腱板は4つの小さな筋肉の集合体

腱板は、肩関節にある4つの小さな筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)の腱部分の総称です。

 

 

rotator cuff

 

 

腱板の役割

肩を動かす際に腱板が収縮することで、肩関節の支点を安定化させます。肩関節をスムーズに動かすために、腱板は重要な役割を果たしています。

 

 

腱板断裂(腱板損傷)とは

腱板断裂の受傷機序

腱板断裂の受傷機序として以下が挙げられます。

 

  • 肩関節の前方や外側から直接力が加わって断裂する
  • 手や肘をついた際に腱板が骨の間に挟まれて断裂する

 

 

交通事故では、バイク事故や自転車事故が多いです。また、車のハンドルを握った状態で衝突した時に、腱板が断裂するケースもあります。

 

 

腱板が断裂しやすい理由

腱板は切れやすいことで有名です。肩峰と上腕骨の間に挟まれており、常に骨とこすれて摩耗することが原因と考えられています。

 

 

腱板断裂は棘上筋腱が多い

腱板が切れることを腱板断裂(腱板損傷)と言います。腱板のうち、最も断裂しやすいものは棘上筋腱です。

 

 

shoulder pain

 

 

腱板断裂の種類

 

腱板断裂は、部分断裂(不全断裂)と完全断裂に分けられます。

 

 

腱板部分断裂(不全断裂)

腱板の一部の層だけが切れている状態です。切れている部分によって3つに分けられます。

 

 

腱板の関節面断裂

腱板の関節面に近いところだけが断裂します。

 

 

腱板の滑液包面断裂

腱板の表面を覆う滑液包に近いところだけが断裂します。

 

 

腱板の腱内断裂

腱板の内部が断裂します。

 

 

腱板完全断裂

腱板が全層にわたって切れている状態です。手術の際に腱板を上から見ると、内部の肩関節(上腕骨)が見えてしまっている状態です。

 

 

腱板断裂の診断

レントゲン検査は正常が多い

腱板断裂では、骨折などの外傷を除外するため、まずレントゲン検査を実施します。しかし、腱板断裂のレントゲン検査は、正常なケースが多いです。

 

一方、受傷から時間が経過した腱板断裂は、レントゲン検査で上腕骨頭の上方化や軟骨の変性が見られます。

 

 

MRI検査は形態まで診断できる

MRI検査は、腱板断裂の大きさ、断裂している腱の種類、腱板の質、内視鏡で手術が可能か、なども判断できます。下の画像では、棘上筋腱が断裂して上腕骨頭の内側に引き込まれていることまで分かります。

 

 

 

 

腱板断裂の治療方法

保存療法

腱板断裂では、保存療法を実施するケースも多いです。小さな腱板断裂では、除痛目的で定期的に関節内注射を行います。

 

また、正常な部分の腱板をリハビリテーションで訓練して、肩関節の機能回復を図ります。併せて、拘縮が出現しないように可動域訓練も行います。

 

 

手術療法

注射やリハビリテーションを実施しても、症状が改善しない場合は手術を施行するケースもあります。手術では断裂した腱板を引き出して修復します。

 

腱板の断裂幅が大きいため修復できないケースでは、腱を移行(移植)することもあります。それでも挙上できない場合は人工関節を挿入します。

 

 

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腱板断裂を放置するとどうなる?

小さな部分断裂なら痛みが無くなるケースもある

小さな部分断裂の場合は、痛みが自然に無くなるケースもあります。腱板断裂が自然に修復されたわけではなく、痛みが無くなっただけであることに注意が必要です。

 

いわゆる四十肩や五十肩の中には、かなりの割合で腱板の部分断裂が含まれていると言われています。知らないうちに腱板断裂を受傷しているケースは、意外なほど多いのです。

 

 

大きな断裂は痛みと筋力低下が残る

大きな腱板断裂を放置すると肩関節の変形が生じてしまい、肩の痛みと筋力低下が残ってしまいます。 自分で腕を挙げられなくなる人も少なくありません。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

腱板断裂の後遺障害

機能障害

10級9号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

 

関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。腱板断裂によって肩関節が拘縮すると可動域制限が残ります。

 

 

12級6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。

 

 

<参考>
【医師が解説】肩関節拘縮(拘縮肩)の原因と画像所見|交通事故

 

 

神経障害

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

受傷後早期のMRI検査で腱板断裂の存在が明らかな場合には、12級13号に認定される可能性があります。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

自賠責保険では、12級13号に認定される画像所見の条件がかなり厳しいです。自賠責認定基準12級13号を満たさなくても、14級9号に認定される可能性はあります。

 

 

 

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【弁護士必見】腱板断裂の後遺障害認定ポイント

受傷後早期のMRI検査が必須

腱板断裂には、痛みの無い無症候性が多いです。そして加齢とともに、無症候性の腱板断裂の有病率が上昇します。特に50歳よりも上の年代であれば、既往症として高率に腱板断裂が存在すると考えて良いでしょう。

 

当然、自賠責保険も中高齢層では無症候性腱板断裂が多いことを認識しています。このため、急性期に実施したMRI検査でなければ、交通事故との因果関係を否定されてしまいます。

 

 

<参考>
【医師が解説】腱板断裂の後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

Rotator cuff injury

 

 

腱板断裂の受傷機序も問われる

自賠責保険で後遺障害に認定されるためには、腱板断裂の受傷機序も重要です。バイク、自転車、歩行中の交通事故は、外力が大きいため交通事故との因果関係を認められやすいです。しかし、自動車乗車中の交通事故に関しては、身体に加わる外力はそれほど大きくないと見做されがちです。

 

実際には、ハンドルを握っている時に衝突すると、腱板が骨の間に挟まれてしまい腱板断裂を受傷し得ます。しかし、弁護士意見書だけで自賠責保険を納得させることは一般的には困難でしょう。

 

 

<参考>
【日経メディカル】その腱板断裂、ホントに交通事故の後遺症?

 

 

 

nikkei medical

 

 

【10級10号】腱板損傷の後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:55歳
  • 初回申請:14級9号
  • 異議申立て:10級10号

 

50歳代で変性のある腱板損傷です。自賠責では3回異議申立てをしても14級9号(局部の神経症状)としか認定されませんでした。

 

 

弊社の取り組み

弊社にて精査したところ、事故を契機にして経時的にMRI検査で腱板損傷部位のサイズが拡大していました。

 

この点について医師意見書で主張したところ、10級9号(上肢の著しい機能障害)の後遺障害が認定されました。

 

 

<画像所見>
棘上筋腱の中〜大断裂を認めます。

 

 

 

 

まとめ

 

腱板は断裂しやすいことで有名ですが、腱板断裂を放置するとどうなるのでしょうか。小さな部分断裂なら痛みが無くなるケースもあります。

 

しかし、大きな腱板断裂を放置すると肩関節の変形が生じてしまい、肩の痛みと筋力低下が残ってしまいます。 自分で腕を挙げられなくなる人も少なくありません。

 

腱板断裂で後遺症が残ると、自賠責保険では後遺障害の12級や14級に認定される可能性があります。

 

腱板断裂でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
 

 

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