交通事故コラム詳細

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【医師が解説】後遺障害の可動域測定とは?ポイントと注意点|医療鑑定

後遺障害の等級を決定する際、関節の可動域測定は非常に重要な要素となります。本記事では、後遺障害の可動域測定基準について詳しく解説して、具体的な測定方法や注意点を紹介しています。

 

さらに、交通事故を取り扱う弁護士が知っておくべき後遺障害認定のポイントまで幅広くカバーしています。

 

 

最終更新日: 2024/10/17

 

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可動域測定の基本的な方法

可動域測定の基準

関節可動域(Range of Motion: ROM)の測定は、日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が提唱する方法が基準となっています。測定には角度計を使用し、関節の構築学的異常や軟部組織の伸張性を評価します。

 

 

上肢の測定法

 

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ROM-2

 

 

手指の測定法

 

ROM-3

ROM-4

 

 

下肢の測定法

 

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ROM-6

 

 

体幹の測定法

 

ROM-7

 

 

※ 関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂)から転載

 

 

自動運動と他動運動

関節可動域には、自動運動と他動運動の2種類があります。自動運動とは、自分の意思で関節を動かすことです。後遺障害診断書に記載される自動運動での関節可動域は、自分の意思で動かせる範囲を指します。

 

他動運動とは、他人の力で関節を動かすことです。後遺障害診断書に記載される他動運動での関節可動域は、他人が動かせる範囲を指します。被害者が痛みを我慢して動かせる範囲が他動運動での関節可動域です。

 

 

<参考>
【医師が解説】自動運動と他動運動の違いで後遺障害に差も|医療鑑定

 

 

主要運動と参考運動

主要運動とは、各関節における日常動作にとって最も重要な動きのことを指します。例えば、肩関節の屈曲や外転、股関節の屈曲や伸展などが主要運動に該当します。

 

一方、参考運動は主要運動ほどではないものの、日常動作において重要な役割を果たす動きです。例えば、肩関節の伸展や外旋、股関節の外旋や内旋などが参考運動に該当します。

 

これらの運動は、関節の可動域制限の評価や後遺障害等級の認定において重要な指標となります。

 

 

参考可動域について

後遺障害認定では、健側(ケガをしていない側)の関節の可動域測定値で、等級が審査されます。しかし、何等かの理由で健側の関節可動域が不明の場合には、参考可動域が採用されます。

 

参考可動域とは、関節の動きの範囲を評価する際に、標準的な基準として使用される可動域のことです。具体的には、正常な関節の動きの範囲を示す数値や角度を指し、これを基準にして個々の患者の関節可動域を比較・評価します。

 

例えば、肘関節の参考可動域は通常0度から150度とされており、この範囲内での動きが正常と見なされます。参考可動域を用いることで、後遺障害の等級を決定する際に、どの程度の可動域制限があるかを客観的に判断することができます。

 

 

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後遺障害における可動域測定のポイント

他動運動の可動域測定が基本

自賠責保険の後遺障害認定基準では、関節の可動域を測るとき、他動運動の可動域測定値が使われます。これは、自動運動だと被害者が意図的に動かす可能性があるからです。

 

他動運動で測るべきところを自動運動でしか測っていない場合、後遺障害認定の審査がされず、無条件で非該当になるので注意が必要です。

 

 

自動運動の可動域測定が採用される特殊例

他動運動の可動域測定値が適切でない場合は、自動運動の可動域測定値を参考にして後遺障害が認定されます。

 

 

神経麻痺

 

末梢神経が損傷すると、関節を動かす筋肉が麻痺してしまいます。その結果、他人が動かすと関節は動くけれど、自分では動かせなくなることがあります。神経麻痺には以下のようなものがあります。

 

 

 

腱損傷

 

通常、腱損傷を受傷すると治療を受けます。しかし、何らかの事情で腱損傷が治療されなかったケースでは、関節可動域は自動運動が採用されます。

 

<参考>
【医師が解説】伸筋腱断裂(手、足)の後遺症|交通事故

 

 

がまんできない程度の痛みが生じる

 

関節を動かすと、がまんできない程度の痛みが生じるために自動運動では可動できないと医学的に判断されるケースでは、関節可動域として自動運動が採用されます。

 

例えば、踵の骨が大きく変形していると、歩くときに踵を地面につけることができないことがあります。このような場合、足首を自動運動で伸ばすのは難しいです。

 

<参考>
【医師が解説】踵骨骨折の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故

 

 

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健側との比較で可動域制限を判定

後遺障害認定において、関節の可動域制限は健側(障害がない側)の可動域と比較して判定されます。例えば、事故の影響で左膝が右膝よりも曲げられなくなった場合、健側の可動域と比較して患側の可動域が50%以下に制限されていると、後遺障害10級が認定されます。

 

 

同一平面上は合算した可動域で判定

後遺障害認定において、同一平面上の可動域は合算して判定されます。例えば、肩関節の場合、屈曲と伸展、外転と内転などの運動方向があり、これらの可動域を合算して評価します。

 

 

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【弁護士必見】可動域測定の後遺障害認定ポイント

器質的損傷が無ければ後遺障害に認定されない

関節の可動域制限が認められて関節機能障害が認定されるためには、可動域制限の原因となる器質的損傷が必要です。例えば、骨が変形して関節面が不整になっているなどの明確な損傷がある場合にのみ、後遺障害が認定されます。

 

よくあるケースが、ほとんど転位の無い上腕骨近位端骨折で高度の関節可動域制限を残す事案です。後遺障害10級10号レベルの可動域制限が残っていても、高率に非該当になります。

 

画像所見と身体所見(関節可動域)の乖離が大きい事案では、12級はもちろんのこと、14級にも認定されないケースが多いです。可動域制限は大きいほど良いのではないことが、よく分かる事例です。

 

このような事案でも、医師意見書で関節可動域が残った理由を主張することが可能なケースはあります。関節可動域でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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症状固定時に可動域測定値が悪くなった事案への反論

症状固定時になって、関節の可動域制限が出現する事案は珍しくありません。保険会社は、恣意的な要素があると判断して、必ずと言ってよいほど訴訟提起します。

 

画像検査で器質的損傷に乏しい事案では反論が難しいケースが多いです。一方、このような事案でも、やり方によっては反論可能な事案が少なくありません。

 

しかし、残念ながら弁護士の力だけ対応するのは非常に困難です。症状固定時の関節可動域でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

<参考>
【日経メディカル】関節可動域制限を治したい!その熱意が後遺障害評価で裏目に

 

 

 

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自動運動による測定値の採用を主張する方法

自賠責実務では、自動運動による測定値の採用を主張せざるを得ないケースがあります。しかし、後遺障害認定基準の原則は他動運動による測定値です。

 

このため、自賠責保険に自動運動による測定値の採用を認めてもらうことは容易ではありません。このようなケースでは、①実臨床での妥当性 ②自動運動を採用する妥当性 の両面で主張する必要があります。

 

 

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後遺障害の可動域測定で弊社ができること

弁護士の方へ

弊社では、交通事故や労災事故の後遺障害認定を成功させるために、さまざまなサービスを提供しております。

 

 

等級スクリーニング

 

現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。

 

等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。

 

等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。

 

 

<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

 

 

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医師意見書

 
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。

 

医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。

 

医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。

 

弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。

 

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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画像鑑定報告書

 

交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。

 

画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。

 

画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。

 

弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。

 

 

<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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後遺障害の可動域測定でお悩みの被害者の方へ

弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。

 

また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。

 

もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。

 

尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。

 

 

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関節機能障害の後遺障害等級は?

後遺障害8級(関節の用を廃したもの)

後遺障害8級は、関節の機能が全く働かない状態を指します。例えば、関節を全く動かせない場合や、関節の可動域が一般の10%以下の場合が該当します。

 

また、人工関節を入れている部位で、健全な部位に比べて可動域が50%以下の場合も含まれます。

 

 

後遺障害10級(関節の機能に著しい障害を残すもの)

後遺障害10級は、関節の機能に著しい障害が残る場合に認定されます。具体的には、肩、肘、手首などの三大関節のうち一つの関節の可動域が事故前の半分以下に制限される状態を指します。

 

 

後遺障害12級(関節の機能に障害を残すもの)

後遺障害12級は、上肢の三大関節(肩、肘、手首)または下肢の三大関節(股関節、膝、足首)のうち、いずれか一つの関節の可動域が正常な可動域の4分の3以下に制限される場合に該当します。

 

 

後遺障害の可動域測定でよくある質問

自動運動と他動運動で関節可動域に差が出る理由は?

自動運動と他動運動で関節可動域に差が出る理由は、主に以下の3つです。

 

  • 痛み
  • 神経麻痺
  • 軟部組織の癒着

 

 

まず、痛みが挙げられます。他動運動では痛みを我慢して関節を動かすため、可動域が広がります。

 

次に、神経麻痺です。神経麻痺により筋力が低下し、自動運動では関節を十分に動かせません。

 

最後に、軟部組織の癒着です。関節周囲の組織が癒着すると、自動運動での可動域が制限されます。

 

 

関節可動域が制限される原因は?

関節可動域が制限される原因は多岐にわたります。主な原因としては、以下のものが挙げられます。

 

  • 骨の変形:骨折や関節炎などで骨が変形すると、関節の動きが制限されます
  • 痛み:関節や周囲の組織に痛みがあると、動かすことが難しくなります
  • 結合組織の変化:関節周囲の結合組織が硬くなることで、可動域が狭くなります
  • 不動:長期間動かさないことで、関節や筋肉が硬直し、可動域が制限されます
  • 筋緊張の亢進:脳卒中や神経障害により筋肉が過度に緊張し、関節の動きが制限されます

 

 

これらの要因が組み合わさることで、関節の可動域が制限されることが多いです。

 

 

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まとめ

 

後遺障害認定では、関節の可動域測定が重要です。測定結果により、後遺障害の等級が決まります。後遺障害が認定されるには、関節の可動域制限の原因となる「器質的損傷」が必要です。

 

例えば、骨が変形して関節が不整になっている場合などです。可動域制限があっても、損傷がない場合は後遺障害が認定されないことが多いです。

 

特に、画像検査と身体の状態に大きな違いがあるケースは非該当になりやすいです。症状固定時に可動域が悪くなった事案は、弁護士だけで反論するのは難しいので、専門医のサポートが必要です。

 

後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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