通勤中や仕事中に交通事故に遭って後遺症が残った際には、労災保険と自賠責保険の両方に後遺障害申請することが可能です。その際には、労災保険と自賠責保険のどちらを先行させるべきなのでしょうか。
本記事は、労災保険と自賠責保険のどちらを先行させる方が良いのかを理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2024/5/9
Table of Contents
労災保険と自賠責保険の違い
労災保険と自賠責保険の目的
労災保険は、働く人が通勤中や仕事中にケガや病気、死亡した時に、その損害を補償する公的な保険です。
自賠責保険は、車やバイクを運転中に他人にケガや死亡をさせた場合の対人賠償を補償する公的な保険です。
労災保険と自賠責保険の対象者
労災保険は、正社員やパート、アルバイト、派遣など、雇用形態に関係なく加入できます。仕事中にケガをしたり死亡した人が対象になります。
自賠責保険は、交通事故に遭ってケガをしたり死亡した人が対象になります。一方、交通事故による他人の所有物や車、建物などへの損害、自分自身のケガには適用されません。
労災保険と自賠責保険は選択できる
仕事中の交通事故は労災保険と自賠責保険を選べる
通勤中や仕事中に遭った交通事故では、労災保険と自賠責保険のどちらか一方から保険金支払いを受け取れます。被害者は、どちらの保険を選択するかを考える必要があります。
労災保険と自賠責保険は併用できない
お互いの補償項目が被る部分は、両方の保険を併用できません。一方、補償項目が被らない部分は、両方の保険を使えます。
<参考>
【医師が解説】労災は使わない方がいいのか?|通勤の交通事故
労災保険と自賠責保険のどちらを先行する?
治療は自賠責保険を優先する
一般的には治療に関しては、自賠責保険を優先するべきです。その理由は「休業補償額」は自賠責保険の方が高額だからです。そして自賠責保険に請求後でも、後から労災保険の休業特別支給金を申請できます。
一方、以下のケースでは労災保険を優先するべきでしょう。
- 自分の過失割合が7割より大きい
- 相手が無保険者または自賠責しか加入していない
- 多発外傷などで長期の治療が必要
<参考>
【日経メディカル】この交通事故診療は自賠責保険か健康保険か
【医師が解説】労災と自賠責の優先順位は?|仕事中の交通事故
後遺障害認定は労災保険を先行する
前述のように、治療費に関しては、自賠責保険を優先するべきです。しかし、後遺障害認定に関しては、労災保険を先行させた方が良いでしょう。その理由は、労災保険の方が後遺障害に認定されやすいからです。
労災保険と自賠責保険は同じ後遺障害認定基準を用いています。しかし、審査方法が全く異なるため、後遺障害認定率が大きく異なります。
このため、まず後遺障害が認定されやすい労災保険で後遺障害認定を受けてから、その結果をもって自賠責保険に後遺障害申請するべきです。
自賠責保険と労災保険は別機関なので、労災保険の後遺障害認定結果は、自賠責保険の審査に直接的な影響はありません。
しかし、労災保険の後遺障害認定結果は、自賠責保険の審査過程にある程度の牽制効果があります。このため、後遺障害認定では労災保険を先行することが王道と言えます。
<参考>
【医師が解説】交通事故の後遺障害|認定確率を上げるポイント
自賠責保険では脊髄不全損傷は非該当になりやすい?
弊社の経験では、労災保険と自賠責保険の後遺障害認定で最も大きな差ができるのは脊髄不全損傷(脊髄不全麻痺)です。労災保険では2級が認定されたのに、自賠責保険では非該当になる事案も珍しくありません。
労災保険と自賠責保険で認定された後遺障害等級に極端な開きのある事案では、脊椎外科専門医による各種医証の精査が必要です。
<参考>
【日経メディカル】脊髄損傷が自賠責保険で非該当となる意外な理由
【日経メディカル】中心性脊髄損傷というアヤシイ傷病名
【医師が解説】中心性脊髄損傷が後遺症認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】非骨傷性頚髄損傷が後遺障害認定されるポイント
通勤中や職務中の交通事故の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
交通事故では、治療に関しては自賠責保険を選択する方が有利なケースが多いです。
一方、後遺障害認定では、労災保険の方が後遺障害に認定されやすいため、労災保険の先行を推奨します。
このため、まず労災保険で後遺障害認定を受けてから、自賠責保険で後遺障害申請するべきでしょう。
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