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【医師が解説】介護事故の種類と訴訟のポイント|医療鑑定

介護事故は、時として重大な結果に至ることがあります。介護事故の中には、介護度が上がって寝たきりになってしまうだけではなく、死亡する事例まで存在します。

 

本記事は、介護事故の種類と、介護事故が発生した際に介護者に責任があるのかを理解するヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2023/2/9

 

 

介護事故とは?

 

介護事故とは、介護の現場で発生すした事故です。事故の大きさや治療が必要だったか否かにかかわらず、介護利用者に被害があると介護事故となります。

 

また、介護事故には、訪問介護などで利用者の所有物を紛失したり、破損してしまった物損事故も含まれます。

 

上記事例の事故発生後、70%以上の方が骨折、19%程の方が合併症などによって亡くなったという報告もあります。

 

 

wheel chair

 

 

介護事故の種類

転倒、転落、滑落

公益財団法人 介護労働安定センターが、平成30年に公表した「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書によると、介護施設内で発生する重大事故の65.6%は転倒、転落、滑落でした。

 

特に、転倒・転落事故では全例が骨折しており、後方病院へ搬送後に合併症で死亡するケースもありました。

 

 

<参考>
「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書

 

 

で誤嚥、誤飲、むせ込み

介護施設内で発生する2番目に多い重大事故は、誤嚥・誤飲・むせ込みで全体の13%でした。

 

誤嚥、誤飲、むせ込み事例では、介護施設内で意識消失して後方病院へ搬送された後に死亡するケースもありました。

 

介護施設内で医療スタッフによって、タッピング・ハイムリック法・吸引などを実施したにもかかわらず、回復が困難なケースが多く見られました。

 

 

介護事故の傷病分類

 

重大事故という特殊性はあるものの、公益財団法人 介護労働安定センターの調査で報告された傷病の大半は骨折でした。

 

  • 骨折:70.7%
  • 死亡:19.2%
  • あざ・腫れ・擦傷・裂傷:2.5%
  • 脳障害:1.1%

 

 

介護事故の責任は?

安全配慮義務違反の有無が問題

仮に、介護施設に入所中であっても、職員が一日中1対1対応で見守ることは現実的ではありません。

 

このため、介護者が安全配慮義務違反に該当するのは、介護事故の危険を具体的に予見でき、かつ事故の回避措置を取らなかった場合に限られます。

 

 

介護事故の発生を予見できたのか(予見可能性)

予見可能性とは、注意すれば介護事故が発生することを予測できた可能性です。介護事故での主な判断要素は以下のとおりです。

 

  • 年齢
  • 身体能力
  • 認知能力
  • 転倒歴や誤嚥歴

 

 

利用者が転倒したり誤嚥する可能性があるのに、転倒予防や誤嚥予防しなかった場合には、介護者に過失があると認定される可能性があります。

 

高齢で麻痺が残っている認知症の利用者であれば、転倒や誤嚥の可能性はあると判断されます。

 

一方、若年で身体能力に問題の無い人であれば、安全配慮義務は無かったと判断されます。

 

 

転倒や誤嚥の回避措置を取ったのか(回避可能性)

回避可能性とは、転倒や誤嚥防止策を実施することで、介護事故が発生しないようにできた可能性です。

 

ガイドラインに準拠した対策が講じられていたにもかかわらず介護事故が発生した場合には、介護者の責任は問えないケースが多いです。

 

介護施設で実施される、転倒や誤嚥などの介護事故防止策の具体例は、以下のごとくです。

 

転倒の回避措置の具体例

 

  • 離床センサーマットの設置
  • ベッド柵の設置
  • 離床の際のナースコール指示

 

 

誤嚥の回避措置の具体例

 

  • 体調を毎日確認する
  • 食事形態の適切さを普段から確認する
  • 嚥下低下の場合、開始食はとろみ食
  • 複数の利用者を同時に介助しない
  • 介助体制と他のスタッフへの連携を強化

 

 

介護者に責任の無いケース

 

利用者が予想外の行動をしたり、利用者が介助不要な行為をしていた場合には、介護者の責任は問えないケースが多いです。

 

 

paralysis

 

 

介護事故で発生しやすい外傷

大腿骨近位部骨折

介護事故で発生しやすい外傷の筆頭は大腿骨近位部骨折です。他の部位の骨折とは異なり、大腿骨近位部骨折では早期に手術を施行しても、身体能力が低下してしまう可能性があります。

 

転倒して受傷した大腿骨近位部骨折のために、介護度がアップしてしまい寝たきりになる事案は多いです。骨折をきっかけにして身体能力が低下することは、たくさんの医学論文でも記載されており、医学的にも周知の事実です。

 

 

<参考>
【医師が解説】大腿骨骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故

 

 

腰椎圧迫骨折(胸椎圧迫骨折)

腰椎圧迫骨折(胸椎圧迫骨折)も、介護事故で発生しやすい外傷のひとつです。大腿骨近位部骨折と同様に、骨折をきっかけにして身体能力が低下してしまう可能性があります。

 

 

<参考>
【医師が解説】胸腰椎圧迫骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

急性硬膜下血種

転倒した際に頭部打撲すると、急性硬膜下血腫を受傷することがあります。急性硬膜下血腫は、続発する二次的な病態の程度にもよりますが、死亡率が高い病態です。

 

 

<参考>
【医師が解説】急性硬膜下血腫が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

acute subdural hematoma

 

 

【弁護士必見】介護事故解決のポイント

実臨床に即した安全配慮義務違反の有無

介護事故が発生した状況や、転倒や嚥下防止対策の実施状況が適正であったか否かの判断には、介護記録の精査がキーとなります。

 

これらの記録の中でも、特に重要度の高いのは介護保険の認定調査票です。介護保険の認定調査票には、利用者の身体能力や認知能力の情報がたくさん記載されています。

 

 

既往症による素因減額

弊社が取り扱ってきた事案では、骨折では受傷前からの骨粗鬆症の程度が、急性硬膜下血種では抗凝固療法の有無などの既往症が、素因減額に該当するのかについて争われるケースが多いです。

 

介護事故で発生した外傷による後遺障害でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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まとめ

 

介護事故では、介護者の安全配慮義務違反に該当するのは、転倒や誤嚥などの介護事故の危険を具体的に予見でき、かつ回避措置を取らなかった場合に限られます。

 

介護事故で発生しやすい外傷には、大腿骨近位部骨折、腰椎圧迫骨折、急性硬膜下血腫があります。

 

骨折では受傷前からの骨粗鬆症の程度が、急性硬膜下血種では抗凝固療法の有無などの既往症が、素因減額に該当するのかについて争われるケースが多いです。

 

 

 

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