肝硬変や慢性腎不全での血液透析症例など、既往歴に重い疾患を抱えている方が事故に遭った場合、既往症による素因減額が問題になるケースがあります。
素因減額という概念は医学的なものではありません。もともと医学は治療を目的として発展した学問なので、日常診療で基礎疾患や既往歴の素因減額割合が問題になることは無いからです。
しかし、訴訟や示談交渉の場では、頻回に素因減額が登場します。そして素因減額は医学的な考え方ではないにも関わらず、医学的エビデンスが求められることもあります。
素因減額に医学的なエビデンスを求めることには無理があります。私たちは、そのような前提で個々の事案に対応していますが、先日有意義な文献を拝見しました。
それは、大阪大学法医学教室の元教授・若杉長英医師が提唱された、若杉方式による外因の関与程度判定基準です。
若杉の判定基準では、外因の関与程度をA~Gに分類して、それぞれの関与割合を数字で表記しています。
例えば、分類Cでは外因の関与程度は50%であり、クリアカットに具体的数字を求めることが可能です。
分類の基準も比較的分かりやすいので、若杉の判定基準にしたがって素因減額の割合を求めることが可能です。
これまで素因減額の数字は算出するために、各疾患のガイドラインを紐解いて生命予後から判断していましたが、今後は適応があれば若杉の判定基準を導入したいと思います。