交通事故で負った高次脳機能障害が、自賠責保険の後遺障害に認定されるためには、脳損傷に起因する認知障害全般の存在を証明する必要があります。
認知障害の程度は、各種の神経心理学的検査で評価します。このうち、レーヴン色彩マトリックス検査は、失語症および認知症の検査として、世界中で広く利用されています。
本記事は、レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)を理解することで、高次脳機能障害が後遺障害認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/10
Table of Contents
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指ます。高次脳機能障害の後遺症には、失語症・失行症・失認症などの巣症状のほか、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害が後遺症認定されるポイント|交通事故
神経心理学的検査とは
神経心理学的検査の種類
神経心理学的検査とは、高次脳機能障害や認知症などで認められる知能・記憶・言語などの認知機能障害を定量的に評価するための検査です。神経心理学的検査を大別すると、以下の項目に分類されます。
- 知能検査
- 言語機能検査
- 記憶検査
- 遂行(前頭葉)機能検査
- 人格特定評価法
- 上記以外の心理検査ではない検査
<参考>
【医師が解説】神経心理学的検査は高次脳機能障害の等級認定ポイント
神経心理学的検査の知能検査
神経心理学的検査のうち、知能検査には以下の検査があります。
- ミニメンタルステート検査 (MMSE)
- 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
- ウェクスラー成人知能検査 (WAIS)
- レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)
- 幼児や児童用のWPPSIとWISC
<参考>
【医師が解説】MMSEの認知症でのカットオフ値は?|遺言能力鑑定
【医師が解説】長谷川式認知症スケールの解釈|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEと長谷川式認知症スケールの違い|遺言能力鑑定
【医師が解説】WAISとWMS-Rは高次脳機能障害の等級認定ポイント
レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)とは
レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)の概要
レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)とは、言語性課題を行えない失語症や認知症患者の知的能力を測定する簡易知能検査です。
レーヴン色彩マトリックス検査は、言語を介さずに答えられるため、被検者に負担をかけずに知的能力を測定できます。
極めて簡単かつ短時間で実施可能で、採点や結果評価に難しい分析が不要なため、スクリーニング検査として世界中で広く利用されています。
レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)の実施法
上のような6つの選択図案の中から、標準図案の欠如部に合致する図を1つだけ被検者に選ばせます。この問題の正解は3です。このような問題が、全部で36問あります。
レーヴン色彩マトリックス検査 (RCPM)のカットオフ値
24点以下では知能低下と判定
レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)のカットオフ値は24点以下(36点満点)で、それ以下では知能低下があると判定されます。
レーヴン色彩マトリックス検査の平均得点
レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)の平均点は以下のごとくです。
45~49 歳 34.0±2.0
50~59 歳 34.2±2.1
60~69 歳 29.2±5.4
70~79 歳 26.9±5.4
80~89 歳 24.9±5.3
高次脳機能障害の評価バッテリー
高次脳機能障害の神経心理学的検査
高次脳機能障害の神経心理学的検査には、全般的認知機能をみる検査と、記憶や前頭葉機能といった個別の認知機能を評価する検査に分けられます。
全般的認知機能を評価する検査
知能検査
- ミニメンタルステート検査 (MMSE)
- 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
- ウェクスラー成人知能検査 (WAIS-Ⅳ)
- レーブン色彩マトリックス検査(RCPM)
- 幼児や児童用のWPPSIとWISC
記憶検査
- ウェクスラー記憶検査(WMS-R)
- リバーミード行動記憶検査 (RBMT)
- レイ複雑図形検査 (ROCFT)
- レイ聴覚性言語学習検査 (RAVLT)
個別の認知機能を評価する検査
言語機能検査
注意力検査
遂行(前頭葉)機能検査
推奨されている高次脳機能障害の評価バッテリー
高次脳機能障害の評価では、一般的に以下のような神経心理学的検査の組み合わせ(評価バッテリー)が推奨されています。
全般的認知機能検査
記憶機能検査
ウェクスラー記憶検査(WMS-R)
リバーミード行動記憶検査 (RBMT)
注意機能検査
TMT (trail making test) 線引きテスト
遂行機能検査
遂行機能の行動評価法 (BADS)
ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)
社会的行動検査
認知-行動障害尺度(TBI-31)
【弁護士必見】高次脳機能障害の後遺障害認定ポイント
高次脳機能障害の知能検査では、ミニメンタルステート検査 (MMSE)、ウェクスラー成人知能検査 (WAIS)、レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)などがあります。
一般的には、ミニメンタルステート検査 (MMSE)とウェクスラー成人知能検査 (WAIS)が実施されますが、言語性課題を行えない失語症患者ではレーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)が選択されます。
<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害の後遺症が認定されるコツ|交通事故
【日経メディカル】交通事故における曖昧な高次脳機能障害の定義
【日経メディカル】交通事故後の高次脳機能障害を見逃すな!把握しにくい2つの理由
まとめ
高次脳機能障害の診断と評価に用いられる神経心理学的検査のうち、知能検査の代表的なものは、ミニメンタルステート検査 (MMSE)、ウェクスラー成人知能検査 (WAIS)、レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)です。
このうち、レーヴン色彩マトリックス検査は、言語性課題を行えない失語症や認知症患者の知的能力を測定する際に選択されます。
レーヴン色彩マトリックス検査のカットオフ値は24点以下(36点満点)で、それ以下では知能低下があると判定されます。
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