介護施設や病院では転倒事故が発生しやすいです。転倒事故の中には、介護度が上がって寝たきりになってしまうだけではなく、死亡する事例まで存在します。入所中や入院中の転倒事故は、介護施設や病院に責任はあるのでしょうか。
本記事は、転倒事故が発生した際に、介護施設や病院に責任があるのかを理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/16
Table of Contents
介護施設や病院で発生した転倒事故の責任は?
安全配慮義務違反の有無が問題
介護施設や病院内で、職員が24時間マンツーマンで見守ることは不可能です。このため、介護施設や病院が安全配慮義務違反に該当するのは、転倒の危険を具体的に予見でき、かつ転倒の回避措置を取らなかった場合に限られます。
転倒の発生を予見できたのか(予見可能性)
予見可能性とは、注意すれば転倒が発生することを予測できた可能性です。転倒事故における主な判断要素は以下のとおりです。
- 年齢
- 身体能力
- 認知能力
- 転倒歴
患者が転倒する可能性があるのに、転倒予防しなかった場合には、介護施設や病院に過失があると認定される可能性があります。
高齢で麻痺が残っている認知症の患者さんであれば、転倒可能性はあると判断されます。一方、若年で歩行能力に問題の無い人であれば、安全配慮義務は無かったと判断されます。
転倒の回避措置を取ったのか(回避可能性)
回避可能性とは、転倒防止策を実施することで転倒しないようにできた可能性です。介護施設や病院で実施される転倒防止策の具体例は以下のごとくです。
- 離床センサーマットの設置
- ベッド柵の設置
- 離床の際のナースコール指示
これら以外にもいろいろな対策が、転倒・転落防止対策マニュアル(都立病院医療安全推進委員会)などで紹介されています。
ガイドラインに準拠した対策が講じられていたにもかかわらず転倒した場合には、介護施設や病院の責任は問えないケースが多いです。
介護施設や病院に責任の無いケース
被害者が予想外の行動をしたり、被害者が介助不要な行為をしていた場合には、介護施設や病院の責任は問えないケースが多いです。
介護施設や病院の転倒事故で発生しやすい外傷
大腿骨近位部骨折
介護施設や病院の転倒事故で発生しやすい外傷の筆頭は大腿骨近位部骨折でしょう。他の部位の骨折とは異なり、大腿骨近位部骨折では早期に手術を施行しても、身体能力が低下してしまう可能性があります。
転倒して受傷した大腿骨近位部骨折のために、介護度がアップしてしまい寝たきりになる事案は多いです。骨折をきっかけにして身体能力が低下することは、たくさんの医学論文でも記載されており、医学的にも周知の事実です。
<参考>
【医師が解説】大腿骨骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故
腰椎圧迫骨折(胸椎圧迫骨折)
腰椎圧迫骨折(胸椎圧迫骨折)も、転倒事故で発生しやすい外傷のひとつです。大腿骨近位部骨折と同様に、骨折をきっかけにして身体能力が低下してしまう可能性があります。
<参考>
【医師が解説】胸腰椎圧迫骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故
急性硬膜下血種
転倒した際に頭部打撲すると、急性硬膜下血腫を受傷することがあります。急性硬膜下血腫は、続発する二次的な病態の程度にもよりますが、死亡率が高い病態です。
<参考>
【医師が解説】急性硬膜下血腫が後遺症認定されるポイント|交通事故
【弁護士必見】介護施設や病院の転倒事故解決のポイント
実臨床に即した安全配慮義務違反の有無
転倒事故が発生した状況や、転倒・転落防止対策の実施状況が適正であったか否かの判断には、看護記録や介護記録の精査がキーとなります。
これらの記録の中でも、特に重要度の高いのは介護保険の認定調査票です。介護保険の認定調査票には、患者さんの身体能力や認知能力の情報がたくさん記載されています。
既往症による素因減額
弊社が取り扱ってきた事案では、骨折では受傷前からの骨粗鬆症の程度が、急性硬膜下血種では抗凝固療法の有無などの既往症が、素因減額に該当するのかについて争われるケースが多いです。
転倒事故で発生した外傷による後遺障害でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
転倒事故では、介護施設や病院が安全配慮義務違反に該当するのは、転倒の危険を具体的に予見でき、かつ転倒の回避措置を取らなかった場合に限られます。
介護施設や病院の転倒事故で発生しやすい外傷には、大腿骨近位部骨折、腰椎圧迫骨折、急性硬膜下血腫があります。
骨折では受傷前からの骨粗鬆症の程度が、急性硬膜下血種では抗凝固療法の有無などの既往症が、素因減額に該当するのかについて争われるケースが多いです。
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