交通事故の「むちうち」の症状は、重いものから軽いものまで千差万別です。軽いむちうち症状なら、病院に行かなくても良いのでしょうか?
結論から申し上げると、軽いむちうち症状であっても、受傷してからすぐに医療機関を受診する方が良いです。
本記事は、現役の整形外科医が、軽いむちうち症状でも病院受診するべき理由について説明しています。
最終更新日: 2024/5/11
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むちうち(頚椎捻挫)の症状
むちうちの症状は多彩です。頚部痛、肩こりなどの首を中心にした症状がメインですが、以下のような症状があります。
- 首の痛み
- 肩こり
- 上肢のしびれ、痛み、脱力感
- 頭痛
- めまい
- 嘔気
- 耳鳴り
- 下肢のしびれ
- 動悸
- 全身倦怠感
私たち医師が日常診療していて最もよく見かける症状は、首の痛み、肩こり、上肢のしびれや痛み、頭痛の4つです。
<参考>
むちうちの症状が出るまでの期間
受傷当日から翌日が最も多い
むちうちの症状が出るまでの期間は、受傷当日から翌日にかけてが最も多いです。しかし、症状の程度は、それほど強くないケースが多いのが特徴です。
むちうち症状が強くなるのは翌日以降
症状が強くなるのは事故直後ではなく、数時間~1日経ってからのケースが多いです。
交通事故の直後には、骨の周りにある軟部組織の炎症がそれほど強くありません。このため、痛みなどのむちうち症状をあまり感じないのです。
しかし、事故から時間が経つにつれて、軟部組織の炎症は強くなっていきます。事故翌日に症状が強くなりがちなので注意が必要です。
ほとんどは受傷後3日以内に発症する
むちうちの症状は、受傷してから3日(72時間)以内に発症するケースが大半です。さすがに受傷してから3日間も無症状なのは考えにくいです。
それ以降に発症した事例では、明らかに交通事故と因果関係があると言えるケースはほとんど経験したことがありません。
受傷してから72時間という数字は、ある有名な医学論文に出てくる期間です。そして実臨床の肌感覚とも、おおむね合致します。
保険会社は、この論文を根拠として遅れて発症したむちうちの症状は、事故とは無関係と主張します。
医学的には真っ当な主張なので、反論することは難しいのが現実です。
<参考>
【医師が解説】むちうち症状が出るまでの期間|交通事故の後遺症
軽いむちうち症状を放置してはいけない3つの理由
軽いむちうち症状を放置してはいけない理由には、以下の3つがあります。
- 症状が強くなるのは翌日以降
- 事故との因果関係を否定される可能性がある
- むちうち後遺症が残っても後遺障害に認定されない
症状が強くなるのは翌日以降
むちうち症状が強くなるのは翌日以降のケースが多いです。このため、交通事故当日には症状が軽くても、医療機関を受診する方が望ましいです。
医療機関では、症状に応じて痛み止め(消炎鎮痛剤)を処方されます。受傷早期から消炎鎮痛剤を飲み始めると、軟部組織の炎症を抑えられて治療期間を短くできる可能性があります。
事故との因果関係を否定される可能性がある
例えば、交通事故に遭ってから2週間ほど放置していた場合には、保険会社から事故と無関係な治療とみなされる可能性があります。
日常診療では、このような患者さんが意外なほど多いと感じています。しかし、事故から2週間も受診していない事実は変えようがありません。事故に遭ったら、一刻も早く医療機関を受診しましょう。
むちうち後遺症が残っても後遺障害に認定されない
むちうちをしっかり治療しても、首の痛みなどの後遺症が残る可能性があります。
その場合には、自賠責保険に後遺障害申請しますが、受傷してから3日以内に受診していないと、後遺障害に認定される可能性が著しく低下します。
自賠責保険の後遺障害認定の観点からも、交通事故に遭ったらすぐに医療機関を受診する必要があります。
<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫(むちうち)の後遺症認定のヒント|交通事故
むちうちで病院を受診するべき時期
受傷当日が望ましい
軽いむちうち症状を放置してはいけない3つの理由で説明したように、むちうちで病院を受診する時期は、受傷当日から3日目までが必須です。診療時間内であれば、受傷当日が望ましいでしょう。
夜間や祝祭日の事故では翌日
夜間や祝祭日の事故の場合には、軽い症状なら救急外来を受診するほどではありません。しかし、翌日には必ず受診するようにしましょう。
症状が強い場合には救急外来
むちうち症状が強い場合には、夜間や祝祭日の事故であっても救急外来を受診せざるを得ないでしょう。
むちうち症状の治療期間
むちうちの治療期間はさまざまです。短いケースでは1~2週間で症状が軽快する場合もあります。
一般的には、1~3ヶ月の治療期間が必要なことが多いです。中には、6ヶ月しても症状が残ってしまうケースもあります。
このような場合には、自賠責保険に後遺障害を申請することになります。しかし、後遺障害に認定される可能性は約5.5%と極めて低いのが現状です。
このため、後遺障害申請に際しては細心の注意が必要です。後遺障害申請は、加害者側の任意保険会社に依頼する事前認定が一般的です。
しかし、後遺障害の認定確率を上げるためには、弁護士に依頼して被害者請求する方が望ましいでしょう。
<参考>
【医師が解説】交通事故の後遺障害|認定確率を上げるポイント
むちうち治療は整形外科と整骨院(接骨院)どちらがよい?
整形外科が圧倒的に有利
単純比較であれば、整形外科に通院するべきです。医学的にも、自賠責保険の後遺障害認定確率からも、整形外科への通院が圧倒的に有利です。
しかし、整形外科は医療機関なので数が少なく、診療時間が短いです。このため、忙しい人では通院しにくいケースも考えられます。
整形外科が近くに無かったり、診療時間内の通院が難しい場合には、整骨院(接骨院)での施術も選択肢のひとつです。
整骨院(接骨院)でも整形外科通院が必要
整骨院(接骨院)に行く場合には注意点があります。それは整形外科への通院も併用することです。
整骨院(接骨院)のみでは、保険会社から打ち切り対象になりやすいです。また後遺症が残ったとしても、自賠責保険で後遺障害に認定される可能性はゼロです。
<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
まとめ
軽いむちうち症状であっても、受傷してからすぐに医療機関を受診する方が良いです。その理由は、以下の3点です。
- 症状が強くなるのは翌日以降
- 事故との因果関係を否定される可能性がある
- むちうち後遺症が残っても後遺障害に認定されない
むちうちで病院を受診するべき時期は、受傷当日が望ましいです。夜間や祝祭日の事故では翌日、症状が強い場合には救急外来もやむを得ないでしょう。
むちうち症状の治療期間は、1~2週間で症状が軽快する場合もありますが、1~3ヶ月の治療期間が必要なケースが多いです。
むちうちの治療は、整形外科への通院が圧倒的に有利です。やむを得ず、整骨院(接骨院)に行く場合にも、整形外科への通院も併用しましょう。
むちうちの治療をしっかり行ったにもかかわらず、後遺症が残るケースは珍しくありません。自賠責保険の後遺障害が非該当になってお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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