交通事故から数年後に後遺症が出ることはあるのでしょうか。もし後遺症が出た際にはどうすれば良いのでしょうか?
本記事は、現役の整形外科医が、交通事故から数年してから後遺症が出てしまった場合の対応方法を、分かりやすくご紹介します。
最終更新日: 2024/5/13
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骨折は10年前の事故の後遺症が出る可能性あり
背骨の骨折や手足の関節内骨折では、事故から数年以上経過してからでも後遺症が出る可能性があります。
その理由は、以下のように背骨の骨折と手足の関節内骨折で異なります。
手足の関節内骨折で10年前の事故の後遺症が出る理由
肩、肘、手首、指、股関節、膝、足首などの関節の骨折では、関節面が段差が残ったまま骨癒合するケースがあります。
関節面の段差が残ると、関節の噛み合わせが悪くなって、経時的に変形性関節症を併発するケースが多いです。
このため、交通事故から数年以上経過してからでも後遺症が出る可能性はあります。
<参考>
【医師が解説】関節内骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故
背骨の骨折で10年前の事故の後遺症が出る理由
背骨の骨折では、関節内骨折とは別の理由で、事故から数年してから後遺症が出る可能性があります。
背骨の骨折の代表は、椎体が潰れてしまう圧迫骨折です。圧迫骨折を受傷すると、背骨の並び(脊柱アライメント)が後方凸になってしまいます。いわゆる「腰が曲がった」状態ですね。
腰が曲がった状態が続くと、更に他の背骨に圧迫骨折が発生しやすくなる悪循環に陥ります。
更に、骨折した背骨の前後の骨に過度のストレスがかかることで、椎間板や椎間関節の変性が進んで腰痛が出やすくなります。
<参考>
【日経メディカル】圧迫骨折の「後遺障害」はあるのに「後遺症」はない?
【日経メディカル】抜釘のタイミングで圧迫骨折の後遺障害の等級が変わる?
【医師が解説】圧迫骨折が後遺障害認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】脊柱変形障害や運動障害が後遺障害認定されるポイント
むちうちの後遺症が事故から10年して出る可能性は無い
むちうちの主な後遺症
むちうちの後遺症は様々です。主に首を中心にする頚部痛や肩こりがよく見られますが、他にも次のような症状があります。
- 首の痛み
- 肩こり
- 上肢のしびれ、痛み、脱力感
- 上肢の脱力感
- 頭痛
- めまい
- 嘔気
- 耳鳴り
- 下肢のしびれ
- 動悸
- 全身倦怠感
日常診療において、医師が最もよく見かける症状は、首の痛み、肩こり、上肢のしびれや痛み、頭痛の4つです。
<参考>
むちうちの症状が出るまでの期間
受傷当日から翌日にかけてが最も多い
むちうちの症状が出るまでの期間は、受傷当日から翌日にかけてが最も多いです。
症状が強くなるのは翌日以降
ここで注意するべき点があります。それは、症状が強くなるのは事故直後ではなく、数時間~1日経ってからのケースが多いことです。
具体的には、事故当初は首の違和感が少しある程度だったのに、翌日起きると首が動かなくなっていたというパターンです。
このような患者さんを診るのは日常茶飯事です。むちうちの症状は、当日よりも事故翌日の方が強くなりがちなのには注意が必要です。
ほとんどのケースは受傷後72時間以内に発症する
むちうちの症状は、受傷してから3日(72時間)以内に発症するケースが大半です。さすがに受傷してから3日間も無症状なのは考えにくいです。
それ以降に発症した事例では、明らかに交通事故と因果関係があると言えるケースはほとんど経験したことがありません。
受傷してから72時間という数字は、ある有名な医学論文に出てくる期間です。そして実臨床の肌感覚とも、おおむね合致します。
保険会社は、この論文を根拠として遅れて発症したむちうちの症状は、事故とは無関係と主張します。
医学的には真っ当な主張なので、反論することは難しいのが現実です。
むちうち後遺症が事故から数年して出ることはない
むちうちは事故当日にはあまり症状が無く、翌日以降に痛みが強くなる傾向にあります。
このように書くと、事故から1ヶ月してからでも発症する可能性があると思うかもしれません。
しかし実際には、交通事故から1ヶ月以上経過してから首の痛みや手足のしびれが出てきた場合は、事故とは無関係の私病です。
もちろん、交通事故から数年経過してから、むちうちの症状が出ることもありません。数年してから発症したものは私病です。
【弁護士必見】10年前の事故の後遺症を主張する方法
事故との因果関係証明が必須
一般的に示談終了後の治療費請求は困難であることは周知の通りです。しかし、交通事故との因果関係を証明できれば可能性はゼロではありません。
交通事故との因果関係を証明するには、受傷時から最近までの経時的な画像検査が必要です。
特に下肢の関節内骨折に関しては、受傷後1年程度は大した所見が無くても、数年すると変形性関節症が高度に進展する例は珍しくありません。
一方、背骨の骨折(圧迫骨折)に関しては、数年程度では脊柱アライメントは変化しないケースが多いです。
医師意見書が必須
交通事故から数年経過して発症した後遺症と事故との因果関係証明は難しいです。受傷時から最近までの経時的な画像検査を比較するだけでは不充分だからです。
このような特殊な事案では医師意見書を作成して、手足の関節内骨折や背骨の骨折の後遺症が事故から数年してから発症した考察を述べる必要があります。
<参考>
【医師意見書】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
【弊社ホームページ】意見書説明サイト
数年経過して発症した後遺症と事故との因果関係証明でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
背骨の骨折や手足の関節内骨折では、事故から10年経過してからでも後遺症が出る可能性があります。
一般的に示談終了後の治療費請求は困難ですが、交通事故との因果関係を証明できれば可能性はゼロではありません。
交通事故との因果関係を証明するには、受傷時から最近までの経時的な画像検査と医師意見書が必要です。
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