MRI検査は、むちうちをはじめとする交通事故で発生する外傷に極めて有用です。MRI検査を実施していない事案では、後遺障害に認定される可能性が低くなるケースもあるほどです。
しかし、閉所恐怖症のためにMRI検査を実施できないケースを散見します。そのような閉所恐怖症の方の救いになると喧伝されているのがオープン型MRIです。
オープン型MRIは、通常のトンネル状の機器と異なり横が開放されているため、閉所恐怖症の人でも実施可能なケースが多いです。
しかし、オープン型MRIを推奨できません。本記事は、閉所恐怖症であってもオープン型MRIを避けるべき理由が分かるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/11/5
Table of Contents
オープン型MRIとは
MRI検査が怖い理由
通常のMRIでは、トンネル状の装置の中に体全体がすっぽり入って検査します。狭い空間にもかかわらず、独特の大きな機械音がするため、閉所恐怖症の人には辛い検査です。
<参考>
MRIを乗り切る方法とは?狭い空間でのパニックを防止しよう!
オープン型MRIと通常MRIの違い
一方、オープン型MRIは、患者さんを上下から挟むようにして検査するタイプの装置です。横方向が開放されているため、閉所恐怖症の人でも実施可能なケースが多いです。
<参考>
【医師が解説】むちうちのMRIが後遺症認定で必要な理由|交通事故
永久磁石で磁場を発生させる
通常のトンネル型MRIでは、超伝導電磁石で強力な磁場を発生させます。一方、オープン型MRIは、永久磁石で磁場を発生させます。
この磁場の発生させ方の違いによって、開放的な装置が可能となります。
オープン型MRIのメリット
オープン型MRIには以下のようなメリットがあります。
- 閉所恐怖症でも可能なケースが多い
- 子供に付き添える施設がある
閉所恐怖症でも可能なケースが多い
通常のトンネル型MRIは、人の身体がぎりぎり入る程度の狭い空間に10~30分ほど横たわっている必要があります。
閉所恐怖症の無い人であっても、決して心地よい体験ではありません。閉所恐怖症の人は、通常のトンネル型MRIを実施できない例も散見します。
ところが、オープン型MRIでは、開口部が広いため閉所恐怖症でも実施可能なケースが多いメリットがあります。
子供に付き添える施設がある
オープン型MRIは開口しているため、子供の検査に際に親が付き添うことも可能です。目に見える範囲に親が居ると安心するため、MRI検査を受けられる可能性が上がります。
通常のトンネル型MRIでは、子供の検査の際には鎮静剤を服用してもらうケースさえあるので、大きなメリットと言えるでしょう。
通常のトンネル型MRIであっても、物理的には付き添い可能です。しかし、子供の視界からは親が付き添っていることが見えないため、付き添ってもあまり意味がありません。
オープン型MRIのデメリット
メリットも多いオープン型MRIですが、以下のようなデメリットもあります。
- 画質が低い
- あまり普及していない
画質が低い
オープン型MRIの最大のデメリットは画質の低さです。その理由は、使用する磁石の種類による磁場の強さの違いです。
前述のように、オープン型MRIは永久磁石ですが、通常のトンネル型MRIは超伝導電磁石です。通常のトンネル型MRIは、発生できる磁場が圧倒的に強いです。
このため、通常のトンネル型MRIの画質は、オープン型MRIよりも格段に上です。画質の違いは、診断能力に直結します。このため、実臨床ではオープン型MRIが標準になる可能性は低いです。
あまり普及していない
オープン型MRIを導入している施設のほとんどはクリニックです。病院でオープン型MRIを導入しているのは、術中に使用する等の特殊な事情に限られます。
その理由は、前述のようにMRIの画質の違いのためです。オープン型MRIは画質が低すぎるため、通常のトンネル型MRIと比べて、見落としの危険性が高いです。
病院でMRI検査を実施する目的は、スクリーニングではなく正確な診断のためです。このため、画質の低いオープン型MRIではなく通常のトンネル型MRIを導入する施設が大半なのです。
病院にオープン型MRIを導入するメリットはほどんど無く、検査で得られる情報量も限られるため、あまり普及していないのが実情です。
オープン型MRIの注意点
磁場の弱いオープン型MRI検査であっても、体内に下記のような金属が入っている人も注意が必要です。
- 心臓ペースメーカー
- 2000年より前の脳動脈クリップ
- 体内埋め込み装置(ICD・人工内耳・神経刺激装置)
- 可動型義眼
一方、交通事故被害者に多い、骨折の手術で使用したチタン製のプレートやスクリューは問題ありません。また人工関節が入っていてもMRIを撮像することができます。
【弁護士必見】交通事故でオープン型MRIを避けるべき理由
異常所見を検出できない事案が多発
自賠責保険では、12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に認定されるためには、MRI検査が必須と言われています。
<参考>
【医師が解説】むちうちのMRIが後遺症認定で必要な理由|交通事故
しかし、オープン型MRIを受けると、逆に後遺障害に認定される確率が下がる可能性があるので注意が必要です。その理由は画質の低さです。
オープン型MRIは画質が低いため、よほど大きな損傷以外は異常所見を検出できないケースが多いのです。
通常のトンネル型MRIでなら容易に検出される椎間板ヘルニア、腱板断裂、TFCC損傷などが、オープン型MRIでは検出されない可能性があります。
<参考>
後遺障害の認定確率が下がる
逆に正常所見であっても異常所見のようにみえるケースさえあります。このため、自賠責保険はオープン型MRIなどの低画質なMRIの所見は異常無しと判断する傾向にあります。
オープン型MRIを施行されたがために非該当になるという本末転倒なことが多発しているのです。せっかくMRI検査を実施しても、審査側(自賠責保険)から相手にされなければ話になりません。
このため、弊社ではオープン型MRIではなく、通常のトンネル型MRIで検査を受けることを強く推奨しています。
まとめ
閉所恐怖症の人にとって、MRI検査が怖い気持ちは理解できます。開口部の広いオープン型MRIは、閉所恐怖症の人でも実施できる検査と言われています。
しかし、交通事故では安易にオープン型MRIを実施するべきではありません。後遺症が残っていても、自賠責保険では後遺障害に認定される確率が下がってしまうからです。
オープン型MRIを選択する前に、その他の閉所恐怖症対策を検討することをお勧めします。
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