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むちうち後遺障害12級、14級のポイント|交通事故の医療鑑定

むちうち(頚椎捻挫)は、交通事故で発生する外傷でもっとも多い外傷です。むちうちは後遺症を残しやすい外傷として知られています。

 

むちうちで残った頚部や手の痛み・しびれなどの症状は、後遺障害等級の12級もしくは14級に認定される可能性があります。

 

本記事は、むちうちの後遺症が12級もしくは14級に後遺障害等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日: 2024/9/8

 

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むちうち(頚椎捻挫)とは

 

むちうち(頚椎捻挫)は、私たち医師が交通事故診療で最も目にすることの多い外傷です。むちうちは正式な医学名称ではありません。正式な傷病名は、外傷性頚部症候群もしくは頚椎捻挫です。

 

「むちうち」の語源は、まだ自動車にヘッドレストが無かった時代に、追突事故が発生すると首が鞭(むち)のようにしなって受傷したためと言われています。

 

現在ではヘッドレストの無い自動車は存在しないので、いわゆる鞭のように激しく首がしなることはありません。しかし、当時普及した俗称は、病態を的確に捉えているため、慣用的に使われている状況です。

 

 

<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫(むちうち)の後遺症認定のヒント|交通事故

 

 

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むちうちでは仕事を何日休む?

 

意外なことに、医学的には頚椎捻挫(むちうち)で休業は推奨されていません。「むちうちでは受傷後2週間は安静にする」「むちうちでは受傷後2週間は仕事を休む」などの記事が散見されますが、医学的には間違いです。

 

長期間にわたる安静や休業は、むしろ社会復帰を遅らせる要因になります。このため、私たち整形外科医は、できる範囲で仕事することを推奨しています。

 

もちろん、重い症状の患者さんもいらっしゃるので、ある程度の安静や休業はやむを得ません。しかし、数ヶ月におよぶ休業は、医学的に証明できないことを知っておいて損はないと思います。

 

実務的に言っても、数ヶ月に及ぶ長期休業は、保険会社を過度に刺激するため要注意です。休業の必要性を医学的に証明できないので、訴訟になっても認定されない可能性が高いと考えておくべきでしょう。

 

 

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むちうちは全治何ヶ月?

 

むちうちが全治するまでの期間は、2~3ヶ月が平均的です。一方、長い場合には4~6ヶ月にも及びます。

 

6ヶ月以上治療しても症状が良くならないケースでは、症状固定して後遺障害が認定される場合があります。

 

 

むちうち後遺症が数年後に発症する可能性

後から後遺症が出ることは無い

日常診療でよく聞かれる質問の代表的なものは「むちうちの後遺症が交通事故の数年後に発症することはありますか?」 です。

 

結論から申し上げると、今は何も症状が無いのであれば「後から後遺症が出る」ことはありません。もし頚部痛や手のしびれなどの症状が出たとしても、事故とは無関係に発症したと思って良いでしょう。

 

 

交通事故との因果関係の証明は難しい

実務的にも、数年してから発症した頚部痛や手のしびれと、交通事故との因果関係を証明することは、極めて難しいです。

 

このため、事故から数年してから発症した症状が、むちうちの後遺障害に認定される可能性はほぼゼロと考えて良いでしょう。

 

 

骨折では後遺症が数年後に発症する可能性あり

一方、むちうちではなく脛骨高原骨折等の関節内骨折の場合には、事故から数年後で痛みや関節可動域制限などの症状が出現する可能性は十分にあります。

 

このようなケースでは、交通事故との因果関係の証明も比較的容易です。もしお困りであれば、主治医や弁護士に相談することを推奨します。

 

 

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むちうちの後遺障害12級、14級認定までの流れ

 

頚椎捻挫については、出現する症状も多彩で、なおかつ症状の重症度や持続期間にもばらつきが多いことが特徴です。

 

症状が持続する期間は、かなりの個人差があるとされています。事故の規模が比較的小さいのに、症状が半年以上持続する患者さんもいます。

 

ただ、無期限に治療を継続することは難しく、「症状固定」をいつに設定するかが問題になります。症状固定とは、十分治療を行っても症状の改善の見込みがないと判断される時期のことです。

 

頚椎捻挫の症状固定時期は、患者さんの症状や医師の考え方にも左右されますが、短いと数週間、長いと数ヶ月から1年におよぶこともあります。

 

症状固定の時点で、なんらかの後遺症が存在する場合は、後遺障害診断書を作成します。

 

交通事故により生じた症状を治すために一定期間の通院を行い、症状固定の段階で生涯持続することが予想される後遺症の評価を行います。事故により発生した後遺症に対しては、障害等級に応じた補償を行うという考え方です。

 

後遺障害診断書は医師が作成する書類であり、整骨院では作成することはできません。後遺障害認定申請は、面倒な手続きに感じる患者さんも多いと思いますが、後遺障害認定のためには不可欠な手続きです。

 

なお、保険会社による治療費支給が打ち切りになったあとも、健康保険を利用して治療を継続することは可能です。

 

下記のすべての条件を満たした場合には、後遺障害等級が認定される可能性があります。等級認定された場合には、等級に応じた補償金を受け取ることができます。
 

  • 交通事故が原因となる肉体的・精神的な傷害であること
  • 将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)
  • 交通事故と本人の感じる後遺症状に因果関係が認められること
  • 本人の感じる後遺症状の原因が医学的に証明、説明できるものであること
  • 後遺症状の程度が自賠責法施行令の等級に該当すること

 

 

実際に何級の等級が認定されるかは、自賠責保険の判断になります。等級認定結果に不服などがあれば「異議申立て」をすることも可能です。

 

異議申立ては、患者さんが自力で行うのは難しいので、異議申立てのサポートをしている法律事務所への相談が推奨されます。

 

相談する法律事務所は、どこでも良いわけではありません。等級が認定される可能性を上げるためには、交通事故を専門に扱う医師と連携している経験豊富な法律事務所を選ぶべきでしょう。

 

ただし、実際にはどの法律事務所が経験豊富なのかを判断するのは難しいです。弊社では、提携している全国の経験豊富な法律事務所を無料で紹介するサービスを実施していますのでご利用ください。

 

 

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むちうちの後遺障害は12級と14級

 

むちうちの主な症状は、後頚部痛や手の痛み・しびれです。これらの症状は、自賠責保険用語で「神経症状」と言います。

 

 

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

自賠責認定基準の解説

 

12級13号の後遺障害慰謝料は、14級9号と比べて3倍近くになります。このため、後遺症に苦しむ交通事故被害者は、12級13号に等級認定されることを期待します。

 

しかし現実には、むちうちで12級13号が等級認定されるハードルは極めて高いと言わざるを得ません。

 

12級13号の自賠責認定基準は「局部に頑固な神経症状を残すもの」です。これだけでは何を意味するのかさっぱり分かりませんね。

 

自賠責認定基準をかみ砕いて翻訳すると「残存している症状が、画像所見や神経学的所見などの他覚所見によって、客観的に証明できるもの」になります。

 

 

12級13号の具体例

 

症状

  • 右頚部痛
  • 右母指~前腕橈側にかけての痛み・しびれ

 

頚椎MRI

  • C5/6の右後外側に椎間板ヘルニアを認める
  • 右第6神経根を明確に圧迫している

 

神経学的所見

  • スパーリングテスト(Spurling test)陽性
  • ジャクソンテスト(Jackson test)陽性
  • 右上肢の深部腱反射(腕橈骨筋反射)消失または減弱

 

 

12級13号の自賠責認定基準はこれだけではありません。しかし、少なくとも上記の要件を全て満たしていなければ、むちうちで12級13号に認定される可能性はありません。

 

ほとんどの事案は、上記で挙げた条件のいくつかを満たしていないため、かなり厳しい後遺症が残っているケースであっても12級13号が認定されないのが現実です。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

自賠責認定基準の解説

 

14級9号の後遺障害慰謝料は、12級13号と比べて低いものの、後遺障害等級認定の確率は各段に高いです。このため、むちうちの後遺症に悩む人の現実的な救済手段として14級9号は重要です。

 

しかし14級9号と言えども、決して後遺障害に等級認定されるハードルは低いわけではありません。むしろほとんどの事案は、14級9号にも認定されず非該当になるという重い現実があります。

 

14級9号の自賠責認定基準は「局部に神経症状を残すもの」です。12級13号の「頑固な」が無いだけでほぼ同じ文言です。

 

自賠責認定基準をかみ砕いて翻訳すると「画像所見や神経学的所見などの他覚所見によって客観的に証明できないが、事故形態や治療経過などから、症状の存在を医学的に推定できるもの」となります。

 

 

14級9号の具体例

 

症状

  • 左頚部痛
  • 左上肢の痛みとしびれ

 

頚椎MRI

  • C5/6の椎間板変性と正中型の椎間板ヘルニアを認める
  • 左椎間孔の狭窄は明らかではない

 

神経学的所見

  • スパーリングテスト(Spurling test)陽性
  • ジャクソンテスト(Jackson test)陽性
  • 左上肢の深部腱反射(腕橈骨筋反射)正常

 

 

上記のような事案が14級9号の典型例です。もちろん、14級9号の自賠責認定基準もこれだけではありません。しかし、12級13号と比較して、自賠責認定基準が緩やかなのは理解いただけるでしょう。

 

12級13号のように、どれかひとつの条件でも抜けると等級認定されないというわけではなく、総合点で何点以上であれば14級9号に等級認定しましょう、といったニュアンスです。

 

 

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むちうちが後遺障害に認定される確率は約5%

 

損害保険料率算出機構は、自動車保険の概況という統計資料を公表しています。2021年度(2020年度統計)では、損害調査受付件数が1041737件でした。

 

このうち、後遺障害に認定された事案は49267件で、後遺障害認定率は約4.7%です。むちうちのみに限った確率ではないですが、ほぼ近似した数字と言ってよいでしょう。

 

 

<参考>
損害保険料率算出機構「2021年度 自動車保険の概況」

 

 

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【弁護士必見】むちうちで12級、14級に認定されるヒント

12級13号認定のポイント

周知のように、12級13号は極めてハードルが高いです。14級9号の延長線上に12級13号があるのではなく、まったく別の認定基準であると考えるべきです。

 

神経学的所見と画像所見が完全に一致するのは必要最低条件です。しかし、それだけで認定されるほと12級13号は甘くありません。

 

肌感覚で言うと、20個程度あるチェックポイントをすべてクリアしなければ、後遺障害等級12級13号は認定されない印象を抱いています。

 

その中でも最初の関門は画像検査です。画像検査に関しては下記にまとめているので、ご確認いただければ幸いです。

 

 

<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫(むちうち)の後遺症で必要な検査|交通事故
【医師が解説】むちうちの後遺症認定でMRIが必要な理由|交通事故

 

 

そして画像所見をクリアした時点で、次に問題になるのは神経学的所見を含めた身体所見です。スパーリングテストやジャクソンテストが陽性であるのは当然ですが、画像所見と一致した筋力低下や深部腱反射も重要視されます。

 

神経根だけではなく脊髄の髄節にも注意しつつ、慎重に画像所見と身体所見が一致しているのかを検討して対策を練る必要があります。12級13号認定のハードルが高いと言われる所以です。

 

 

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14級9号認定のポイント

14級9号は、一般的に「救済等級」と呼ばれています。決してハードルは低くありませんが、交通事故被害者の窮状をある程度考慮されることがポイントです。

 

肌感覚で言うと、12級13号は完全な減点方式です。1点でも減点対象があると等級認定されません。一方、14級9号は絶対にクリアするべき基準があるものの、加点方式に近い総合判定である印象を抱いています。

 

つまり、最低限満たすべき自賠責認定基準を全てクリアしていれば、2~3個の条件がクリアできていなくても、他の項目で著しく高い点数があれば総合判定で14級9号が等級認定されるといった感じです。

 

このあたりは担当者の肌感覚となるため、12級13号の等級認定確率を判断するよりも、14級9号の等級認定確率を予測する方が難しいと言えます。

 

逆に言うと、それだけ対策を打つ選択肢が豊富にあるということです。むちうちでお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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むちうちの後遺障害認定で弊社ができること

弁護士の方へ

弊社では、むちうちの後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。

 

 

等級スクリーニング

 

現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。

 

等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。

 

等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。

 

 

<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

 

 

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医師意見書

 
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。

 

医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。

 

医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。

 

弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。

 

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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画像鑑定報告書

 

交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。

 

画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。

 

画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。

 

弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。

 

 

<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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むちうちの後遺症でお悩みの被害者の方へ

弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。

 

また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。

 

もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。

 

尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。

 

 

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まとめ

 

むちうちの12級13号の等級認定は極めてハードルが高いです。神経学的所見と画像所見が完全に一致することは必要最低条件です。後遺障害の等級認定では、完全な減点方式の判定法が採用されています。

 

一方、14級9号では、基本となる認定基準をクリアしていれば、圧倒的に高い点数があればそれ以外の条件が多少足りなくても、総合判定として後遺障害等級が認定される傾向にあります。

 

 

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