交通事故で外傷性くも膜下出血と診断されたのに、後遺障害が「非該当」と判断されて、納得できない思いを抱えている方は少なくありません。
外傷性くも膜下出血は画像上の出血が消えやすく、症状との関係が十分に評価されないまま判断されるケースもあります。
しかし、非該当という結果が出たからといって、必ずしも後遺障害認定の可能性が閉ざされるわけではありません。
外傷性くも膜下出血の異議申し立てでは、非該当理由を正確に分析して、認定基準を踏まえた新たな医証を提出することが重要です。
本記事では、外傷性くも膜下出血の異議申し立てで等級認定を目指すために知っておきたい原因、手続き、成功のポイントを解説しています。
最終更新日: 2025/12/28
Table of Contents
- 1 外傷性くも膜下出血が非該当になってしまう原因とは?
- 2 異議申し立ての流れと必要書類
- 3 外傷性くも膜下出血の異議申し立て成功法【弁護士必見】
- 4 外傷性くも膜下出血の異議申し立てで弊社ができること
- 5 外傷性くも膜下出血の異議申し立てでよくある質問
- 5.1 外傷性くも膜下出血は、後遺障害として非該当になりやすいのはなぜですか?
- 5.2 外傷性くも膜下出血「単独」の場合でも、後遺障害等級の認定・異議申立ては現実的に期待できますか
- 5.3 交通事故と外傷性くも膜下出血との因果関係は、どのような資料・所見で立証すべきですか
- 5.4 画像(CT・MRI)で出血痕が消えていても、異議申し立ては可能ですか?
- 5.5 頭痛・めまい・吐き気などの症状だけでは等級認定は難しいのでしょうか?
- 5.6 後遺障害診断書を書き直してもらえば、等級が変わる可能性はありますか?
- 5.7 異議申し立てでは、どのような医証(医学的証拠)が特に重要になりますか?
- 5.8 主治医が「後遺障害はない」と考えている場合でも、異議申し立てはできますか?
- 5.9 外傷性くも膜下出血と現在の症状との因果関係は、どのように立証すればよいですか?
- 5.10 異議申し立ての結果、等級が認められるとすれば何級になることが多いですか?
- 6 まとめ
- 7 関連ページ
- 8 資料・サンプルを無料ダウンロード
外傷性くも膜下出血が非該当になってしまう原因とは?
外傷性くも膜下出血の後遺障害認定に必須の3条件
外傷性くも膜下出血の後遺症で多いのは高次脳機能障害です。高次脳機能障害が後遺障害認定されるには、以下の3条件を満たす必要があります。
- 受傷時に意識障害がある
- 症状固定時期の画像検査で異常所見がある
- 頭部外傷の傷病名がある
外傷性くも膜下出血出血という傷病名が付いているので、3番目の項目はクリアしています。このため、残りの2項目の有無がポイントになります。
外傷性くも膜下出血は非該当になりやすい
外傷性くも膜下出血は、脳挫傷などの他の頭部外傷と比べて、後遺障害が非該当になりやすい傾向があります。
その理由は、単独の外傷性くも膜下出血は後遺症を残さずに回復しやすいためです。実際、約半数の症例は24時間以内に画像所見が消失します。
出血量が少量の場合は特に、目立った後遺症なく回復することが一般的です。このため、外傷性くも膜下出血単独では認定対象になりにくいです。
一方、脳挫傷やびまん性軸索損傷を合併している場合は、身体性機能障害や高次脳機能障害として後遺障害等級が認定される可能性があります。
外傷性くも膜下出血では、合併損傷の有無が、後遺障害認定の可否を大きく左右すると言えるでしょう。

異議申し立ての流れと必要書類
異議申し立てとは?
異議申し立てとは、後遺障害等級認定の結果に納得できない場合に再審査を求める手続きです。
交通事故で後遺症が残ったにもかかわらず、非該当や想定より低い等級になった場合、この手続きを利用できます。
後遺障害認定の結果を争う方法には、主に3種類があります。1つ目は自賠責保険への異議申し立てで、最も一般的な方法です。
2つ目は中立的な第三者機関である紛争処理機構への申請、3つ目は裁判所への訴訟提起です。
それぞれ手続きや期間、費用が異なるため、状況に応じて適切な手段を選択することが重要です。
異議申し立ての必要書類と提出先
異議申し立ての際には、いくつかの書類を準備する必要があります。必ず提出しなければならないものと、任意で提出するものに分かれます。
異議申立書は必須です。任意で提出するものとして、以下のような新たな医学的証拠が挙げられます。
- 追加で実施したCT検査やMRI検査
- 診療録
- 医療照会に対する回答
- 医師意見書
- 画像鑑定報告書
提出先は、初回申請が事前認定の場合は任意保険会社へ、被害者請求の場合は自賠責保険会社へとなります。
費用と時間はどれぐらい?
異議申し立て自体には費用がかかりません。何度でも無料で申し立てることができます。
ただし、新たな画像検査を受ける場合や医師意見書を作成する場合には、それぞれの発行手数料や作成費用が必要です。
審査結果が出るまでの期間は、一般的に2~4ヶ月が目安です。ただし、症状の内容や審査機関の混雑状況によっては、さらに時間がかかります。
特に、高次脳機能障害など判断が難しいケースでは、6ヶ月程度かかることもあります。
外傷性くも膜下出血の異議申し立て成功法【弁護士必見】
非該当になった原因を分析
異議申し立てを成功させるには、まず非該当になった原因を正確に分析することが重要です。
後遺障害認定等級通知書には、非該当と判断された理由が記載されています。この理由を詳細に検討して何が不足していたのかを明確にします。
診断書の記載内容か、医学的証拠の不足か、それとも症状と事故との因果関係の証明か。これらの精査が異議申し立て成功への第一歩です。
認定条件をクリアするための医証を収集する
非該当の原因が明らかになったら、それを補う医学的証拠を収集します。認定基準に基づいて、必要な検査や資料を準備することが重要です。
外傷性くも膜下出血では、MRI検査やCT検査などの画像検査が特に重要です。神経心理学的検査や診療録も有効な医学的証拠となります。
高次脳機能障害が争点なら、専門医による多岐に渡る分析が必要なので、医師意見書や画像鑑定報告書の取得を検討する必要があります。
医師意見書では、各種の画像検査、神経心理学的検査、診療録、診断書などを総合的に考慮して、後遺症が残る蓋然性を医学的に解説します。
画像鑑定報告書は、主に画像所見が争点になっている事案において、画像所見と症状の関連性、後遺症が残る蓋然性を医学的に解説します。
前回審査で画像所見が不足していた場合は画像鑑定報告書が、因果関係の立証が必要な場合は医師意見書が適しています。
<参考>
異議申し立てでは新たな医証が必須
自賠責保険への異議申し立てでは、事実上、新規の医学的証拠の提出が必須です。前回申請と同じ資料を再提出しても、認定結果は覆りません。
新たな医学的証拠によって、前回審査で見落とされていた事実や不足していた情報を補完する必要があります。
外傷性くも膜下出血が後遺障害に認定されるポイント
外傷性くも膜下出血で後遺障害に認定されるには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、意識障害の期間と程度を明確に証明することです。事故直後の意識障害の有無や期間は、脳損傷の程度を示す重要な指標となります。
次に、画像所見での客観的な証拠です。CT検査やMRIのFLAIR画像で出血の痕跡や脳の二次的変化を確認できることが重要です。
また、合併損傷の存在も認定のポイントです。脳挫傷、びまん性軸索損傷などを合併している場合、後遺障害に認定される可能性が高まります。
<参考>
外傷性くも膜下出血の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
外傷性くも膜下出血の異議申し立てで弊社ができること
弁護士向けのサポートサービス
弊社では、交通事故で受傷した外傷性くも膜下出血の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者向けの弁護士無料紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

外傷性くも膜下出血の異議申し立てでよくある質問
外傷性くも膜下出血は、後遺障害として非該当になりやすいのはなぜですか?
外傷性くも膜下出血が非該当になりやすい主な理由は、単独損傷では後遺症を残さずに回復することが多いためです。
少量の出血であれば、自然に止血されて、きれいになります。実際、約半数の症例で24時間以内に画像上の所見が消失します。
このため、外傷性くも膜下出血単独では、後遺障害の等級認定対象とはなりにくいのです。
一方、脳挫傷やびまん性軸索損傷などを合併している場合には、後遺障害に認定される可能性があります。
<参考>
外傷性くも膜下出血「単独」の場合でも、後遺障害等級の認定・異議申立ては現実的に期待できますか
外傷性くも膜下出血単独の場合、後遺障害の認定は容易ではありません。しかし、全く可能性がないわけではありません。
画像検査で脳の二次的な変化(脳萎縮の進行など)が確認できる場合には、異議申し立てで認定される可能性があります。
特に、高次脳機能障害による記憶力や判断力低下で支障をきたすと、追加の神経心理学的検査や医師意見書によって認定される可能性があります。
交通事故と外傷性くも膜下出血との因果関係は、どのような資料・所見で立証すべきですか
因果関係の立証には、複数の資料が必要です。まず、事故直後の画像検査で外傷性くも膜下出血が確認されていることが前提となります。
次に、事故直後からの一貫した意識障害や症状の記録が必要です。診療録の記載内容が、因果関係を示す有力な証拠となります。
また、事故の状況を示す資料も重要です。実況見分調書や事故車両の損傷写真から、頭部に強い衝撃が加わったことを示せば立証に役立ちます。
医師意見書も効果的な手段です。専門医が医学的な観点から、事故と後遺症の因果関係を詳細に説明することで、説得力のある主張ができます。
画像(CT・MRI)で出血痕が消えていても、異議申し立ては可能ですか?
画像で出血痕が消えていても、異議申し立ては可能です。重要なのは、出血痕の有無だけでなく、脳の二次的な変化や症状との関連性です。
MRIのFLAIR画像は、急性期から亜急性期の出血に鋭敏です。また、出血後の脳萎縮の進行などの二次的変化を確認できる場合もあります。
たとえ出血痕が消失していても、脳萎縮と症状の因果関係を医師意見書や画像鑑定報告書で説明すれば、後遺障害に認定される可能性があります。
頭痛・めまい・吐き気などの症状だけでは等級認定は難しいのでしょうか?
頭痛、めまい、吐き気などの自覚症状だけでは、等級認定は困難です。後遺障害認定では、自覚症状を裏付ける他覚的所見が必要だからです。
ただし、これらの症状と画像所見や身体所見が一致する場合には、後遺障害認定の可能性が高まります。
たとえば、頭痛が持続している場合、MRI検査で脳の器質的な変化が確認できれば、症状の医学的な裏付けとなります。
めまいについても、神経学的検査や平衡機能検査で異常が確認できれば、他覚的所見として評価されます。
また、医師意見書で、自覚症状と他覚所見の関連性を医学的に説明することも、後遺障害認定への鍵となります。
後遺障害診断書を書き直してもらえば、等級が変わる可能性はありますか?
後遺障害診断書を書き直してもらうことで、後遺障害等級が変わる可能性はあります。
ただし、単に書き直すだけでなく、後遺障害認定基準に不足していた情報を追加してもらうことが重要です。
後遺障害診断書では、特に身体所見と画像所見の一致を詳細に記載してもらうことが効果的です。
異議申し立てでは、どのような医証(医学的証拠)が特に重要になりますか?
異議申し立てで特に重要な医学的証拠は、追加の画像検査や神経心理学的検査、診療録、診断書、医師意見書、画像鑑定報告書などです。
外傷性くも膜下出血では、追加の画像検査が重要です。症状固定時期に画像検査が行われていなかった場合、脳萎縮が見つかることがあります。
医師意見書は、第三者の専門医が医学的所見を詳細に述べる書面で、最も効果的な新規医証です。
後遺障害認定基準に準拠しながら、初回審査で見落とされていた事実を医学的に説明します。
画像鑑定報告書は、画像所見を専門的に分析したもので、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案で効果を発揮します。
主治医が「後遺障害はない」と考えている場合でも、異議申し立てはできますか?
主治医が「後遺障害はない」と考えている場合でも、異議申し立ては可能です。重要なのは、実際に症状が残っているかどうかです。
このような場合、第三者の専門医による医師意見書も有効です。主治医とは異なる視点から医学的に評価して後遺障害の蓋然性を主張できます。
また、別の医療機関でセカンドオピニオンを受けることも選択肢の一つです。症状が実際に残っていれば、適切な医学的評価を受けましょう。
外傷性くも膜下出血と現在の症状との因果関係は、どのように立証すればよいですか?
因果関係の立証には、次の要素が揃っていることが望ましいです。まず、事故直後の画像検査で外傷性くも膜下出血が確認されていること。
次に、事故当日から診療録に意識障害や症状が記載されていること。そして、症状固定時まで治療が継続されていることです。
異議申し立ての結果、等級が認められるとすれば何級になることが多いですか?
外傷性くも膜下出血で認定される後遺障害等級は、残存する後遺症の内容と程度によって大きく異なります。
高次脳機能障害として認定される場合、1~14級まで幅広い等級があります。記憶力や判断力の低下が著しく、常に介護が必要なら1級や2級です。
軽度の場合は9級や12級、14級となります。身体性機能障害(麻痺)として認定される場合も、1級から12級まであります。
外傷性てんかんが残った場合は、発作の頻度や程度に応じて5級、7級、9級、12級のいずれかが認定されます。
頭痛や神経症状として認定される場合は、12級13号または14級9号となることが多いです。
合併損傷がある場合や高次脳機能障害が明確な場合は、より高い等級が認定される傾向があります。
まとめ
外傷性くも膜下出血の異議申し立てを成功させるには、新たな医学的証拠の提出が不可欠です。
MRIやCTなどの画像検査、神経心理学的検査、診療録、診断書を基にして、後遺症が残る可能性を客観的に示します。
特に高次脳機能障害が争点となる場合は、医師意見書や画像鑑定報告書が重要です。
意識障害、画像所見、神経心理学的検査を医学的に整理して、後遺障害の蓋然性を認定基準に沿って説明することが、等級認定への鍵となります。
外傷性くも膜下出血の後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニング®を承ります。
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