交通事故などで脳出血を受傷したら、後遺障害の有無や程度を正しく評価してもらうことが重要になります。その際に大きな役割を果たすのが「医師意見書」です。
医師意見書は、単なる診断書とは異なり、症状の医学的根拠や将来的な影響を詳細に記載して、後遺障害認定や保険会社との交渉、さらには裁判においても強い証拠力を持ちます。
特に、脳出血は、高次脳機能障害などの外見からは分かりにくい後遺症を残すことが多く、医学的な説明を補強する資料が欠かせません。
本記事では、脳出血における医師意見書の基礎知識から、取得方法、活用法までを分かりやすく解説して、異議申し立てや示談交渉を有利に進めるためのポイントを紹介しています。
最終更新日: 2025/9/30
Table of Contents
脳出血と医師意見書の基礎知識
脳出血はどのようなケガか
脳出血とは、脳内の細い動脈が破れて脳の組織内に出血が生じる病態です。主な原因は、長期間の高血圧や動脈硬化、そして交通事故などの外傷です。
出血によって流れ出た血液が脳の神経組織を圧迫・傷害して、頭痛や麻痺、認知機能障害、言語障害など様々な症状を引き起こします。
重症化すると意識障害や生命の危険も伴うため、迅速な治療介入が必要とされます。
<参考>
脳出血の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
医師意見書とは何か
医師意見書とは、患者を担当していない別の医師が作成する文書で、医学論文や教科書を根拠にして客観的な意見を述べます。
診療録、画像検査、神経心理学的検査などをもとにして、事故と後遺症との因果関係や、後遺症の有無や重さについて、医学的に解説しています。
医師意見書は、自賠責保険への異議申し立てや裁判などで添付されて、当方の主張を裏付ける資料として活用されます。
医師意見書と診断書の違い
医師意見書とは、専門医が診療録・診断書・画像検査などを詳しく調べて、後遺症がどのような状態なのかを医学的に客観的に示した文書です。主に、異議申し立てや裁判での添付資料として使われます。
一方、診断書は、治療の経過やケガの部位、現在の症状を簡潔にまとめたもので、主治医が作成します。保険会社や警察に提出する証明書として使用されます。
脳出血で医師意見書が重視される理由
脳出血の後遺症を医学的に証明
脳出血の後遺症は、記憶障害や注意障害、言語障害など多岐にわたります。また、脳損傷の程度や症状は、個人差が大きいです。
このため、後遺症を医学的に評価するためには、画像検査や診療録、さまざまな神経心理学的検査を総合的に精査する必要があります。
医師意見書は、後遺症の存在や程度、事故との因果関係を、医学的に証明する重要な文書です。
<参考>
神経心理学的検査は高次脳機能障害の等級認定ポイント|後遺障害
脳出血の後遺障害認定基準への適合性を主張
脳出血の後遺障害認定では、検査結果や画像所見と高次脳機能障害や身体性機能障害などの症状が一致しているかどうかが特に重視されます。
医師意見書によって、後遺障害認定基準を満たしていることを医学的に主張できるため、認定審査に大きな影響力があります。
<参考>
異議申し立てや訴訟での証拠としての有用性
医師意見書を添付することで、初回申請が非該当のケースでも異議申し立てが通ったり、裁判で有用な証拠として採用される可能性があります。
医学的根拠に基づいた意見書は、後遺症の有無や程度を示す客観的な資料なので、証拠としての価値がとても高いです。
脳出血の医師意見書を活用する方法
脳出血の異議申し立てで後遺障害認定の根拠を補強する
脳出血の異議申し立てで、前回の後遺障害認定結果を覆す際に、医師意見書は大きな役割を果たします。
画像検査や各種検査と症状の関連性を、専門医が詳細にまとめた意見書によって、医学的な裏付けが強まり、等級判断が変わる可能性があります。
保険会社との示談交渉を有利に進める
医師意見書は、事故と脳出血による後遺症の程度や、事故との因果関係を医学的に示す資料です。
医師意見書があると保険会社に対して根拠を持って主張できるため、示談交渉で被害者に有利な条件を引き出しやすくなります。
裁判や調停で医学的根拠として活用する
医師意見書は、後遺症の存在や程度、そして事故との因果関係を医学的に解説しているため、裁判や調停で重要な証拠になります。
医師による専門的な判断が加わることで、裁判官に内容が理解されやすくなり、当方の主張を裏付けられます。
脳出血の医師意見書を取得する方法
脳出血の医師意見書を取得する手順
脳出血の医師意見書を取得するためには、相談書、診断書、画像検査、神経心理学的検査などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後に、医師意見書の検討項目が提案されます。検討項目に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。医療鑑定会社が入金を確認した後に、医師意見書の原本が発送されます。
脳出血の医師意見書作成に必要な書類と情報
脳出血の異議申し立てで使用する医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 神経心理学的検査
- 後遺障害診断書
- 神経系統の障害に関する医学的意見
- 日常生活状況報告
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
医師意見書の費用
概要 | 価格 |
整形外科 | 23万円 |
脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 |
耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 |
精神科 | 31万円 |
訴訟加算(整形外科) | 4万円 |
訴訟加算(その他の科) | 1万円 |
多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
難事案加算 | 6万円~ |
反論意見書 | -5万円 |
医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
脳神経科領域における一般的な事案では、30万円前後の料金負担で医師意見書の作成が可能なケースが多いです。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
脳出血の医師意見書取得にかかる期間
脳出血の医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
脳出血の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
脳出血が、適切な後遺障害等級に認定されるには、以下のような後遺障害認定基準をすべて満たす必要があります。
- 事故と症状に整合性がある
- 後遺症と各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで症状が続いている
- 常に後遺症が存在している
シンプルに見えますが、すべてをクリアしている事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの後遺障害認定基準が存在します。
医師意見書の価値は、後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、医師意見書を受任する医療鑑定会社が、後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
脳出血の後遺障害は、高次脳機能障害と身体機能性障害に大別されますが、多くの事案で争点になるのは高次脳機能障害です。
高次脳機能障害が、後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事にまとめていますので参考にしてください。
<参考>
脳出血の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した、脳出血の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
脳出血の後遺障害認定でお悩みの患者さんへ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
脳出血の医師意見書でよくある質問
脳出血の原因や受傷との因果関係は意見書に書いてもらえるのか?
医師意見書には、脳出血が高血圧や動脈硬化などの持病から生じたものか、事故や外傷によるものかの因果関係について専門的見解が記載されます。
交通事故と脳出血の因果関係は、受傷時の状況や画像所見や医学的証拠を基にして、医師が客観的に判断して記載します。
後遺障害の等級認定に必要な医学的所見は、意見書にどのように反映されるのか?
意見書には、CTやMRI等の画像検査による診断結果、神経心理学的検査結果、四肢麻痺や高次脳機能障害など日常生活の制限状況、及び社会生活への影響が詳細に記載されます。
高次脳機能障害や記憶障害などの症状も意見書に記載してもらえるのか?
高次脳機能障害や記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの症状は、脳出血後に現れることが多く、意見書にも必ず記載するべき内容です。
医師意見書では、症状の有無だけでなく、日常生活でどのような困難が生じているかを、具体例とともに医学的根拠を示して詳述されます。
MRIやCTなど画像所見は意見書にどの程度盛り込まれるのか?
意見書には、脳出血の部位や損傷の程度を、MRIやCT検査を基づいて詳しく記載されます。
特に、MRIは損傷部位や微小な出血などの評価に有効です。後遺症の根拠を明示できるため、後遺障害認定に際して重要な資料になります。
依頼者が希望する内容(後遺障害や労働能力への影響など)を医師にお願いできるのか?
依頼者は医師に対して、後遺障害や労働能力への影響などの記載してほしい事項を申し出ることが可能です。
ただし、医師意見書は医学的事実を基にして作成されるので、要望すべてが反映されるとは限りません。
具体的な障害状況や日常生活の支障などは、患者と医師で事前に相談・共有することで、より正確な内容となります。
まとめ
脳出血は脳内の血管が破れて出血する病気で、頭痛や麻痺、認知機能障害、言語障害を引き起こし、重症化すれば命の危険もあります。
交通事故による外傷が原因になることもあり、後遺症には記憶障害や注意障害など多様な症状が残ります。
後遺症を医学的に証明するために重要なのが医師意見書です。医師意見書は、専門医が医証を精査して、事故との因果関係や後遺症の程度を客観的に示す文書です。
医師意見書は、異議申し立てや裁判、示談交渉で強い証拠となり、後遺障害認定の成否にも大きく関わります。
脳出血の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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