事故によって脳に損傷を負うと、記憶力や注意力、感情のコントロールなどに後遺症を残す高次脳機能障害を併発するケースが少なくありません。
高次脳機能障害は、見た目には回復しているように見えても、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼすため、後遺障害認定で丁寧な立証が必要です。
その際に、重要な役割を果たすのが医師意見書です。医師意見書は、異議申し立て、示談交渉、裁判に至るまで幅広く活用されます。
本記事では、高次脳機能障害に関する医師意見書の基礎知識から、その有効性、活用法、取得の流れまでを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/9/28
Table of Contents
高次脳機能障害と医師意見書の基礎知識
高次脳機能障害はどのようなケガか
高次脳機能障害は、交通事故などによる外傷や脳卒中による脳の損傷後に発症する認知機能障害です。
注意力や記憶力、言語、感情のコントロールが低下して、日常生活や社会活動に大きな支障をもたらします。
外見からは分かりにくいため「見えない障害」とも呼ばれており、ご本人や家族が障害の存在に気付きにくいことが特徴です。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
医師意見書とは何か
医師意見書は、主治医以外の専門医が、診療記録、画像検査、神経心理学的検査などの客観的な資料をもとに作成します。
医師意見書では、事故と高次脳機能障害との因果関係、後遺症の有無や程度を、医学論文や専門書の内容を根拠にしながら説明します。
異議申し立てや裁判などで、高次脳機能障害の後遺障害認定を目指す際に、医師意見書は自賠責保険や裁判所へ提出する重要な証拠となります。
医師意見書と診断書の違い
医師意見書は、専門医がカルテや検査データなどを分析して、後遺症について医学的な根拠をもとに判断をまとめた書類です。主に裁判や異議申し立ての時に使われます。
一方、診断書は、治療した医師が、ケガの部位、治療内容、治療見込みなどをシンプルに記した証明書です。主に保険会社や警察などへ提出します。
高次脳機能障害で医師意見書が重視される理由
高次脳機能障害の後遺症を医学的に証明
高次脳機能障害は外見では分かりづらい症状が多いです。しかし、医師意見書で医学的根拠を示すことで、認知機能や行動障害、精神症状などを客観的に証明できます。
また、神経心理学的検査の結果や日常生活の支障を、医師が専門的な知見で記載することで、後遺障害の審査時に信頼性の高い証拠となります。
<参考>
神経心理学的検査は高次脳機能障害の等級認定ポイント|後遺障害
高次脳機能障害の後遺障害認定基準への適合性を主張
脳損傷の画像所見や認知・行動障害の具体的な症状について、医師が詳細に記載することで、審査機関が適切な後遺障害等級を判断します。
高次脳機能障害では、診断書や各種検査結果が認定基準に合致しているかを審査されます。後遺障害認定において、医師意見書は重要な役割を果たします。
異議申し立てや訴訟での証拠としての有用性
医学的根拠が客観的に示された医師意見書は、後遺症の存在を立証する強力な証拠として評価されます。
このため、初回申請で想定以下の等級であっても、医師意見書を添付して異議申し立てすると、後遺障害等級がアップする可能性があります。
また、高次脳機能障害の後遺障害等級を争う訴訟においても、医師意見書は被害者側の証拠として採用されるケースがあります。
高次脳機能障害の医師意見書を活用する方法
高次脳機能障害の異議申し立てで後遺障害認定の根拠を補強する
高次脳機能障害の異議申し立てで、後遺障害等級を変えたい時は、医師意見書が重要な証拠になります。
診療記録、画像検査、神経心理学的検査などをもとにした医師意見書を添付すると、審査の際に説得力が増して後遺障害に認定されやすくなります。
保険会社との示談交渉を有利に進める
医師意見書があると、高次脳機能障害による認知機能障害を医学的に裏付けられます。
医師意見書を根拠として保険会社と交渉すると、当方主張の信頼性が増して、被害者にとって有利な条件を引き出しやすくなります。
裁判や調停で医学的根拠として活用する
裁判や調停において、医師意見書は高次脳機能障害の程度や事故との因果関係を、医学的に主張するために重要な文書です。
医師意見書があると裁判官にも病態が分かりやすくなるため、被害者の主張の信頼性を高める効果が期待できます。
高次脳機能障害の医師意見書を取得する方法
高次脳機能障害の医師意見書を取得する手順
医師意見書を取得するためには、相談書、診断書、画像検査、神経心理学的検査などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後に、医師意見書の検討項目が提案されます。検討項目に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。医療鑑定会社が入金を確認した後に、医師意見書の原本が発送されます。
高次脳機能障害の医師意見書作成に必要な書類と情報
高次脳機能障害の異議申し立てで使用する医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 神経心理学的検査
- 後遺障害診断書
- 神経系統の障害に関する医学的意見
- 日常生活状況報告
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
医師意見書の費用
概要 | 価格 |
整形外科 | 23万円 |
脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 |
耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 |
精神科 | 31万円 |
訴訟加算(整形外科) | 4万円 |
訴訟加算(その他の科) | 1万円 |
多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
難事案加算 | 6万円~ |
反論意見書 | -5万円 |
医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
脳神経科領域における一般的な事案では、30万円前後の料金負担で医師意見書の作成が可能なケースが多いです。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
医師意見書取得にかかる期間
高次脳機能障害の医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
高次脳機能障害の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
高次脳機能障害が、適切な後遺障害等級に認定されるには、以下のような後遺障害認定基準をすべて満たす必要があります。
- 事故と症状に整合性がある
- 後遺症と各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで症状が続いている
- 常に後遺症が存在している
シンプルに見えますが、すべてをクリアしている事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの後遺障害認定基準が存在します。
医師意見書の価値は、後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、医師意見書を受任する医療鑑定会社が、後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
高次脳機能障害で後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した高次脳機能障害が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害の後遺障害認定でお悩みの患者さんへ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
高次脳機能障害の医師意見書でよくある質問
どのような検査結果が意見書に反映されるのか?
医師意見書には、主に画像検査(MRIやCT)、神経心理学的検査、神経学的検査などの結果が、客観的なデータとして記載されます。
これらの検査結果を総合的に評価することで、認知機能などの障害の実態を客観的に証明します。
意見書に記憶障害や注意力低下などの自覚症状はどのように記載されるのか?
患者本人が感じる記憶障害、注意力低下などの自覚症状は、診療録の内容などを参考にして記載されるケースがあります。
意見書には事故との因果関係がどのように示されるのか?
医師意見書では、事故による脳損傷の画像所見と、症状の経過や神経心理学的検査を整理して、事故後に発症した高次脳機能障害であることを医学的根拠とともに示します。
意見書は後遺障害等級認定にどの程度影響するのか?
後遺障害認定では客観的データが重視されます。医師意見書が神経心理学的検査や画像検査を網羅していれば、等級認定審査に強く影響します。
意見書に記載される日常生活や就労への影響はどのような内容か?
日常生活や就労でのエピソードは、日常生活状況報告に基づいて医師意見書に記載されるケースがあります。
具体例として、金銭管理や交通機関の利用、対人関係、就労上の困難など、家庭・職場での支障や援助の必要性などが挙げられます。
<参考>
日常生活状況報告の書き方とポイント|高次脳機能障害の後遺障害
家族や職場からの情報は意見書に反映されるのか?
家族や職場からの情報は、日常生活状況報告を通じて、医師意見書に反映されるケースが多いです。
本人が障害に気付かない場合でも、周囲の人が具体的な困難や変化を記録することで、職場や家庭での実際の様子やサポート状況を把握できます。
まとめ
高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中などで脳が損傷した後に起こる認知機能障害です。
注意力や記憶力、感情のコントロールが低下して、日常生活に大きな影響を与えます。
高次脳機能障害は、外見から分かりにくい「見えない障害」であるため、後遺障害認定には医学的根拠が欠かせません。
そこで重要となるのが医師意見書です。医師意見書は、カルテ、画像検査、神経心理学的検査などをもとに、後遺症の程度を詳しく記載した文書です。
高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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