医療機関で診断された内容が誤っていたと後に判明したとき、「あの時、正しい診断がされていれば…」という悔しさや不安を抱える方は少なくありません。
誤診が原因で症状が悪化したり、適切な治療の機会を失ったら、法的な責任を問いたいと考えるのは当然のことです。
しかし、医療に関する裁判は専門性が高く、一般の方にとっては「どう進めればいいのか」「勝てる可能性はあるのか」といった疑問がつきまといます。
本記事では、誤診による医療過誤訴訟の基本から、実際の判例や損害賠償請求の要点まで、分かりやすく解説しています。
裁判を検討している方、情報収集中の方にとって、判断材料となる実務的な知識をお届けします。
最終更新日: 2025/6/18
Table of Contents
誤診が原因の医療過誤訴訟とは
誤診による医療過誤訴訟の事例
誤診による医療過誤訴訟の事例は、診断ミスや問診不足などで重大な疾患を見落とした結果、患者が重篤な後遺症や死亡に至ったケースが多く見られます。
これらは「過失」が主な争点となり、患者救済の判決につながっている裁判例が多数存在します。
損害賠償請求できる3要件とは?
誤診による訴訟で損害賠償を請求するには、以下の3つの要件を全て満たす必要があります。
- 医師または病院に注意義務違反(過失)がある
- その過失に基づき患者に損害(悪化・死亡等)が発生したこと(因果関係)
- 発生した損害の範囲を証明できること
これらの要件が揃えば、医師や病院に対する不法行為・債務不履行などとして損害賠償の根拠となります。
<参考>
医療過誤の3要件とは?損害賠償請求の流れも解説|医療訴訟・医師意見書
医師が誤診を認めない時の対処法は?
弁護士に相談する
誤診を認めない病院や医師に対して、まずは医療過誤に詳しい弁護士へ相談することが重要です。
初回無料相談を行う法律事務所も多く、カルテ精査や専門医の意見収集などを進められます。
専門家の視点から法的責任の有無や訴訟の見通しを判断して、代理人として病院との交渉窓口となります。
診療録(カルテ)や検査結果を収集する
証拠収集は法的手続きの土台となります。患者側はカルテの開示請求を行い、必要に応じて裁判所に証拠保全を申請します。
そのうえで、検査結果や画像診断データを入手して、時系列と内容を整理します。
これらの資料は、後の医療調査や訴訟で過失・因果関係を立証する上で不可欠です。
医療調査を実施する
医療調査は、弁護士と協力医による専門的検証です。
カルテや検査データを基に、医学文献やガイドラインと照らして、医師の診療行為に過失があるかを判定します。
必要に応じて協力医による医師意見書も取得します。これにより、訴訟前でも「誤診だった」と主張する根拠を強化できます。
<参考>
示談交渉
医療調査で過失が認められると、まず病院側と示談交渉を試みます。弁護士を通じて損害賠償額や支払い方法を交渉します。
示談が成立すれば、柔軟で迅速な解決が可能です。しかし、誤診を否定されているケースでは、証拠が不足すると交渉が難航することもあります。
調停と医療ADR
示談交渉が不調に終わったら、調停(簡易裁判所)や医療ADR(弁護士会主導の裁判外解決手続)が選択肢になります。
どちらも第三者が仲介して、早期解決を目指します。調停には医師が調停委員として入ることもあります。
医療ADRは比較的柔軟ですが、過失争いが激しい場合は調停の方が適しています。
裁判
最終手段として裁判提起へ進みます。証拠提出、証人尋問、鑑定を経て、法的に医師の過失と責任の有無が判断されます。
和解の可能性もありますが、判決が下されれば強制力があり、解決までには数年かかることもあります。
費用・時間面の負担が大きいため、弁護士の助言のもと慎重な判断が重要です。
<参考>
医療裁判で勝てない理由と勝訴する方法|医療訴訟の医師意見書と医療鑑定
誤診で損害賠償請求できる項目
慰謝料
慰謝料は、誤診によって患者や家族が受けた精神的苦痛に対する賠償です。誤診と損害(後遺障害や死亡など)の因果関係を医学的・法的に立証する必要があります。
治療費や逸失利益などの損害賠償請求も、医療記録や領収書をもとに請求額を確定します。
治療費
誤診によって必要となった追加の治療費、再手術費、通院・入院に伴う雑費や交通費など、事故と因果関係のある実費を請求できます。
これらは「積極損害」と呼ばれ、医療記録や領収書をもとに請求額を確定します。交通事故の損害計算方式を参考にまとめることで、請求根拠が強化されます。
逸失利益
医療ミスにより将来働けなくなった部分の収入減少分を補償するのが逸失利益です。
後遺障害が残った場合や死亡時に、基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ乗数で将来収入減を算定します。
裁判例でも交通事故類似の計算式が使われ、根拠をもって請求することが可能です。
誤診の裁判で注意するポイント
誤診で損害賠償請求できるとは限らない
誤診があったとしても、医師や病院に賠償責任が必ず発生するわけではありません。
過失(注意義務違反)と損害、およびそれらの間に因果関係があることを患者側が立証する必要があります。
裁判では、検査過程や診療記録を精査し、「本当に誤診だったのか」「それが損害と直結しているか」が厳格に検証されます。
医療過誤の3要件の全てを満たさない限り、損害賠償請求が認められない点に注意が必要です。
<参考>
医療過誤の3要件とは?損害賠償請求の流れも解説|医療訴訟・医師意見書
医療裁判は勝訴率が低く長期にわたる
医療過誤訴訟は専門性が高く、審理も慎重に行われるため、原告の勝訴率(認容率)はおよそ20%前後と低くなっています。和解で終わる割合は50~60%程度にのぼります。
第一審の審理には平均2~3年を要するケースも多く、費用や時間の負担が大きいため、弁護士の助言のもと慎重な判断が求められます。
<参考>
医療裁判で勝てない理由と勝訴する方法|医療訴訟の医師意見書と医療鑑定
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科の相談は多いものの、医療過誤と認められるケースは少なく、弊社においても医師意見書の作成実績は限られています。
誤診の裁判でよくある質問
誤診の慰謝料の相場は?
誤診による死亡や重度後遺障害が認められたら、慰謝料は2,000〜2,800万円程度が目安です。被害の内容や因果関係が明確であるほど高額になります。
一方、因果関係が限定的な場合や精神的苦痛のみに対する慰謝料は50〜200万円程度と抑えられるケースもあります。
医療過誤の裁判の勝率は?
医療訴訟における原告の勝訴率(認容率)は約20%で、平成29年〜令和3年平均は20%前後となっています。
また、実質的にメリットがある和解に至るケースは50~60%程度あり、完全敗訴だけがすべてではない点に注意が必要です。
病院を訴える費用はいくらですか?
弁護士への相談料・着手金・報酬金、カルテ開示などの調査費用、裁判所への申立印紙代、鑑定費などを含むと、数十万〜数百万円かかることが一般的です。
示談やADRにとどめれば費用を抑えられる一方、訴訟になれば更に高額となる可能性があります。
裁判費用は負けた側が払うのですか?
裁判費用(印紙代・郵送費・鑑定料など)は原則として敗訴者が負担します(民訴法61条)。
ただし、相手の弁護士費用については実費からは除外され、賠償請求項目の一部として患者側が主張するにとどまります。
また、実務上、敗訴時に相手側から費用請求されるケースは稀です。
まとめ
誤診による医療訴訟では、診断ミスや問診不足などで重い後遺症や死亡が発生する事例が多く、医師の過失が争点となります。
損害賠償を請求するには、過失・損害・因果関係の3要件を立証する必要があります。
誤診を認めない場合は、弁護士に相談して、カルテや検査結果を集めて医療調査を行い、必要に応じて専門医による意見書を取得します。
示談・調停・医療ADRを経て最終的には裁判となり、慰謝料や治療費、逸失利益の請求が可能です。
しかし、費用や期間の負担も大きく、勝訴率は約20%と低いため、慎重な対応が求められます。
誤診による医療訴訟で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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