「痔だと思っていたら実は大腸癌だった」——そんな誤診の話を耳にしたことはありませんか?
大腸癌は初期症状が軽微で、痔や過敏性腸症候群など他の病気と間違われやすいため、誤診が起こるリスクが少なくありません。
検査や診断のタイミングを誤れば、発見の遅れが命取りになることもあります。
本記事では、大腸癌の誤診がなぜ起きるのか、その背景や症状の違い、誤診を防ぐために知っておくべき検査方法について解説します。
さらに、誤診によって重大な結果を招いた場合の法的対処法や医療訴訟の実例も紹介しています。正しい知識を持つことで、自分や家族の命を守る手助けとなるはずです。
最終更新日: 2025/6/10
Table of Contents
大腸癌と誤診の現状
大腸癌の罹患率・死亡率と社会的背景
日本では大腸癌の罹患率と死亡率が増加傾向にあり、特に高齢化社会の進行と食生活の欧米化が影響しています。
国民の健康意識の高まりとともに、早期発見・早期治療の重要性が認識されつつありますが、依然として検診受診率の向上が課題となっています。
大腸癌が誤診されやすい理由
大腸癌は初期症状が軽微で、痔や過敏性腸症候群など他の疾患と症状が似ているため、誤診されやすい傾向があります。
また、検査結果の転記ミスや医師間の情報共有不足など、医療現場でのヒューマンエラーも誤診の一因となっています。
大腸癌と痔の症状の違い・共通点
大腸癌の主な症状(血便、便秘、下痢、腹痛など)
大腸癌の初期症状には、血便、便秘、下痢、腹痛、体重減少などが挙げられます。これらの症状は他の消化器疾患と共通しているため、見過ごされがちです。
特に血便は痔と誤解されやすく、注意が必要です。症状が持続する場合は、専門医の診察を受けることが重要です。
痔の症状と大腸癌との見分けの難しさ
痔の症状には、排便時の出血、痛み、かゆみ、腫れなどがあります。大腸癌と痔は共に血便を伴うことがあり、自己判断で痔と決めつけるのは危険です。
特に出血が持続する場合や、他の症状を伴う場合は、専門医の診察を受けることが推奨されます。
症状が似ている時の注意点
大腸癌と痔は症状が似ているため、自己判断で病状を軽視することは避けるべきです。
特に出血が続く、便通に変化がある、体重減少が見られる場合は、早期に医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。
大腸癌の誤診が起こる主な原因
初期症状の乏しさと検査の遅れ
大腸癌は初期段階では自覚症状がほとんどなく、血便や腹痛などの症状も痔と誤解されやすいため、受診が遅れるケースが多いです。
特に右側結腸に発生する癌は症状が出にくく、気づいた時には進行していることもあります。早期発見のためには、定期的な検診や便潜血検査が重要です。
検査や画像診断における誤診リスク
大腸癌の診断には内視鏡検査や画像診断が用いられますが、病変の見落としや誤認が発生することがあります。
特に病理検査では、病理医の経験や技術により診断結果が左右されるため、誤診のリスクが存在します。また、医師間の情報共有不足や専門医の不足も誤診の要因となります。
医師の説明義務・検査義務違反の事例
医師は患者に対して診療内容や検査結果について適切に説明する義務があります。
しかし、これを怠ると患者の判断を誤らせて、誤診や治療の遅れにつながる可能性があります。
説明義務違反が認められたら、医師や医療機関に対して損害賠償が請求される可能性があります。
大腸癌誤診による医療訴訟の実例
痔と誤診され癌の発見が遅れた事例
ある患者は、排便時の出血を痔と診断されて、治療を受けていました。しかし、症状が改善せず再検査を受けた結果、大腸癌であることが判明しました。
誤診により癌の発見が遅れたことで、進行した状態での治療となり、患者は医療機関に対して損害賠償を求める訴訟を提起しました。
病理検査の誤診事例
別のケースでは、内視鏡検査で採取された組織の病理検査において、良性と診断された病変が実際には悪性の大腸癌であることが後に判明しました。
病理医の診断ミスにより、適切な治療が遅れて、患者の病状が悪化しました。この誤診に対して、患者は医療機関を相手取り訴訟を起こしました。
判決のポイントと医療機関の責任
これらの訴訟において、裁判所は医師の診断義務や説明義務の履行状況を重視しました。判決では、医師の注意義務違反や情報提供の不備が争点となりました。
誤診が医師の過失によるものであり、患者に損害が生じたと認定されたら、医療機関には損害賠償責任が課される可能性があります。
大腸癌の誤診が疑われる時の対処法
病院への説明依頼と診療情報の開示
誤診が疑われたら、まずは医療機関に対して診療内容の説明を求めて、診療情報の開示を請求することが重要です。
厚生労働省の指針では、患者が診療記録の開示を求めた際、医療機関は原則としてこれに応じるべきとされています。
診療記録には、診療録、検査結果、画像データなどが含まれ、これらを確認することで、診断や治療の経緯を把握できます。
弁護士に相談する
診療内容の説明を聞いて、誤診の可能性があると感じたら、医療過誤に精通した弁護士に相談することが有効です。
特にがんの見落としに関する訴訟では、医学的知識と法律の双方に精通した専門家の助言が重要となります。
専門医による医療調査の重要性
誤診の有無を明確にするためには、第三者の協力医(各科の専門医)による医療調査が重要です。医療調査は、方針を検討する際の重要な証拠となります。
診療記録や検査結果を基に、適切な診断や治療が行われていたかを評価してもらうことで、医療機関の過失の有無を判断できます。
<参考>
示談交渉から訴訟への流れ
誤診が明らかになったら、まずは医療機関との示談交渉を試みることが一般的です。示談が成立しない場合、調停や医療ADRに進むことになります。
調停や医療ADRでも和解に至らなかったら、訴訟を検討します。ただし、訴訟は勝訴率が低く、長期にわたる可能性が高い点に注意が必要です。
訴訟では、診療記録や専門医の意見書などの証拠を基に、医療機関の過失と損害の因果関係が争点となります。
過去の事例では、大腸癌の見落としにより慰謝料が認められたケースもあります。
<参考>
医者が誤診やミスを認めない時の対処法は?|医療調査・医師意見書
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科に関しては相談件数が多いものの、実際に医療過誤である事案はほとんど無いです。このため弊社においても、医師意見書の作成実績がありません。
大腸癌の誤診でよくある質問
大腸癌と痔の違いは?
痔は肛門の近くで出血して、鮮やかな赤色の血が見られることが多く、排便時の痛みや肛門の見た目の変化が特徴です。
一方、大腸癌は大腸内で発生して、初期は無症状ですが進行すると便に血が混じったり、便が細くなる、腹痛、体重減少などが現れます。
症状に違和感を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診して、適切な検査を受けましょう。
大腸癌と痔の誤診はよくあるの?
大腸癌と痔はどちらも血便や下血を伴うため、誤診が起こる可能性があります。
特に初期の大腸癌は自覚症状が乏しく、痔と診断されて治療が遅れるケースも報告されています。
出血が長引く場合は、精密検査や大腸内視鏡検査を早期に受けることが大切です。
便潜血検査の精度はどのくらいですか?
便潜血検査は大腸癌のスクリーニングに広く使われていますが、精度は限定的です。陽性の場合、大腸ポリープが見つかる確率は約50%、大腸癌は2~3%程度です。
最新の免疫法(FIT)では感度約84%と報告されていますが、偽陰性もあるため、症状があれば内視鏡検査が推奨されます
まとめ
日本では高齢化や食生活の変化により大腸癌の罹患率と死亡率が増加しています。
初期症状が痔や他の腸疾患と似ているため誤診されやすく、検査ミスや医師間の情報不足も原因となります。
血便や腹痛などの症状が続く場合は自己判断せず、早期に専門医を受診することが重要です。
誤診が疑われた際は診療記録の開示を求めて、必要に応じて弁護士や専門医による調査を行います。
医療過誤として損害賠償を請求するには、医師の過失と損害の因果関係を証明する必要があり、弁護士や専門医の協力のもと証拠を集めることが重要です。
大腸癌の誤診で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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