医療過誤によって心身に深い傷を負ったにもかかわらず、裁判でなかなか認められない――。そんな現実に直面している方は少なくありません。
「医療裁判は勝てない」とよく耳にしますが、その背景にはいくつもの専門的かつ構造的な壁が存在しています。
しかし、だからといってあきらめる必要はありません。医療裁判での勝訴には、正しい知識と戦略、そして信頼できる専門家の支援が不可欠です。
本記事では、なぜ医療裁判で勝ちにくいのか、その理由をわかりやすく解説するとともに、実質的な勝訴につながる実践的な方法や成功事例、注意すべきポイントについても紹介しています。
医療過誤の被害者として、少しでも可能性を高めたいと考えている方にとって、希望の一歩となる情報をお届けします。
最終更新日: 2025/6/10
Table of Contents
医療裁判で勝訴しにくい4つの理由とは?
1. 証拠収集の難しさ
医療裁判では、診療録(カルテ)などの証拠が医療機関側に保管されており、患者側がこれらの情報を入手するのは困難です。
また、カルテの改ざんや隠蔽のリスクもあるため、証拠保全手続きなどの法的手段が必要となるケースがあります。
これらの手続きには専門的な知識と費用が伴うため、患者側にとって大きな負担となります。
2. 医療専門知識の必要性
医療裁判では、専門的な医学知識が求められます。患者側の弁護士が医学的な問題点を理解して、裁判官に分かりやすく説明する能力が必要です。
しかし、医学の専門性が高いため、適切な知識を持つ弁護士を見つけることが難しく、裁判の進行に支障をきたすケースが多いです。
3. 医療裁判の協力医を探すことは難しい
医療裁判で使用する医師意見書の作成を引き受けてくれる医師は滅多にいません。医療裁判では医師意見書は必須です。
しかし、ほとんどの事案で、協力医を見つけ出すのは至難の業と言えます。信頼できる協力医を見つけることが、医療裁判において大きな課題となっています。
<参考>
【医療訴訟】医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
4. 医療過誤の立証が必要
医療裁判で勝訴するためには、医師の過失と患者の損害との因果関係を明確に立証する必要があります。
しかし、医療行為の結果が複雑であるため、過失の有無や因果関係を証明するのは容易ではありません。
専門的な証拠や医師意見書が求められ、患者側にとって高いハードルとなります。
医療裁判で実質的に勝訴する効果的な戦略
医療裁判で勝てる確率は約20%
医療裁判において、患者側が勝訴する割合は約20%程度だと報告されています。
これだけ勝訴率が低い理由は、証拠の収集や専門的な知識の必要性など、さまざまな要因が影響しています。
そのため、訴訟を提起する前に、医療裁判で勝訴する可能性を慎重に評価することが重要です。
医療過誤は示談や和解での解決を目指すべき
医療訴訟は平均して約2年の審理期間を要するため、精神的・経済的な負担が大きいと言われています。
そのため、訴訟に進む前に、示談や和解といった解決方法を検討することが推奨されます。
示談や和解によって、時間と費用を節約して、双方が納得できる解決を図ることが可能です。
適切な弁護士の選定
医療裁判は高度な専門性を要するため、医療事件に精通した弁護士の選定が不可欠です。
医学的知識を持ち、協力医とのネットワークを有する弁護士を選ぶことで、訴訟の成功率を高めることができます。
証拠の収集と保全
医療過誤を立証するためには、診療録(カルテ)などの証拠が不可欠です。
証拠の改ざんや隠蔽を防ぐため、裁判所を通じた証拠保全手続きを行うことが推奨されます。
この手続きにより、証拠の信頼性を確保して、医療訴訟を有利に進めることが可能です。
協力医の確保が必須
医療裁判では、専門的な意見を提供する協力医の存在が重要です。協力医は、医療行為の適否や過失の有無について専門的な見解を示して、裁判所の判断を支援します。
信頼できる協力医の確保は、極めて難しいのが実情です。医療過誤の可能性がある事案でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
尚、弊社は弁護士からの依頼しか受けていません。個人の方からのお問い合わせは、固くお断りしております。個人の方は、必ず弁護士を通じてお問い合わせください。
<参考>
協力医の探し方と意見書のもらい方|医療過誤、医療訴訟
医療裁判の注意点とリスク
実際には医療過誤ではない事案が多い
裁判になるのは、治療結果が悪いケースばかりです。しかし、弊社の経験では、治療結果が悪かったのは不可抗力によるものがほとんどです。
医療は不確実性に満ちた領域なので、ベストを尽くしても治療結果が悪いことは日常茶飯事です。
そして、医師は日々研鑽に励んでいるため、明らかな知識不足による事案は滅多に無いのが実情です。
医療過誤か否かの調査が必須
医療過誤を主張するには、医師の過失、損害、因果関係の3要件を立証する必要があります。
これには、診療録の入手や医学的知見の収集、協力医の意見など、専門的な調査が不可欠です。調査には時間と労力がかかるため、慎重な対応が求められます。
訴訟費用を回収できないリスクがある
医療裁判では、訴訟費用として裁判所への手数料、郵便切手代、弁護士費用、鑑定費用などが発生します。敗訴したら、これらの費用を回収できないリスクがあります。
また、勝訴しても、賠償金が訴訟費用を上回らない可能性もあるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
医療裁判は長期にわたる
医療裁判は、証拠収集や鑑定、専門家の意見などが必要となるため、審理期間が長期化する傾向があります。
平均して2年程度、場合によってはそれ以上かかることもあります。その間、精神的・経済的な負担が続くため、訴訟を起こす前に十分な覚悟と準備が必要です。
医療訴訟のポイント【弁護士必見】
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスか否かについての医療調査実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科に関しては相談件数が多いものの、実際に医療過誤である事案はほとんど無いです。このため弊社においても、医師意見書の作成実績がありません。
医療裁判は勝てないでよくある質問
医療事故と医療過誤の違いは?
医療事故とは、医療従事者の過失有無とは無関係で、病院などの医療機関で起こったすべての事故を指します。例えば、病院内で他の患者さんにぶつかって転倒しても、医療事故になります。
一方、医療過誤とは、医師や看護師などの医療従事者が注意を払って対策していれば防ぐことができた事故です。医療過誤は、医療事故の中に含まれます。
医療裁判(医療訴訟)とは
医療訴訟とは、医療過誤に対する裁判です。具体的には以下の2つのケースがあります。
- 医療従事者が負っている注意義務に対する違反(注意義務違反)
- 医療過誤のために、患者側に損害が生じた
医療事故の具体的な事例は?
病院内で転倒して骨折したケースなどは、医療過誤ではなく医療事故になります。
医療過誤の具体的な事例は?
手術の医療過誤
手術による医療過誤は、術者が誤って血管や神経を損傷したり、麻酔科医師の麻酔管理ミス、病理の誤診断などが挙げられます。
薬物療法の医療過誤
薬物の投与分量や投与頻度を間違えたり、投与する薬物を間違えたケースが挙げられます。医薬品情報に収録されていない用途に使用したケースも該当します。
その他の医療過誤
誤診や術後管理の注意義務違反などが挙げられます。また、医師による説明義務違反は、最もメジャーな医療過誤の具体的事例のひとつと言えるでしょう。
医療訴訟の和解率は?
医療訴訟では、判決に至る前に和解で解決するケースが多く、全体の約52.4%~52.7%が和解で終了しています。
一方、判決に至るのは約29.7~31.9%であり、和解が主な解決手段となっています。和解により、裁判の長期化や費用の増加を避けることが可能です。
医療裁判の流れは?
医療裁判は、以下のステップで進行します。
1. 証拠収集・保全
カルテや検査記録などの資料を収集し、必要に応じて裁判所を通じて証拠保全を行います。
2. 医療調査
収集した証拠をもとに、専門医の意見を求め、医療過誤の有無を判断します。
3. 訴訟の提起
裁判所に訴状を提出して、正式に訴訟を開始します。
4. 争点整理
原告と被告の主張を整理し、争点を明確にします。
5. 証拠調べ
提出された証拠や証人の証言をもとに、事実関係を確認します。
6. 鑑定
必要に応じて、裁判所が専門家に意見を求めます。
7. 和解
裁判の途中で、双方が合意に達すれば和解が成立します。
8. 判決
すべての審理が終了した後、裁判所が判決を下します。
まとめ
医療裁判は、証拠収集の難しさや専門知識の必要性、協力医の確保の困難さ、過失の立証の複雑さなどから、患者側の勝訴率はわずか20%程度と低くなっています。
訴訟には時間や費用がかかり、精神的・経済的負担も大きいため、和解や示談を検討することが現実的です。
医療過誤を主張するには、診療録や医師意見書などの専門的な証拠が必要で、信頼できる専門弁護士や協力医の存在が成功の鍵となります。
医療過誤の可能性がある事案でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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