「病院を訴える」と聞くと、多くの方がためらいや不安を感じるかもしれません。
しかし、明らかな医療ミスによる被害を受けたら、泣き寝入りするのではなく、正当な手続きに則って責任を問うことができます。
実際に医療訴訟を検討するには、どのような方法があるのか、どの段階で弁護士に相談すべきかなど、知っておくべきことは多くあります。
また、証拠をどう集めればよいか、慰謝料や賠償金の相場、判例の傾向なども判断材料になります。
本記事では、医療過誤に対する訴訟の基本的な流れや費用、注意点を詳しく解説して、病院とのトラブル解決に向けた第一歩を後押しします。
最終更新日: 2025/6/10
Table of Contents
病院を訴える方法は?
民事上は損害賠償請求
医療過誤によって患者が損害を被ったら、民事訴訟を通じて病院に対して損害賠償を請求することが可能です。
この請求には、医師や医療機関の過失、損害の発生、因果関係を立証する必要があります。証拠としては、診療記録、看護記録、検査結果などが重要となります。
医療訴訟を起こす前に、まずは医療機関と話し合い、必要に応じて弁護士に相談することが推奨されます。
刑事責任の追及
医療過誤が重大な過失や故意によるものであると、刑事責任を追及することも考えられます。
例えば、無免許での医療行為や、明らかな医療ミスによって患者が死亡したケースなどが該当します。
刑事告訴を行うには、警察や検察に対して被害届を提出して、捜査を依頼する必要があります。
ただし、刑事事件として立件されるには高いハードルがあり、証拠の収集や専門的な知識が求められます。
行政上の責任追及は難しい
医療機関に対する行政上の責任追及は、民事や刑事に比べて難易度が高いとされています。
例えば、厚生労働省や都道府県の医療監視部門に対して苦情を申し立てることは可能ですが、これにより直接的な賠償や処分が下されるケースは稀です。
行政機関は主に医療機関の監督や指導を行う立場にあり、個別のトラブル解決には限界があります。
そのため、具体的な損害賠償を求める場合は、民事訴訟を検討することが現実的です。
民事上の損害賠償請求の流れ
病院の説明を聞く
医療過誤が疑われたら、まずは病院から説明を受けることが重要です。この際、感情を抑えて冷静に対応して、医師の説明内容を詳細に記録することが求められます。
診療経過や処置内容、異常発生時の対応などを正確に把握することで、後の証拠収集や法的手続きに役立ちます。
弁護士に相談する
医療過誤の疑いがあれば、早期に医療問題に精通した弁護士に相談することが推奨されます。
弁護士は、証拠の収集や訴訟の可能性についてのアドバイスを提供して、適切な対応策を提案します。
また、証拠保全手続きやカルテの開示請求など、専門的な手続きを代行することで、被害者の負担を軽減します。
医療調査を行って方針を決める
弁護士と連携して、医療調査を実施することで、医療過誤の有無や過失の程度を明らかにします。
医療調査には、診療記録、看護記録、検査結果の精査や、協力医(専門医)の意見聴取が含まれます。
医療調査の結果を基にして、示談交渉や訴訟提起など、今後の対応方針を決定します。
示談交渉
医療過誤が確認されたら、病院側と示談交渉を行うケースが多いです。示談では、損害賠償額や再発防止策などについて合意を目指します。
弁護士が、病院との示談交渉を代理することで、公平な条件での解決を期待できます。
調停と医療ADR
示談が成立しない場合、裁判所の調停や医療ADR(裁判外紛争解決手続き)を利用することが検討されます。
これらの手続きは、訴訟よりも迅速かつ柔軟な解決が可能であり、当事者間の合意形成を促進します。
訴訟
調停や医療ADRでも解決が得られない場合は、民事訴訟を提起することになります。
訴訟では、医療過誤の事実や損害の程度を証拠に基づいて主張して、裁判所の判断を仰ぎます。
和解
訴訟の途中でも、当事者間で合意できれば、和解によって訴訟を終了させることが可能です。和解は、裁判所の判断を待たずに、双方が納得する条件での解決を図ります。
判決
和解に至らない場合、裁判所が判決を下します。判決では、医療過誤の有無や損害賠償の金額が確定されます。判決に不服がある場合は、控訴することも可能です。
刑事責任の追及方法は?
医療過誤により患者が死亡または重篤な障害を負ったら、医療従事者に対して刑事責任を問うことが可能です。
この罪は、業務上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に成立して、拘禁刑や罰金が科される可能性があります。
刑事責任の追及は、警察や検察などの捜査機関が行い、最終的な判断は裁判所が下します。
被害者やその家族は、警察に告訴状を提出することで捜査を促せますが、起訴や有罪判決に至るかどうかは捜査機関の判断に委ねられます。
病院を訴える費用の相場
医療過誤に対する民事訴訟を提起する際の費用は、事案の複雑さや請求額によって大きく異なります。
一般的な弁護士費用の内訳として、以下の金額が最低限の目安とされています。
- 法律相談料:約1.1万円
- 過失調査費用:約22万円
- 証拠保全手続き:約11万円
- 示談交渉:約22万円
- 訴訟の着手金:約55万円
- 報酬金:賠償金額の約11%
- 日当:約1.1万円
これらを合計すると、相当な費用がかかる可能性があります。ただし、勝訴したら、相手方に弁護士費用の一部を請求できるケースもあります。
また、弁護士によっては分割払いに応じることもあるため、事前に相談することが重要です。
病院を訴える際の注意点
医療過誤の3要件の立証が必須
医療過誤で損害賠償を請求するには、「過失」「損害」「因果関係」の3要件を立証する必要があります。
例えば、医師の医療ミス(過失)により患者が後遺症を負った(損害)場合、そのミスと後遺症との間に直接的な因果関係があることを証明しなければなりません。
特に、医師の過失を証明することは難しく、損害賠償請求できない事案も珍しくありません。
<参考>
医療過誤の3要件とは?損害賠償請求の流れも解説|医療調査・医師意見書
時効は意外と短い
損害及び加害者を知ったときから3年間、または医療過誤が発生してから20年で時効が成立します。
また、債務不履行に基づく損害賠償請求権は、医療行為から10年で時効が成立します。
したがって、医療過誤が疑われる場合は、できるだけ早期に専門家に相談することが重要です。
医療調査の重要性
医療訴訟では、診療記録(カルテ等)、看護記録、検査結果などが重要な証拠となります。
これらの記録には、診療経過や患者の状態が詳細に記載されており、医師の過失や因果関係を立証するために不可欠です。
また、診療記録の記載内容が裁判の結果を左右することもあるため、正確な記録の収集と分析が求められます。
このため、医療調査では、実臨床に踏み込んだ分析を行います。そして、医療調査では、専門的な知識を持つ協力医が重要な役割を果たします。
しかし、協力医を見つけることは容易ではなく、医療訴訟に精通した専門機関の協力を得ることが重要です。
<参考>
協力医の意見を受け入れる
協力医は、客観的な立場で、医療行為の適否や過失の有無について専門的な見解を提供します。
このため、結果は悪かったが医療過誤ではない事案では、患者さん家族にとって受け入れ難い医療調査結果になります。
感情面で受け入れられないのは理解できますが、客観的に判断して医療過誤ではない事案に、損害賠償請求できません。
実際、弊社に持ち込まれる相談では、結果が悪いだけで医療過誤ではない事案が8割以上を占めています。
医療は人間という生き物を対象にしているので、基本的に不確実です。医療訴訟を検討されている方には、是非ご理解いただきたいと思います。
医療訴訟は長期戦を覚悟する
医療訴訟は、専門的な知識や証拠の収集が必要であり、訴訟期間が長期化する傾向があります。
裁判所での審理や証人尋問、専門家の意見書の提出など、多くの手続きが必要となるため、数年にわたる訴訟となることも珍しくありません。
そのため、精神的・経済的な負担を考慮しつつ、長期戦を覚悟する必要があります。
示談や和解が現実解のケースも多い
医療訴訟は長期化しやすく、精神的・経済的な負担が大きいため、示談や和解による解決が現実的な選択肢となるケースが多いです。
示談や和解は、訴訟よりも早期に解決が図れ、双方の負担を軽減することが可能です。また、裁判所を介さないため、プライバシーの保護に寄与する場合があります。
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科に関しては相談件数が多いものの、実際に医療過誤である事案はほとんど無いです。このため弊社においても、医師意見書の作成実績がありません。
病院を訴えるでよくある質問
病院へのクレームはどこへ訴えればいいですか?
病院に対するクレームや医療過誤の疑いがある場合、以下の窓口に相談することができます。
- 病院内の相談窓口
- 各都道府県の医療安全支援センター
- 日本医療機能評価機構
- 医療過誤に詳しい弁護士
<参考>
医療ミスされたらどうする?対処法を分かりやすく解説|医師意見書
医療訴訟は難しいですか?
医療訴訟は、以下の理由から難易度が高いとされています。
1. 専門的な医学知識の必要性
弁護士には高度な医学知識が求められます。
2. 協力医の確保
専門分野の医師による意見書や証言が必要です。
3. 裁判官への説明
医学的な問題点を裁判官に分かりやすく伝える必要があります。
これらの要因により、医療訴訟は他の民事訴訟と比べて複雑であり、専門的な対応が求められます。
<参考>
協力医の探し方と医師意見書のもらい方|医療過誤、医療訴訟
まとめ
病院を訴えるには、主に民事訴訟を通じた損害賠償請求が現実的です。刑事責任を問うことも可能ですが、立証は難しく、専門的な知識と証拠が求められます。
損害賠償請求するには、医師の過失、損害の発生、因果関係の3要件を証明する必要があり、診療記録や専門医の意見書が重要な証拠となります。
弁護士に相談して、医療調査や示談交渉を経て、解決できない場合は訴訟に進みます。
医療訴訟は長期化しやすく、精神的・経済的負担も大きいため、慎重な準備と覚悟が必要です。
病院への損害賠償請求で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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