医療を受けたにもかかわらず症状が悪化したり、新たな問題が生じたりしたら、「これは医療ミスでは?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
しかし、医療現場で起きた不利益がすべて「医療過誤」として法的に認められるわけではありません。実際に損害賠償を請求するには、「医療過誤の3要件」を満たす必要があります。
この記事では、その3要件についてわかりやすく解説するとともに、損害賠償請求の流れや関係機関の役割、そして医療調査や医師意見書の重要性についてもご紹介します。
ご自身やご家族のケースが医療過誤に該当するかを判断する際の参考にしてください。
最終更新日: 2025/6/10
Table of Contents
医療過誤で損害賠償請求できる3要件とは?
1. 債務不履行や医療ミス(不法行為)がある
医師や病院が診療契約に基づく注意義務を怠り、患者に損害を与えたら、債務不履行や不法行為が成立します。
債務不履行
債務不履行とは、医師と患者の間の契約(診療契約)に基づく義務を果たさず、患者に損害を与えることです。
債務不履行の具体例として、以下のようなものが挙げられます。
- 手術前の必要な検査を怠った
- 患者への十分な説明義務を果たさなかった
- 診療契約で約束された治療を実施しなかった
不法行為
不法行為とは、故意または過失により他人の権利や利益を侵害したケースです。医療現場では、明らかなミスや不注意による事故が該当します。
不法行為の具体例として、以下のようなものが挙げられます。
- 手術器具の置き忘れ
- 投薬量の重大な誤り
- 医療機器の明らかな操作ミス
2. 不法行為で損害が生じている(因果関係)
医療側の過失や契約違反によって、実際に患者に損害が発生しているという、不法行為と損害の因果関係が必要です。
ここでいう損害は、身体的な被害(後遺症や死亡)、精神的苦痛、経済的損失(治療費や休業損害など)が含まれます。
3. 発生した損害を金銭に換算できる
発生した損害が金銭的に評価できることも要件のひとつです。たとえば、治療費や入院費、逸失利益、慰謝料などが該当します。
医療過誤で損害賠償請求する相手は?
病院
多くの場合、病院が請求の対象となります。病院が法人の場合はその法人が、個人経営の場合は開設している医師が対象です。
医師
医師個人を相手にするケースもありますが、実際には病院側に使用者責任や契約責任が問われることが多いです。
一方、病院の使用者責任が認められない場合には、医師個人への請求が検討されます。
医療機器メーカーや国
医療機器の欠陥が原因で患者に損害が生じたら、製造物責任法に基づき、医療機器メーカーが損害賠償責任を負う可能性があります。
また、国が提供する医療制度や行政の不備が原因で損害が発生した場合には、国に対しても損害賠償請求が検討されるケースもあります。
医療過誤で損害賠償請求する流れ
医療調査を行う
まずは、診療録(カルテ)や検査結果などを弁護士が精査して、医療ミスの有無を客観的に判断します。
一方、弁護士には医療の専門知識が充分にあるとは言えないので、協力医に医療調査を依頼するケースが多いです。
医療調査は、損害賠償請求ができるかどうかを判断する材料になるので、必要不可欠なステップと言えます。
<参考>
示談交渉
医療過誤がある場合には、医療機関との間で直接交渉を行い、損害賠償について合意を目指します。この段階で解決できれば、訴訟に進まずに済みます。
調停や医療ADR
示談が成立しない場合、裁判所の調停や医療ADR(裁判外紛争解決手続き)を利用して、第三者の仲介のもとで解決を図ります。
医療訴訟
調停や医療ADRでも解決しないと、民事訴訟を提起します。裁判では、証拠や専門家の証言をもとに、医療過誤の有無と損害賠償の適否が判断されます。
和解
医療訴訟の過程で、双方が合意に達すれば、裁判所の関与のもとで和解が成立します。和解により、判決を待たずに解決することが可能です。
判決
和解が成立しないと、裁判所が判決を下します。判決により、医療過誤の有無や損害賠償の金額が最終的に決定されます
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科に関しては相談件数が多いものの、実際に医療過誤である事案はほとんど無いです。このため弊社においても、医師意見書の作成実績がありません。
医療過誤の3要件でよくある質問
医療事故の3つの責任は?
医療事故が発生したら、関係者には主に以下の3つの法的責任が問われます。
1. 民事責任
患者や遺族に対する損害賠償義務
2. 刑事責任
過失により患者を傷害・死亡させた場合の刑罰(例:業務上過失致死傷罪)
3. 行政責任
厚生労働省による免許の停止や取り消しなどの行政処分
これらの責任は同時に問われることもあり、医療従事者や医療機関は慎重な対応が求められます。
医師や看護師が負う3つの法的責任は?
医師や看護師が医療過誤を起こしたら、以下の3つの法的責任を負う可能性があります。
1. 民事責任
患者や遺族に対する損害賠償義務
2. 刑事責任
過失により患者を傷害・死亡させた場合の刑罰(例:業務上過失致死傷罪)
3. 行政責任
厚生労働省による免許の停止や取り消しなどの行政処分。
これらの責任は、医療従事者個人に対して同時に問われることもあります。
医療過誤の基準は?
医療過誤と判断されるためには、以下の3要件を満たす必要があります。
1. 過失の存在
医療従事者が注意義務を怠ったこと。
2. 損害の発生
患者に実際の損害(身体的・精神的・経済的)が生じたこと。
3. 因果関係
過失と損害との間に直接的な因果関係があること。
これらの要件がすべて揃ったら、医療過誤として法的責任が問われる可能性があります。
まとめ
医療過誤で損害賠償を請求するには、「過失」「損害」「因果関係」の3要件が必要です。
例えば、検査ミスや投薬ミスなど医療側の注意義務違反で患者に被害が出たら、それが医療ミスと認められます。
また、被害は治療費や精神的苦痛など金銭に換算可能である必要があります。
請求の相手は主に病院や医師ですが、機器の欠陥ならメーカー、制度不備なら国も対象になります。
医療過誤の可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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