後縦靭帯骨化症(OPLL)は、脊椎に起こる疾患の一つで、進行すると神経を圧迫して、痛みやしびれなどの症状を引き起こす可能性があります。
後縦靭帯骨化症が、どの部位で発生しやすいのかを知ることは、早期発見や適切な対処に役立ちます。
本記事では、後縦靭帯骨化症の好発部位に加え、発症しやすい年齢や性別、症状、診断方法、治療法について詳しく解説しています。
また、交通事故による後遺障害との関係についても触れて、万が一の際に役立つ情報を提供しています。
最終更新日: 2025/4/8
Table of Contents
後縦靭帯骨化症(OPLL)の好発部位は?
頚椎後縦靭帯骨化症が最も多い
後縦靭帯骨化症は、頚椎に最も多く発生します。頚椎の中では、特にC3~C7に多く発生します。
頚椎後縦靭帯骨化症は、手足のしびれや手指の細かい動作の困難さ、歩行障害などの脊髄症状を引き起こすことがあります。
胸椎後縦靭帯骨化症は頚椎に次いで多い
胸椎での後縦靭帯骨化症は、頚椎に次いで多く見られます。胸椎では、T4~T9に発生することが多いです。
胸椎後縦靭帯骨化症は、主に下肢のしびれや痛み、歩行障害などの症状を引き起こすことがあります。
腰椎後縦靭帯骨化症の頻度は低い
頚椎や胸椎に比べると頻度は低いですが、発生することもあります。腰椎後縦靭帯骨化症は、歩行時の下肢のしびれや痛み、脱力感などの症状を引き起こすことがあります。
後縦靭帯骨化症を知ろう
後縦靭帯骨化症の概説
後縦靭帯骨化症は、脊椎を支える後縦靭帯が骨化して、脊髄や神経根を圧迫することで神経症状を引き起こす疾患です。40歳以上の男性に多く見られ、指定難病に指定されています。
後縦靭帯骨化症の原因と病態
後縦靭帯骨化症の明確な原因は未解明ですが、遺伝的要因や糖尿病、肥満などが関連すると考えられています。骨化した後縦靭帯が脊髄や神経根を圧迫して、神経症状を引き起こします。
後縦靭帯骨化症の症状
初期症状として、首や肩のこり、手足のしびれや痛みが現れます。進行すると、手指の細かい動作の困難、歩行障害、排尿・排便障害などが生じることがあります。
後縦靭帯骨化症の診断
診断には、レントゲン検査、CT検査、MRI検査などの画像検査が用いられ、後縦靭帯の骨化や脊髄の圧迫状況を評価します。また、神経学的検査で感覚障害や筋力低下の有無を確認します。
後縦靭帯骨化症の治療
治療は、症状の程度や進行状況に応じて保存療法と手術療法が選択されます。保存療法では、薬物療法や装具による固定、物理療法などが行われます。
手術療法は、脊髄の圧迫が強い場合に検討され、前方除圧固定術や後方除圧術などの方法があります。
後縦靭帯骨化症の自然経過と予後
後縦靭帯骨化症は進行性の疾患であり、放置すると症状が悪化する可能性があります。手術によって進行を防ぐことは可能ですが、症状の回復度合いには個人差があり、しびれや筋力低下が残存することもあります。
後縦靭帯骨化症の後遺障害等級
中枢神経障害
後縦靭帯骨化症で脊髄損傷を生じた場合は、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号の可能性があります。
<参考>
脊髄損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
末梢神経障害
頚椎後縦靭帯骨化症の場合は、神経障害として12級13号、14級9号の可能性があります。
<参考>
頚椎捻挫の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
交通事故では素因減額が問題になりやすい【弁護士必見】
後縦靭帯骨化症が原因で後遺障害が認定されると、素因減額が問題となります。素因減額とは、事故の前から持っていた病気や体の特徴が損害を大きくした場合に、賠償金が減額される仕組みです。
後縦靭帯骨化症は事故前から存在するため、損害の拡大要因とされ、賠償額が3~5割減ることが多いです。減額割合を決める際には、脊柱管内の占拠率が重要で、適切な主張が求められます。
専門的な対応が必要なため、経験豊富な脊椎外科専門医の助けが重要です。後縦靭帯骨化症の素因減額でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
<参考>
後遺障害等級の認定事例
事例1:素因減額20%での和解成立
- 被害者:70歳
- 等級認定:2級1号
- 加害者側保険会社が素因減額50%を主張
- 素因減額20%で和解成立
コメント
歩行中に自動車にはねられた結果、ほぼ寝たきりの状態になりました。自賠責保険では2級1号の後遺障害等級認定されましたが、加害者側保険会社がOPLLの既往を指摘して素因減額50%を主張しました。
脊椎脊髄外科専門医が、靭帯骨化の脊柱管内占拠率、OPLLの自然経過、各種ガイドラインを引用して素因減額は16%である医師意見書を作成した結果、素因減額20%で和解成立しました。
事例2:12級13号に認定
- 被害者:75歳
- 初回申請:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
- 異議申し立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
コメント
交通事故後に首の痛みと上肢のしびれを自覚されていました。初回申請時に後遺障害診断書を作成した医師がMRIを確認しましたが、後縦靭帯骨化症の存在を見落としていました。
幸い、この患者さんは受傷後しばらくの間大学病院に通院されており、後縦靭帯骨化症の存在、それに由来する上肢の筋力低下や反射の異常について診療録に記載が確認できました。
これらの所見に基づいて、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。
事例3:14級9号に認定
- 被害者:62歳
- 初回申請:非該当
- 異議申し立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
コメント
交通事故後に首の痛みを自覚されていました。受傷から6ヵ月通院されましたが、頑固な首の痛みと上肢のしびれは改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されました。
画像検査を脊椎外科専門医が詳細に読影したところ、事故のレントゲンで後縦靭帯骨化症が存在することが明らかになりました。
これらの所見について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。
後縦靭帯骨化症の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
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等級スクリーニング
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等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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後縦靭帯骨化症の好発部位でよくある質問
後縦靭帯はどこにありますか?
後縦靭帯は、脊椎の椎体と呼ばれる四角い骨の背中側で、脊髄の前方に位置する靭帯です。この靭帯は、脊柱全体を縦に走り、各椎体を連結して脊椎の安定性を保つ役割を果たしています。
頚椎後縦靭帯骨化症はどの人種に多い病気?
頚椎後縦靭帯骨化症は、特に日本人を含む東アジアの人々に多く見られる疾患です。欧米諸国に比べて発症率が高いことが報告されており、遺伝的要因や生活習慣が関与している可能性が指摘されています。
まとめ
後縦靭帯骨化症(OPLL)は、脊椎を支える後縦靭帯が骨化して、神経を圧迫する病気です。原因は不明ですが、遺伝や糖尿病、肥満が関係すると考えられています。
特に頚椎(C3~C7)に多く発生して、手足のしびれや歩行障害を引き起こします。次いで胸椎(T4~T9)にも見られ、腰椎ではまれです。
診断には画像検査が用いられ、治療は薬やリハビリ、重症の場合は手術が行われます。放置すると悪化するため、早期発見と適切な治療が重要です。
交通事故で症状が悪化することがあり、後遺障害の認定や賠償に影響を与えることもあります。後縦靭帯骨化症でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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