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【医師が解説】素因減額と既往症や加齢による変性所見|交通事故

交通事故前に遭う前から、完全に健康体である人は少ないのではないでしょうか。事故前から健康上の問題があったり、痛い所があると、示談の際に保険会社との交渉で問題を生じることがあります。

 

保険会社から事故との因果関係を否定されたり、既往症のために後遺症が重くなったとして、素因減額の適応を主張されることがあります。

 

本記事は、素因減額の考え方を理解するヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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素因減額とは

 

素因減額とは、交通事故が起きる前からあった既往症のために後遺症が重くなった場合、既往症に起因した部分の後遺症の損害額を差し引くことです。

 

素因には、心の影響を受ける心因的要因と、体の影響を受ける身体的要因の2つの種類があります。

 

 

心因的要因

交通事故では、被害者の性格や社会での適応能力などの心の特徴(心因的要因)が、後遺症を重くする原因になりえます。そして、そのようなケースでは素因減額が適用されることもあります。

 

ただし、単に精神的に弱いといった理由だけで自動的に素因減額が適応されるわけではありません。被害者の心因的要因によって、後遺症が重くなったという因果関係が必要です。

 

例えば、鬱病などの既往症や、軽い事故なのに長期間の治療が必要だったり、通常のケースから逸脱した自覚症状があると素因減額が適応される可能性があります。

 

 

身体的要因

既往症があるからといって、自動的に素因減額が適応されるわけではありません。被害者の体の特徴や既往症(身体的要因)が事故の被害を広げたという証拠がある場合にのみ、素因減額の対象になります。

 

被害者の体の特徴に関しては、その程度が「病気」に該当するかどうかがポイントになります。つまり「病気」と言えるほどの特徴であれば素因減額が適応される可能性があり、病気と言えるほどではない場合は素因減額の対象になりません。

 

加齢による素因減額もありますが、これは年齢による普通程度の変化であれば「病気」とはみなされず、素因減額の対象にはなりません。

 

 

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素因減額の立証

素因減額の立証義務は加害者サイドにある

素因減額の立証義務は、素因減額を主張する加害者側にあります。その理由は、素因減額を主張した加害者が利益を得るからです。

 

 

素因減額で立証するべき内容

加害者が素因減額を主張するには、以下の点について医学的根拠に基づいて証明する必要があります。

 

  • 被害者の身体的・精神的特徴が病気と言える状態である
  • 被害者の損害が、交通事故だけでなく被害者の身体的・精神的疾患も影響している
  • 被害者の身体的要因や心因的要因を考慮すると、損害の分担を公平にするためには損害額を調整すべきである
  • 素因減額の割合を決める際に考慮した医学的所見

 

 

これらの点を、医学的根拠に基づいて立証することが、加害者側が素因減額を主張する際の重要なポイントです。

 

 

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【弁護士必見】素因減額を訴訟で争う際のポイント

既往症=素因減額ではない

既往症があるからといって、自動的に素因減額が適応されるわけではありません。被害者の既往症(身体的要因)が事故の後遺症を重くしたという証拠がある場合にのみ、素因減額の対象になります。

 

一方、保険会社は賠償金支払いを抑えるために、素因減額を積極的に主張します。このため、診断書に既往症が記載されていると、素因減額を主張されるケースが少なくありません。

 

このような事案では、既往症が後遺症を重くしたという医学的根拠が存在するのか否かがポイントになります。この点は各科の専門医でなければ正確に判断できないのが実情です。

 

 

<参考>
【日経メディカル】「いつの間にか骨折」悪化と判断され慰謝料が減額?!
【医師が解説】素因減額(既往症の寄与度)算出に便利な若杉判定基準

 

 

 

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体の特徴は「病気」に該当するかがポイント

被害者の体の特徴に関しては、その程度が「病気」に該当するかどうかがポイントになります。つまり「病気」と言えるほどの特徴であれば素因減額が適応される可能性があり、病気と言えるほどではない場合は素因減額の対象になりません。

 

例えば、太っていることが後遺症を重くした要因となった場合、肥満度が病的なレベルであれば素因減額の対象となりえます。一方、通常程度の肥満であれば素因減額の対象にはなりません。

 

 

加齢による変性

加齢による素因減額もありますが、年齢による普通程度の変化であれば「病気」とはみなされず、素因減額の対象にはなりません。

 

一方、高齢者の場合、変形性頚椎症などの加齢による変性所見を身体的要因として主張されることも珍しくありません。このような事案のポイントは「同年代の平均と比べてどうなのか」です。

 

いくら加齢による変性が強くても、同年代の平均程度であれば素因減額の対象にはなりません。一方、軽度の変性であっても若年者であれば素因減額の対象となりえます。

 

同年代の平均と比べてどうなのかを判断するには、専門医でなければ難しいのが現実です。素因減額でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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【後縦靭帯骨化症】素因減額20%での和解成立事例

事案詳細

  • 被害者:70歳
  • 等級認定:2級1号
  • 加害者側保険会社が素因減額50%を主張
  • 素因減額20%で和解成立

 

コメント
 

歩行中に自動車にはねられた結果、ほぼ寝たきりの状態になりました。自賠責保険では2級1号の後遺障害等級認定されましたが、加害者側保険会社がOPLLの既往を指摘して素因減額50%を主張しました。

 

脊椎脊髄外科専門医が、靭帯骨化の脊柱管内占拠率、OPLLの自然経過、各種ガイドラインを引用して素因減額は16%である医師意見書を作成した結果、素因減額20%で和解成立しました。

 

 

まとめ

 

素因減額とは、既往症のために後遺症が重くなった場合、既往症に起因した部分の後遺症の損害額を差し引くことです。素因減額を訴訟で争う際のポイントは以下の通りです。

 

  • 既往症=素因減額ではなく、後遺症を重くした証拠がある場合のみ、素因減額の対象になる
  • 加齢による素因減額については、「同年代の平均と比べて」普通程度の変化であれば、素因減額の対象にはならない

 

 

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