むちうちや腰椎捻挫では、自賠責保険の後遺障害14級9号に認定されるか否かで、賠償金の受取金額に天と地ほどの差があります。
後遺障害14級9号は、後遺障害では最も低い等級ですが、認定されるハードルは決して低くありません。非該当になった場合には、効果的に異議申し立てする必要があります。
本記事は、むちうちなどの後遺症が、後遺障害14級9号に認定されるための、効果的な異議申し立て方法を知るヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2024/7/5
Table of Contents
後遺障害14級9号とは
後遺障害14級9号の定義
後遺障害14級9号は、交通事故による後遺症が、「局部に神経症状を残すもの」として、自賠責保険に認定される等級です。
むちうち(頚椎捻挫、外傷性頚部症候群)や腰部捻挫で、6ヶ月以上通院しても痛みが続くケースが該当します。
後遺障害14級9号が認定される4つの条件
後遺障害14級9号が認定されるためには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 痛みやしびれなどの神経症状が残っている
- 症状が6ヵ月以上続いている
- 受傷時の状況や治療経過から症状の存在が説明できる
- 後遺障害診断書に症状が記載されている
これらの4つの条件をすべて満たすケースでは、後遺障害14級9号に認定される可能性があります。
ただし、4条件すべてを満たとしても、必ずしも後遺障害14級9号に認定されるわけではないことに注意が必要です。
後遺障害14級9号の後遺障害基準
前述の4つの条件を客観的に評価するために、自賠責保険は以下の項目について精査します。
- 通院期間
- 通院日数
- 症状の常時性
- 画像所見
通院期間
症状が6ヵ月以上続いていることの証明として、通院期間が重要です。後遺障害14級9号が認定されるためには、6ヵ月以上の通院期間が必要です。
通院日数
通院日数は10日/月以上が必要と言われています。通院日数が少ないと、ケガの程度が軽度と判断されるからです。
一方、整骨院だけしか通院していないと通院日数にカウントされません。月に2日以上は、必ず整形外科にも通院しましょう。
症状の常時性
「雨の日だけ痛い」「夕方になると痛くなる」などの症状では、常時性が無いと判断されて後遺障害14級9号には認定されません。
画像所見
後遺障害12級13号では、MRI検査などの画像検査で異常所見が存在することが必須ですが、14級9号では画像所見が少なくても認定される可能性があります。
しかし、加齢による変性所見も含めて、異常所見が全く無いと、後遺障害14級9号に認定される可能性はかなり低くなります。
後遺障害14級9号の異議申し立て
後遺障害の異議申し立てとは
後遺障害の審査結果が、非該当にされたり、予想より低い等級となることがあります。
このような場合には、審査機関である「損害保険料算出機構」に再申請、すなわち「異議申し立て」することが可能です。
後遺障害の異議申し立てでは、一度認定された等級が下がることはなく、しかも何回でも申請できます。
異議申し立ての手続きと流れ
異議申し立ての流れは以下のごとくです。
- 異議申立書などの必要書類や資料を準備する
- 損害保険料算出機構に提出
- 再審査の結果が通知される
異議申し立ての必要書類
異議申し立てするには、以下のような書類や検査結果が必要です。
【必ず必要な書類】
- 異議申立書
【必要に応じて提出する書類や資料】
<参考>
異議申し立ての費用
異議申し立ては無料ですが、新たな画像検査や後遺障害診断書などの書類が必要な場合には、その費用がかかる可能性があります。
異議申し立ての結果が出るまでの期間
異議申し立てから結果が出るまでの期間は、通常2~3か月です。しかし、難しい事案では、6ヵ月ほどかかるケースもあります。
【弁護士必見】異議申し立てのポイントと注意事項
異議申し立て成功率はたった11%しかない!
損害保険料率算出機構が公表している、自動車保険の概況という統計資料によると、2023年度(2022年度統計)では、異議申し立てされた10,353件の中で、1,111件しか等級が変更されませんでした。成功率が約10.7%しかない狭き門です。
<参考>
【日経メディカル】後遺障害の異議申し立て、認定率はなぜ低い?
異議申し立て成功のポイント
弊社は年間1000例に及ぶ全国の事案を分析しているため、リアルタイムで後遺障害認定基準を把握しています。後遺障害非該当になる原因として以下が挙げられます。
- 後遺障害診断書の記載内容不備
- 医療機関への通院日数が足りない
- 症状に一貫性が無い
- 交通事故との因果関係を証明できない
- 画像検査で所見が無い
後遺障害14級9号の異議申し立てを成功させるためには、非該当になった原因を正確に把握する必要があります。そのうえで、足りない部分を埋めていく作業が、異議申し立てを成功させるポイントです。
非該当になる理由を把握するうえで最も難しいのは、やはり医学的所見です。①豊富な実臨床経験 ②後遺障害認定基準の理解 の両方が無ければ、正確な判断はできません。
異議申し立ての注意事項
弊社の経験では、異議申し立てを成功させるためには「新たな医証」が必須です。本人上申書は、新たな医証に該当しないので注意が必要です。新たな医証とは、以下のようなものです。
ただし、新たな医証であれば何でも良いわけではありません。異議申し立て成功のポイントで詳述したように、後遺障害認定に足りない部分を埋める医証が必要なのです。
弁護士の力だけでは限界がある事案も珍しくありません。非該当理由が分からなかったり、対応にお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
後遺障害14級9号の異議申し立て成功事例
むちうち(頚椎捻挫)の異議申し立て成功事例
事案サマリー
- 被害者:60歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
交通事故後に頚部痛と両手のしびれを自覚されていました。受傷から半年間通院されましたが、頚部痛と両手のしびれは改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。
弊社の取り組み
MRIを脊椎脊髄外科専門医が読影したところ、頚椎後縦靭帯骨化症が存在していることが明らかになりました。診療録を確認すると、受傷当日から頚部痛と両手がしびれると記載されていました。
身体所見、画像所見および診療経過について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。
<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫が後遺症認定されるポイント|医療鑑定
【医師が解説】むちうち後遺症が首の痛みだけで後遺障害認定される?
腰椎捻挫の異議申し立て成功事例
事案サマリー
- 被害者:39歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
交通事故後に腰痛を自覚されていました。受傷から8ヵ月通院されましたが、頑固な腰痛は改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。
弊社の取り組み
画像を脊椎外科専門医が詳細に読影したところ、事故の後から、L4/5椎間板高の減少(椎間板がすり減って、高さが低くなる現象)が進行していることが明らかになりました。
これらの所見について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。
<参考>
【医師が解説】腰椎捻挫が後遺障害認定されるポイント|医療鑑定
まとめ
後遺障害14級9号の異議申し立てを成功させるためには、非該当になった原因を正確に把握する必要があります。
そして、非該当理由を正確に把握したうえで、14級9号認定に足りない資料を収集する必要があります。
後遺障害14級9号の異議申し立てを成功させるには、ロジカルな分析と対応が必須と言えます。
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