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【医師が解説】椎間板ヘルニアでやってはいけないこと|交通事故

椎間板ヘルニアが発生するのは、主に首と腰です。それぞれ、頚椎椎間板ヘルニアと腰椎椎間板ヘルニアと呼ばれています。

 

頚椎椎間板ヘルニアの症状は腕から手にかけての痛みやしびれ、腰椎椎間板ヘルニアの症状は腰から足にかけての痛みやしびれです。

 

本記事は、首や腰の椎間板ヘルニアを発症した際に、やってはいけないことが分かるヒントとなるように、現役の整形外科専門医が説明しています。

 

 

最終更新日:2024/4/20

 

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椎間板ヘルニアとは

頚椎椎間板ヘルニア

脳から手足に向かう神経は、背骨の中の空間(脊柱管)を通って首の骨(頚椎)まで来ます。頚椎は竹の節のように連なっており、頚椎の間から手に向かう神経(神経根)が出てきます。

 

足に向かう神経は首の部分では外に出ず、そのまま脊柱管を通って腰の骨(腰椎)まで行きます。そして、腰椎の間から足に向かう神経(神経根)が出ていきます。

 

頚椎の間には、椎間板という一種のクッションのような働きをする軟部組織があります。正常な椎間板には弾性があるので、首が前後左右に動くことができます。

 

交通事故などによって外部から強い衝撃が頭や首に伝わると、頚椎の間にある椎間板が損傷して脊柱管の中に突出します。首の椎間板が突出した状態を、頚椎椎間板ヘルニアと言います。

 

椎間板が突出すると、その近くを走っている脊髄や神経根を圧迫して、上肢の痛みやしびれが出現します。

 

 

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腰椎椎間板ヘルニア

脳から足に向かう神経は、背骨の中の空間(脊柱管)を通って腰骨(腰椎)まで来ます。腰骨は竹の節のように連なっており、腰椎の間から足に向かう神経(神経根)が出てきます。

 

腰椎の間には、椎間板という一種のクッションのような働きをする軟部組織があります。正常な椎間板には弾性があるので、腰が前後左右に動くことができます。

 

交通事故などによって外部から強い衝撃が腰に伝わると、腰椎の間にある椎間板が損傷して脊柱管の中に突出してしまいます。椎間板が突出した状態を、腰椎椎間板ヘルニアと言います。

 

椎間板が突出すると、その近くを走っている神経根を圧迫して、下肢の痛みやしびれが出現します。

 

 

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椎間板ヘルニアの診断

 

交通事故の直後から腕から手にかけての痛みやしびれ、腰から足にかけての痛みやしびれが続いている場合、医師は頚椎や腰椎の椎間板ヘルニアを疑います。

 

レントゲン検査の異常所見は必須ではありませんが、MRI検査では頚椎や腰椎の椎間板ヘルニアによる神経根圧迫を認めます。

 

一方、交通事故によって椎間板ヘルニアを生じるわけではなく、事故の前から椎間板ヘルニアをもっていた患者さんが、事故を契機に症状が出現したと考えるのが妥当でしょう。

 

交通事故後にMRIをとったら、首や腰に椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)が見つかったというケースも多くあります。

 

椎間板は背骨の間の軟骨のことを指し、「ヘルニア」とは、本来あるべきところから組織が飛び出す現象のことを指します。つまり、椎間板ヘルニアとは背骨の軟骨が飛び出した状態のことを言います。

 

椎間板ヘルニアは、一般の方が想像している以上によくある病気で、生活していると虫歯ができるのと同じように、本人も気付かないうちに椎間板ヘルニアを生じていたというケースは多々あります。

 

尚、椎間板(軟骨)はレントゲンに写らないため、レントゲンでは診断ができません。

 

 

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椎間板ヘルニアの検査所見

 

カルテや診断書に記載されることの多い検査所見についても簡単に説明します。

 

 

スパーリングテスト(Spurling test)

スパーリングテスト(Spurling test)とは、頚椎椎間板ヘルニアの患者さんで、頚椎から手に向かって走行している神経の障害を調べる神経学的テストです。

 

頚椎の出口である神経孔が椎間板ヘルニアや骨棘によって狭くなると、神経孔を通る神経が圧迫されて頚部から上肢にかけて放散痛が発生します。

 

患者さんの頭部を痛みやしびれのある側に傾けて、そのまま後ろに反らせます。この状態で頚部から上肢にかけて放散痛が発生すると陽性です。

 

 

<参考>
【医師が解説】スパーリングテストとジャクソンテストは後遺症の要

 

 

ジャクソンテスト(Jackson test)

ジャクソンテスト(Jackson test)もスパーリングテストと同様に、頚椎椎間板ヘルニアの患者さんで、頚椎から手に向かって走行している神経の障害を調べる神経学的検査です。

 

頚椎の出口である神経孔が椎間板ヘルニアや骨棘によって狭くなると、神経孔を通る神経が圧迫されて頚部から上肢にかけて放散痛が発生します。

 

頚椎の出口である神経孔が椎間板ヘルニアや骨棘によって狭くなると、神経孔を通る神経が圧迫されて頚部から上肢にかけて放散痛が発生します。

 

患者さんの頭部をそのまま後ろに反らせます。この状態で頚部から上肢にかけて放散痛が発生すると陽性です。スパーリングテストとの異なる点は、患側に頭部を傾けない点です。

 

天井を向くだけで頚部から上肢にかけての痛みやしびれが出現するため、スパーリングテストよりもジャクソンテスト陽性の方が重症度が高いと言えます。

 

 

<参考>
【医師が解説】スパーリングテストとジャクソンテストは後遺症の要

 

 

ラセーグ徴候(SLRテストと同義)

ベッドの上に患者さんに仰向けで横になってもらい、膝を伸ばした状態で下肢を持ち上げる検査です。腰椎椎間板ヘルニアで腰神経の圧迫があると、下肢を持ち上げた際に強い下肢痛を生じ、陽性と判断されます。比較的客観性の高い検査です。

 

 

<参考>
【医師が解説】SLRとFNSテストはヘルニア後遺症認定のポイント

 

 

FNSテスト(大腿神経伸展テスト)

FNSテストとは、L2/3椎間板ヘルニアやL3/4椎間板ヘルニアで特異的に陽性になる検査です。患者さんにうつ伏せになってもらい、膝を曲げていきます。太ももの前に痛みやしびれが発生すると陽性です。

 

 

<参考>
【医師が解説】SLRとFNSテストはヘルニア後遺症認定のポイント

 

 

深部腱反射

ハンマーで患者さんの腱を叩く検査です。患者さんの意思に関係なく反応が現れる為、客観的な検査結果と解釈されます。

 

首や腰の椎間板ヘルニアで圧迫される腰神経は、末梢神経に分類されます。末梢神経が圧迫されると、下肢の深部腱反射は低下します。

 

 

<参考>
【医師が解説】深部腱反射は12級の後遺症認定のポイント|交通事故

 

 

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徒手筋力テスト(MMT)

患者さんの筋力を0から5までの6段階で評価するものです。5が正常で、0は筋肉の収縮すら確認できないという評価になります。

 

首や腰の椎間板ヘルニアで神経が圧迫されると、神経を伝わって筋肉の収縮をおこすことができなくなります。その結果、筋肉が麻痺したり、筋萎縮(筋肉がやせて細くなる)を生じます。

 

また、知覚障害の範囲を調べることで、腰椎のどの神経が障害されているかを予測することが可能です。

 

例えばL5神経(Lは腰椎)であれば、下腿の外側から母趾にかけて、S1神経(Sは仙骨)であれば、足底といった感じです。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと

首を曲げた姿勢で長時間仕事をする

首を曲げる姿勢で長時間仕事をしていると椎間板に負担をかけます。30分に一度程度は休憩を入れましょう。

 

 

首に衝撃が加わるスポーツ

椎間板は、背骨のクッションの働きをします。このため、首に大きな衝撃がかかるアメリカンフットボール、ラグビー、柔道、スキー、スノーボードなどのスポーツは、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる要因となります。

 

 

腰椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと

重い物を持つ

重い物を持つと、椎間板に負担がかかります。坐骨神経痛を発症した際には、重い物を持つことは控えましょう。

 

特に、中腰で重い物を持つと椎間板に負担がかかるため、坐骨神経痛が増悪する原因となる可能性があります。

 

 

前かがみになる

立ったり座ったりしている時は、前かがみになり過ぎないことに注意する必要があります。

 

起きている状態では、椎間板に体重がかかるため、前かがみになり過ぎると椎間板ヘルニアが神経を圧迫する方向に力が加わります。

 

 

長時間座る

座っている姿勢は、椎間板に負担をかけます。このため、長時間(おおむね30分以上)座り続けることは避けましょう。

 

1~2ヶ月して坐骨神経痛の症状が楽になっても、長時間(おおむね30分以上)座ることは避けた方が無難です。

 

 

体を捻る

体を捻る動作をすると、椎間板に負担がかかるため、避ける方が無難でしょう。

 

 

椎間板ヘルニアでは仕事を何日休む?

 

仕事を何日休むについては、椎間板ヘルニアによる神経痛の程度や職種によって千差万別です。

 

長期間にわたる安静や休業は、むしろ社会復帰を遅らせる要因になります。このため、私たち整形外科医は、できる範囲で仕事することを推奨しています。

 

もちろん、重い症状の患者さんもいらっしゃるので、ある程度の安静や休業はやむを得ません。

 

一方、交通事故の場合には、数ヶ月に及ぶ長期休業は保険会社を過度に刺激するため要注意です。

 

 

椎間板ヘルニアは全治何ヶ月?

 

多くの症例で、椎間板ヘルニアによる神経痛は保存的に治療されます。神経痛が軽快するまでの期間は、2~3ヶ月が平均的です。一方、長い場合には4~6ヶ月にも及びます。

 

3ヶ月以上にわたって保存治療しても症状が良くならないケースでは、手術療法が検討されます。

 

 

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坐骨神経痛で考えられる後遺障害

14級9号:局部に神経症状を残すもの

局部とは、頚部や腰部を指します。神経症状とは、頚部痛や腰痛に留まらず、腕から手の痛みやしびれ、腰から足にかけての痛みやしびれなどを指します。

 

将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)が前提になります。後遺障害診断書には、症状の常時性が必要で、天気が悪いときに痛いなどの症状では認定されません。

 

また、交通事故と本人の感じる後遺症状に因果関係が認められることが条件となるため、車体の損傷が少ない交通事故は非該当とされることが多いです。

 

また、情報は公開されていないものの、毎月の通院頻度が少ない場合や症状固定までの通院期間が短い場合も非該当となります。詳細な基準が公表されていない背景には、不正受給を排除する目的があるとされています。

 

 

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

局部とは、頚部や腰部を指します。神経症状とは、頚部痛や腰痛に留まらず、腕から手の痛みやしびれ、腰から足にかけての痛みやしびれなどを指します。

 

14級9号との大きな違いは、「障害の存在が医学的に証明できるもの」というフレーズです。12級13号認定のためには、まずレントゲンやMRIで客観的(他覚的)な異常所見があることが必須条件になります。

 

自覚症状だけでは不十分で、筋力低下、筋肉の萎縮(やせて細くなる)、深部腱反射の異常などの客観的な症状が必要とされます。

 

また、MRI検査で認められた椎間板ヘルニアの高位が、痛みやしびれ(知覚障害)の範囲の分布に一致している必要があります。

 

 

 

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【12級13号】頚椎椎間板ヘルニアの後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:46歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

 

交通事故後に頚部痛と右頚部から母指にかけて放散する痛みが持続していました。痛みのため、1年以上通院、治療を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。しかし、初回申請時には非該当と判定されました。

 

 

弊社の取り組み

診療録を詳細に確認すると、受傷直後から頚椎椎間板ヘルニアに特徴的なスパーリングテスト陽性と複数箇所に記載されていました。

 

MRIで、C5/6レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの上肢痛(右母指にかけての放散痛)は椎間板ヘルニアが圧迫しているC6神経根の知覚領域と完全に一致していました。

 

脊椎脊髄外科指導医が診療録を確認して、初回申請時に見落とされていた身体所見を記載した医師意見書を作成しました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。

 

 

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【12級13号】腰椎椎間板ヘルニアの後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:46歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

 

交通事故後に腰痛と右下肢に放散する坐骨神経痛が持続していました。痛みのため、半年以上通院を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。初回申請時には非該当と判定されました。

 

 

弊社の取り組み

弊社に相談があり、診療録を詳細に確認すると、受傷直後から腰椎椎間板ヘルニアに特徴的な「ラセーグ徴候陽性」と複数箇所に記載されていました。

 

MRIで、L4/5レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの右下肢痛は椎間板ヘルニアが圧迫しているL5神経根の知覚領域と一致していました。

 

脊椎外科専門医が診療録を確認したところ、初回申請時に見落とされていたため、これらの所見を丁寧に医師意見書に記載しました。

 

初回申請時には、腰椎MRI画像で確認できる椎間板ヘルニアの所見が軽視されていたため、読影所見の補足も行いました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。

 

 

 

 

【弁護士必見】等級認定のポイント

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

14級9号と比較すると、はるかに認定基準は厳しくなります。痛みが持続しているだけでは不十分で、「障害の存在が医学的に証明できるもの」という条件が必要になります。

 

具体的にはMRI検査で神経の圧迫があること。さらにその圧迫されている神経と実際の症状(知覚障害の範囲、深部腱反射の異常、スパーリングテスト、ジャクソンテスト、ラセーグ徴候などの誘発テストが陽性であることなど)が一致していることが必須条件になります。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

14級9号は、救済等級としての位置づけでもあり、比較的広い範囲の患者さんが認定される可能性があります。

 

受傷から一定の期間(約半年が目安になります)通院されていて、その間の通院回数が一定の基準を超えていれば認定の可能性が高まります。

 

それ以外にも交通事故の規模や画像所見(レントゲンやMRI検査)も参考にします。一番重要なことは、受傷直後から後遺障害診断書作成にいたるまで、椎間板ヘルニアによる神経痛に一貫性があることと、持続性があることです。

 

整骨院に通院しているだけでは不十分で、交通事故の直後から、後遺障害診断書作成に至るまで、定期的に病院やクリニックに通院していることが必須条件となります。

 

 

弁護士だけでは専門的な判断を行うことは難しいため、整形外科専門医との綿密な協議が必要になります。椎間板ヘルニアでお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

<参考>
日経メディカル|意見書で交通事故の後遺症が決まるってホント?

 

 

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Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

椎間板ヘルニアが発生するのは、主に首と腰です。それぞれ、頚椎椎間板ヘルニアと腰椎椎間板ヘルニアと呼ばれています。

 

頚椎椎間板ヘルニアの主な症状は腕から手にかけての痛みやしびれ、腰椎椎間板ヘルニアの症状は腰から足にかけての痛みやしびれです。

 

頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことは、首を曲げた姿勢で長時間仕事をしたり、首に衝撃が加わるスポーツです。

 

腰椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことは、重い物を持つ、前かがみになる、長時間座る、体を捻るなどです。

 

 

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