交通事故で眼窩底骨折を負った方の中には、後遺症が残っているのに、後遺障害が非該当になったり、想定より低い等級にとどまるケースが少なくありません。
特に、複視(ものが二重に見える症状)は、日常生活への影響が大きい一方で、後遺障害診断書の記載不足や検査結果の不十分さから、非該当になるケースがあります。
異議申し立てによって認定結果を覆せる可能性がありますが、骨折や視覚症状の医学的証明を丁寧に行い、後遺障害認定基準に沿った資料を揃える必要があります。
本記事では、眼窩底骨折で非該当になりやすい理由や、異議申し立ての具体的手順、成功のために押さえるべきポイントを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/8/26
Table of Contents
眼窩底骨折が非該当になる理由
眼窩底骨折で非該当と判断されやすいケース
眼窩底骨折の後遺症として最も多いのは、複視や頬部の知覚障害(しびれ)です。特に、頬部のしびれは後遺障害等級の「非該当」になりやすいです。
その理由は、眼窩下神経の損傷を画像検査で直接示すことが難しく、客観的な異常所見を証明しにくいためです。
このため、実際に後遺症が残っていても、医学的な裏付けや検査データが弱いとされて、認定されないケースが多くみられます。
眼窩底骨折の後遺障害認定基準(眼球の運動障害)
等級 | 認定基準 |
10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
10級2号:正面を見た場合に複視の症状を残すもの
骨折の程度、およびヘスチャートで測定した複視の程度で認定されます。
13級2号:正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
10級2号と同じく、骨折の程度、およびヘスチャートで測定した複視の程度で認定されます。
<参考>
複視が後遺障害認定されるポイント|交通事故の医療鑑定
眼窩底骨折の後遺障害認定基準(視力障害)
視力の後遺障害は、矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズで矯正した視力)で審査されます。視力障害で考えられる後遺障害とその等級は、以下のとおりです。
等級 | 認定基準 |
1級1号 | 両眼が失明 |
2級1号 | 1眼が失明、もう1眼は視力が0.02以下 |
2級2号 | 両眼の視力が0.02以下 |
3級1号 | 1眼が失明、もう1眼は視力が0.06以下 |
4級1号 | 両眼の視力が0.06以下 |
5級1号 | 1眼が失明、もう1眼は視力が0.1以下 |
6級1号 | 両眼の視力が0.1以下 |
7級1号 | 1眼が失明、もう1眼は視力が0.6以下 |
8級1号 | 1眼が失明し、または1眼の視力が0.02以下 |
9級1号 | 両眼の視力が0.6以下 |
9級2号 | 1眼の視力が0.06以下 |
10級1号 | 1眼の視力が0.1以下 |
13級1号 | 1眼の視力が0.6以下 |
<参考>
交通事故と視力低下の因果関係を証明するポイント|医療鑑定
眼窩底骨折の後遺障害認定基準(神経障害)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)が認定される可能性があります。尚、眼窩下神経の損傷を、画像所見として直接捉えることはできません。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
12級13号と同じく、眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)が認定される可能性があります。
眼窩底骨折の後遺障害認定基準(醜状障害)
一般的に「外貌の醜状」とは、他者に認識される(人目につく)程度以上であるものとされています。目の付近では、眉毛や頭髪等で隠される部分については、醜状としては取り扱われません。
等級 | 認定基準 |
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
7級12号(外貌の著しい醜状)
- 頭部: 手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
- 顔面部:鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥凹
9級16号(外貌の相当程度の醜状)
- 顔面部:5cm以上の線状痕
12級14号(外貌の醜状)
- 頭部: 鶏卵大面以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
- 顔面部:10円銅貨大以上の瘢痕、または3cm以上の線状痕
眼窩底骨折の異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての流れと必要書類
異議申し立ては、異議申立書と添付資料(診断書、カルテ、画像所見、医師意見書など)を用意して、保険会社または直接自賠責保険会社へ提出します。
異議申し立てでは、医学的根拠の強化が認定結果変更の鍵となります。医師の協力や新たな検査結果も大きなポイントです。
眼窩底骨折の異議申し立ての申請先
初回審査が事前認定では加害者側の任意保険会社、被害者請求では自賠責保険会社が申請窓口となります。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申し立て自体に手数料はかかりませんが、医師の診断書や追加検査等の費用が必要な場合があります。
結果が返ってくるまでの期間は約2〜4ヶ月が目安ですが、準備や追加資料の整理に時間がかかるため、早めの取り組みが推奨されます。
眼窩底骨折の効果的な異議申し立て準備
効果的な異議申し立てには、初回審査で後遺障害認定基準に足りなかった要素を補完する医学的資料が不可欠です。
新たに取得した診断書、追加のCT検査、医師意見書などを提出して、後遺障害認定基準に沿った客観的証拠を補強しましょう。
眼窩底骨折の異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
眼窩底骨折が非該当になる原因を分析
眼窩底骨折の神経障害、特に頬部~上口唇のしびれは、非該当になりやすい傾向があります。その主な理由は、眼窩下神経の損傷が画像所見で客観的に示しにくいためです。
医学的証明が弱いケースでは、後遺症が残存していても後遺障害として認められないケースがほとんどです。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
眼窩底骨折の後遺障害認定条件をクリア
眼窩底骨折の後遺障害認定は、複視(物が二重に見える)が正面や特定方向で残るか、または強い神経症状が存在するかが条件となります。
CT検査、ヘスチャート、眼球運動検査といった客観的な医学資料による証明が、後遺障害認定の必須条件です。症状の自覚だけでは認定は困難です。
<参考>
【日経メディカル】顔面骨折の後遺症は眼科、耳鼻科、皮膚科も関与
異議申し立てでは新たな医証が必須
異議申し立てを行う際は、新規の医証(新たな診断書、追加施行した画像検査、医師意見書、画像鑑定報告書)が不可欠です。
以前と同じ資料のみでは、認定結果の変更はほぼ期待できません。また、本人の陳述書は医証に該当しません。
<参考>
眼窩底骨折の後遺障害認定ポイント
眼窩底骨折の後遺症が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
眼窩底骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
眼窩底骨折の異議申し立て成功事例【12級13号】
事案サマリー
- 被害者:30歳
- 傷病名:眼窩底骨折
- 被害者請求:14級9号
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
バイク乗車中に自動車と衝突して受傷しました。左頬部のしびれと知覚障害が残りましたが、被害者請求では14級9号に留まりました。
弊社の取り組み
改めて画像検査を精査したところ、CT検査で神経管周囲にfree airを認めました。大学病院の耳鼻科医師(助教)による画像鑑定報告書を添付して異議申し立てしたところ、12級13号が認定されました。
眼窩底骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した眼窩底骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
眼窩底骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
眼窩底骨折の異議申し立てでよくある質問
複視(ものが二重に見える症状)があるのに「非該当」とされたのはなぜですか?
複視の自覚症状があっても、ヘスチャート検査(眼球運動検査)や画像診断で他覚的な証拠が乏しいと、事故との因果関係や医学的根拠が不十分として非該当となることがあります。また、症状発現の時期や他の疾患との区別も重要です。
画像検査(CTやMRI)で眼窩底骨折は確認できているのに、後遺障害が認められなかったのはなぜですか?
CT検査で骨折が確認できても、症状固定時に機能障害や神経障害(しびれ、複視)が他覚的所見で立証できなければ、後遺障害に認定されません。
単なる眼窩底骨折の所見だけではなく、後遺症の残存とその程度を医学的に証明することが必要です。
複視の角度や範囲をどのように証明すればよいですか?
複視の証明にはヘスチャート検査が有効です。水平方向または垂直方向で5度以上のズレが確認されれば、後遺障害の認定対象になります。
眼窩底骨折の手術後に改善したが、まだ違和感や視覚異常が残っている場合は異議申し立てできますか?
症状の改善後でも、異議申し立ては可能です。再度、精密検査(視力・複視・神経機能など)を受けて、検査結果を提出することが重要です。
違和感や症状が残る場合は、弁護士や主治医と相談の上、適切な手続きを取りましょう。
眼窩底骨折の異議申し立てではどんな追加資料を提出すべきですか?
新しい画像検査(CT・MRI)、眼球運動検査の結果、医師意見書を追加で提出するのが有効です。客観的な証拠の充実が異議申し立て成功のカギです。
まとめ
眼窩底骨折は交通事故で多く見られる外傷で、複視や頬のしびれといった後遺症が残るケースがあります。
しかし、眼窩下神経の損傷は画像検査で示しにくく、医学的証拠が不足すると非該当と判断されやすいのが現状です。
後遺障害の認定には、複視が正面や特定方向で残る場合(10級2号・13級2号)、神経症状が強い場合(12級13号・14級9号)、あるいは視力低下や醜状障害が一定基準を満たすことが必要です。
異議申し立てを行う際は、診断書やCT、ヘスチャートなど新たな医証を揃えて、医学的裏付けを強化することが成功の鍵となります。
眼窩底骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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